そんな馬鹿な……と後悔するには、少しばかり見通しが甘すぎた。
相手への制限が足りなかった、と言われればそこまでだが、こちらが三人である以上余り縛りすぎては公平さが失われる。
──そして公平さが失われれば、相手は容易に外法に手を染めることだろう。
そんなことしない、と
ゆえに、その辺りのギリギリを──相手がルールを遵守してよいと思える境界を攻めたつもりだったのだが、それによって自身の勝ち筋すら潰していたのだとすれば、とてもではないが笑えたものではない。
そう、今回の場合は相手の限度を測り損ねた、というのが一番の問題だろう。
やりすぎればこちらにも制限が掛かるもの(そしてそれゆえにフェアであるもの)が今回のコンセプト。
ゆえに、相手にできてこちらにできないことは
問題の絵はこちらが選んでおり、そこには『こちらの利』が含まれている。……最初から問題がわかっている以上、それに対応する答えを用意するのはとても容易である。
……その結果がこれだ。
確かにこちらは答えを用意してあった。だがしかし、それは予め答えを狭めているのに等しい。
相手の出す答えがこちらの想定以外のモノであった時、それに対応するための時間を捻出する必要に駆られるのだ。
無論、そこに関してもある程度は予想してあった。それゆえの三人分の出力である。……誤算があるとすれば、相手の出力が三人分程度では賄いきれないモノだった、ということにあるだろう。
つまり、言えることはただ一つ。──この作戦は失敗である、というそれだけのことだ。
思わず、掌を握る力を強める。
相手を制限し、全力を出させないようにさせ、こちらの利を敷き詰め……そうして、必勝の策を用意したつもりでいたがこの通り。
所詮は子供の浅知恵、と嘲笑うかのような彼女の姿に、私の視界は真っ赤に染まりそうになり──、
そこで、彼の姿を見た。
何事かをこちらに伝えようと、声を出さず口の形のみで言葉を届ける彼に、何故彼がこちらの味方をするのかと疑問を抱き。
──改めて、対戦相手である彼女を見る。その瞳には、雄弁にこう記されていた。……お前はそのまま、負け犬で終わるつもりかと。
「……ははっ」
握りしめていた掌を、更に強く握る。
悔しさで握っていたそれを、胸の熱さに合わせて握るのに変えて。
「……そうだよなぁ、そうだったそうだった。なにを勘違いしてたんだか」
そも、この身は
相手の
「──いいぜ、お前がなんでも思い通りにできるってんなら」
他二人の自分を吸収し、自身に眠る全てを開放する。
──そうだ、初めからそれで良かったのだ。所詮この身は外法の塊。ならば華々しく、悪役として進むが定め。
「まずは、その思い上がりを叩き潰してやるッ!!」
「──ん。いい顔になった。それでこそやりがいがある」
「ほざけぇっ!!」
ゆえに私は、全てを笑う覚悟を決めたのだった。
「──少年漫画かな?」
「まぁ、内容はともかく、やってることはほとんど近いですわねぇ」
『悪役側がやってる、という違いはありますがねぇ』
まぁ、正直なところを言ってしまうと、どっちも悪役みたいなものなのだが。
片やTASという、既存のなにもかもを嘲笑うかのような存在であり。
片やCHEATという、そもそも正道ではない存在である。
その両者の戦いが、真っ当なルールを守って行われているという時点で、大概問題しかなかったのだ。
……まぁ、今の無茶苦茶な状況を見るに、確かに自重してくれてた方がマシ、というのもわからんでもないのだが。
「三番・山間部」
「はっはっはっ!!三百六十二番・武人の端くれ!」
「むぅ、呂布は卑怯」
「卑怯ぅ?褒め言葉どうも!!」
「……ん、いい笑顔」
はてさて、黒板迷宮内の現状だが。
……もはや、勝負は黒板の上の問題文だけに留まらず。
見ろよこの惨状、下から山脈がどどーんと盛り上がってきたかと思えば、その山々を槍の一振りで吹っ飛ばす謎の軍人が出てきたりする始末。
……まさかの物理的戦闘だが、これでもしりとりのルールに則っている辺りなんというか。……いやまぁ、相手の答えに直接攻撃していい、なんて追加ルールが罷り通ってる辺り、大概おかしいのだが。
とはいえ、TASさんの言う通り。
当初のどこか焦っているようなCHEATちゃんの顔は、今ではすっかり楽しげな笑顔に変化している。……ちょっと、否や結構物騒な感じもするが、楽しそうであるのであればそれでよし、というか。
まぁそんなわけで、自分の冠する名前の意味を思い出した彼女は。……そのまま嘘のようにぼろ負けしたのであった。
「はっはっはっ!!……次は勝つからなー!!」
「ん。いつでも来い」
負けてもなお、スッキリした顔をしていたので、なんの問題もないだろうが。
……んー、一件落着……なのかね?