さて、それからのことに、語るべきことはそう多くはない。
世界各地に飛ばされた俺達は超過密スケジュールに従い、MODさんが受けた依頼を時に自分自身の力で、時にプライベートTASさんの助けを借りながら、ひたすらこなし続けていただけなのだから。
『迷い猫の捜索……スパイに頼むには些か軽い依頼過ぎて、一体なにを仰っているのかと疑いもしましたが……なんというかこう、世界は広いですわね……』(※TASさんを通してDMさんがリアル言語ハックを仕掛けることにより、目の前の依頼人には老若男女誰のものとも付かない不思議な音声に変換されています)
「あー、済まないね。私達としても手は尽くしたのだが、どうにも……」
『ああいえ、責めているわけではないのでお気になさらず』(※ry。以後『』内の言葉は変換済みとして扱います)
「うぉおおおおぉっ!!我らの勝利だぁぁぁあっ!!!」
「「「うぉおおおおぉっ!!」」」
例えばAUTOさんのところでは、裕福な富豪の飼っている猫が行方不明になった、という依頼を受けていたわけなのだが……。
これが実はその国の裏に関わる大事件へと繋がっており、結果としてペットの猫を助け出したと同時に、その国の独立勢力が実権を掌握することになっていたし。
『……いやふざけんなよ!?なんだってこんなことになるんだよ!?』
「口を動かす暇があったら撃ってくれ!こっちはそのつもりで雇ってるんだ!!」
『ええぃ、わかったわかった!……くそ、なんだよ今日は!厄日か!?』
「アァ……アァー……」
『ちぃっ、きりがねぇ!!しゃあねぇグレネード行くぞぉっ!!』
例えばCHEATちゃんは、とある製薬会社のサンプル品の配達を頼まれ、件の製薬会社へと足を運んだ結果。
そこで発生したバイオハザードを鎮圧する羽目になり、ゾンビと化した研究員達をぶっ飛ばす羽目になっていたし。
『これ絶対私にやらせるやつじゃないですよねぇ!?』
「大丈夫。今の貴方はパワードスーツならぬ、TASスーツの装備中。これは私の動きをトレースできる上、仮に致死ダメージを受けた時にもスーツが身代わりになってくれる優れもの」
『そのスーツ、普通に動くだけで死にそうになってる人のことはまっっったく考えてないですしぃ!!そもそも致死ダメージを受けるようなところでスーツ無しに放り出されるとかぁ!!それってもう一度死ねと言ってるようなモノじゃないですかぁ!!?』
「……これは驚いた。ダミ子も色々考えてる。成長してるんだね、偉い偉い」
『え?あ、はい。ありがとうございますぅ……???』
例えばダミ子さんの場合、謎の遺跡の調査依頼を受け、件の遺跡に向かった結果……。
その遺跡がいつぞやかのDMさんのところと同じく、普通の人間が踏破することを全く考えていない、明らかな人外用のモノだったためにプライベートTASさんによる動作補助を受けながら(無理矢理)進む羽目になったり。
『ああはい、これはこっちでこれはこっち、と。……いやこれ、スパイに頼むことか?』
「とにかく顔を売る必要がある、ってことで選り好みせずになんでも受けてたみたい。……結果、スパイというより何でも屋みたいになった。断らないから余計のこと」
『クラスで面倒事押し付けられる真面目キャラじゃないんだからさぁ……』
「でも大丈夫。そんな刺激の足りないお兄さんの要望は、すぐにでも叶えられるから」
『はぁ?……ってうぉわぁっ!?これオコジョじゃん!?』
「そっちはレッサーパンダ、それからこっちはホッキョクグマの赤ちゃん。みんなすやすや眠ってて可愛いね♡」
『おまっ、それって要するに……?!』
「密猟でーす。仮にMODがここに居たらドカン、だね?」
『ああぁぁあもぉぉおおおおこんな刺激は要らんわぁぁああぁぁあっ!!!』
コピー品みたいなモノだから、本人とちょっと違う感じのプライベートTASさんと一緒に荷物整理をしていた俺の場合は、運ばされていた荷物の中身に幾つか絶滅危惧種の赤ちゃん達が紛れていることを知り、結果「知られたからには生かしておかないゼ!」とばかりに襲い掛かってきた元・依頼人を(TASさんの補助を借りて)千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す羽目になったし。
そして、今回の騒動の引き金となった、MODさんのところはというと。
『ははは。……いや、まぁ確かに。世界を巡るんだから、そんなこともあるんだろうなぁ、うん』
「……どうか、されましたか?」
『いいや、なに。君の行く末には困難しかないのだなぁ、とちょっとした同情を覚えただけだよ』
「……安っぽい同情なんて必要ありません」
『同感だ。ではまぁ、さっさと行くとしよう』
「はい?……ってちょっ……きゃああぁあぁぁあっ!!?」
「待ちやがれぇ!!」
「おい、飛び降りやがったぞ?!」
「落ち着け向こうの階段に回れ!そう遠くへは逃げられないはずだ!」
「「「了解!」」」
どこか見知っているような気がしてくる、とある少女を無事家に送り届けるため、少々刺激的な体験をすることになった、とのことであったが。
その仔細を彼女は黙して語らず、ただただ薄く笑むばかりなのであった。