はてさて、TASさんバーサスCHEATちゃんの一戦よりしばらく。
次のイベントである『邂逅・MODさん』にはまだ時間があるため、再びしばしのモラトリアムと相成ったわけなのだが……。
「……これは一体どういう状況なんだ?」
「?なにって……デート?なんじゃねぇの?」
「……すみません俺まだ捕まりたくないんで」
「普段アイツといちゃこらしてるやつが言う台詞かよ……」
いや、いちゃこらはしてないんだが?
……などと渋い顔をする俺を尻目に、目の前の彼女──CHEATちゃんは、楽しげにジャンクショップの中を見て回っているのであった。
……どうしてこうなった?
例のバトルから一夜開けた日の、昼間のこと。
この日はバイトであったため、例のハンバーガーショップにて元気にパティ焼いたりしていた俺なのだが。
……そういえば、この日ってイベントがあったな、などと今さらながらに思い出し。
「お邪魔しまーす……」
「ラッシャーセー!!オキャクサマナンメイサマデスカー!!」
「ひぃっ!?相変わらずバイト先だと声大きい!?」
「……ってん、CHEATちゃんか」
「あ、はい。そうですCHEATです……」
そのイベント──敗北したCHEATちゃんが、俺の元に偵察にやって来る──が今まさに開始されたのであった。
まぁご存じの通り俺達二週目なので?このイベントに関しては形式上の意味以外の何物も含まれてないわけなのだが?
……はずなのだが、目の前のCHEATちゃんは何事かを言い淀んでいる様子。
ふむ……確か以前のパターンだと、このあと(と言っても別の日だが)彼女を伴って家に突撃し、TASさんに無謀な挑戦をしたのだったか。
一応TASさんに確認したところ、厳密に固定されているのは各々の加入イベントだけであり、それ以外はわりとフリーとのことだったため、この辺りのあれこれはそこまで意識する必要はないのだが……。
……ん?だとするとそもそもの話、CHEATちゃんが俺のバイト先に突撃してくる必要もないのでは?
とまぁ、そんな感じに思考の海に潜ろうとしていた俺は。
「え、えと、その。あ、明日一緒に、お出かけしませんか!?」
「…………
小声ながらもしっかりと放たれた彼女の言葉に、思わず面食らうことになるのであった。
「……それでやって来るのがジャンクショップ、ってのもねぇ」
「なんだよ、なんか不満か?」
「不満というかなんというか、普段のTASさんじゃない別の娘連れてるせいで周りからの目線が痛いというか……」
「?」
まぁ、そこからなんやかんやあって、こうしてCHEATちゃんと連れだって遠出している、というわけなのである。
……普段の行動範囲から大きく逸脱してないせいで、周囲の皆様が『マジかよこいつ、いつもの
「……はっ!?TASさんの言ってた死ぬ云々ってこういう……?!」
「なにバカなこと言ってんだよアンタ……あーはいはい、わかったわかった。ポチッとな」
「うむ?」
それゆえ、以前ループ前にTASさんが言っていた『お兄さんに春はない』の意味を、未成年淫行とかで檻にぶち込まれることなのか、と確信にも似た閃きを得ていたのだが。
そんな俺を見かねたCHEATちゃんが、鞄にぶら下がっていた黒板のキーホルダーをなにやら操作。……スイッチ?などと俺が思っている隙に、周囲から飛んできていた視線達はいつの間にか霧散していたのであった。
これは……いつぞやかにTASさんも使ってた奴じゃな?
「今日は私に付き合って貰ってるのに、周りにばっか気を向けられてたら困るからな」
「おお……なんかイケメン……」
「……褒め方下手くそかよ」
下手と言いつつちょっと照れてるじゃん。
とツッコミを入れれば、彼女はほんのり頬を染めながら「うっせ」とこちらを小突いてくるのであった。
「デートっていうから身構えてたけど……要するに荷物持ちってことねー」
「なんだよ、可愛い子と一緒に出掛けられたんだから、そこは喜ぶべきだろー」
「ん、そこは認める」
「……この人も大概だと思うなー」
なんかジトッとした目線を向けられているわけだが……俺なにかした?
そんな風にじゃれあいながら、店内を歩き回る俺達である。
……デートなどと言うから身構えたが、結局のところ彼女の趣味に付き合わされた、ということで間違いないようである。
いやまぁ、彼女の場合は趣味が実益を兼ねているわけだが。
かごに山積みにされたジャンク品達は、中から使えそうなパーツを抜き取られたのち、彼女の使うガジェットに転用される予定である。
……愛用の黒板は確かに高スペックだが、これに頼りきりになるのも良くない……とのことから、以前のポケコン→タブレット級のチートアイテムを製作するのだとかなんとか。
まぁ、一人の手では完成出来ないものでもあるため、主にプログラム面でAUTOさんとかに頭を下げなければ、みたいなことも述べていたわけなのだが。
ともかく、先日の敗北を引き摺っている様子もないCHEATちゃんに、密かに胸を撫で下ろした俺はと言うと。
「……なんだよ」
「いや別に?若人はどんどん挑戦すべきだって思ってただけー」
「……いや、爺かよ」
頑張る彼女の頭を撫でながら、これから起こる