「私の!影が!薄いと思うんだよっ!」
「なんですか藪から棒に。次の主役が決まってるんだからまだマシな方でしょう、年単位で出番のない人に謝ってください」
「え?あ、はい、ごめんなさい……って、そんなのここにはいないだろう!?」
「他所には居ますので。何事も配慮が必要な現代なのです」
「なんか今日の君冷たくないかい!?」
「はっはっはっ。それはご自分の胸に尋ねてみるべきでは?『このやり取り今週に入って何回目?』と」
「んんん?……ええと、三十六回目……?」
「そこで臆面もなく回数言える辺りが、優しくされない理由だと知るべきでは???」
はてさて、CHEATちゃんとのデート(という名の荷物持ち)から早数日。
相も変わらず次のイベントにはまだ早い、四月の終わり頃。
……世間様的にはそろそろゴールデンウィークということもあり、俺達もどこかに出掛けるかー、なんてのほほんと計画していたところ。
なんだか最近うるさ……止まらないのが、なにを隠そうMODさんである。
いやまぁ確かに?直近のイベントに参加してない、という点で彼女の影が薄い、というのは間違いではないわけだが。
……それを言うと最近居間でテレビ見てるだけのダミ子さん、という究極の影薄キャラの話をしなくてはいけなくなるわけでですね?
「ぐぬっ、……あー、そこに関しては確かに配慮が足りなかった。済まないねダミ子君、軽率な発言だった」
「……?なにがですぅ?」
「おいキミぃ???」
「ははは、俺は単に一般論を述べただけでです
まぁ、ダミ子さん本人的には、
いやほら、世間一般の考えと個人の考えがずれる、なんてことはよくあるわけ
……まぁ、ダミ子さんがのほほんとしているのも、自分の存在を脅かされるような何かが起こっていないから……という面もあるため、安易にMODさんの状況に重ねるのも違うというのは間違いなかったりするわけだが。
「……はぁ、なんだい結局私をからかってただけかい?」
「いやまぁ、ここ数日で何度同じ事を言ってるんだ、とは思ってましたが」
「そこを訂正して欲しいんだが???」
はてさて、なんでMODさんがこんなにあれこれ言っているのかというと。
ご存じの通り、彼女の本格的な出番が一季節後、ということにあるだろう。
……裏を返せば、そこまでの間あまり目立ったことができないから、ということになる。
「見てくれたまえよこの溜まりに溜まった依頼の量!これ私、夏からがりごりこなしていかなきゃいけないんだぞ!?一人で!!」
「それに関してはTASさんも言ってましたけど、普通に顔を隠すなりなんなりして、今からでも減らしていけば良いのでは……?」
「それだと私が目立たないだろう!?」
「おいィ?」
彼女がこちらに突き付けて来たのは、彼女が仕事用に使っているスマホの画面。
……守秘義務とか国家機密とか大丈夫なのか、などとほんのり肝を冷やしながら画面を見つめてみれば、確かにそこにあるメールの数は今や三桁の大台に乗ってしまっている。
これだけの数を彼女はこなしていたのか、と密かに舌を巻きつつ、そもそもスパイなんだから顔を隠せば問題ないんじゃ?
……などと反論を述べれば、返ってきたのは頭おかしいんじゃないのか、というような理由なのであった。
「……あっ、いや言葉の綾だ!
「……んん?」
そんな俺の様子に、自分の発言が勘違いされていることを悟ったMODさんは、発言を撤回。
微妙に言い回しの変わったそれは、しかして俺に疑問符を浮かべさせることとなるのであった。……いや、なんとなくニュアンスはわかるけども。
「どうにも彼女に来てる依頼、前回のループとは違ってるモノが多いらしい」
「おおっとTASさん?」
そこで助け船として現れたのが、我らがTASさんである。
彼女の言うところによれば、今回MODさんのスマホに届いた依頼というのは、前回同じ時期に彼女が受けていた依頼とは、幾つか差異があるのだとか。
大きな案件については、大体同じものが届いているが……それ以外の細かいものに関しては、対象の事件は同じでも陣営が違うとか、以前は荷物の輸送だったのが今回は荷物の強奪になっているとか、結構な変化を見せているのだとか。
「つまり、ランダムクエスト方式」
「……わかりやすいけど、一気に俗な話になったね……」
それを指してTASさんは、重要な依頼──いわゆるグランドクエスト以外の細かな依頼は、その時その時で微妙に条件が変わるようになっていると指摘。
それゆえ、以前と同じような動きでは間に合わなくなってしまっている、と結論を出すのであった。
「……ん?間に合わないってなにが?」
「普通のゲームにもよくあるけど、ある程度の名声がないと受けられない
「……一大事じゃん!?なんでそれを早く言わないの!?」
「ずっと主張してたんだよなぁ!!?」
で、そこで判明した事実。
……今のままでは、MODさんは俺達の仲間になるフラグを立てられていない……というとても深刻な現実に、俺達は思わず慌てふためくことになるのであった。