はてさて、MODさんの生まれ故郷へのご招待、というある種驚きのイベントから暫く。
俺達はキャンピングカーに乗って一路南を目指していたわけなのですが……。
「トイレの中にまでツバメが飛んでくるのは予想外」
「至るところに巣が作られていましたわね……」
途中のパーキングエリアに立ち寄ったおり、そんな会話を交わしていたTASさん達であった。
……生憎俺はこの一行の中で一人だけ男性なので、彼女達の会話に混ざることはできないが……え?MODさんはどうしたのかって?免許提示の必要性が無くなったので普段の姿に戻ってますがなにか?
まぁともかく、男子トイレ側にもツバメの巣が点在していたような気がするのは確かである。
いかんせん、こういうところのトイレというのは屋外にあるうえ、出入りが簡単かつ雨風を凌げることもあり、ツバメ的にはわりと良物件……ということになるのかも知れない。
それゆえ、端から見てわかるほどにツバメが屯している、という状況になったのだろう。
とはいえ、用を足している最中に小柄な鳥達の視線に晒される……というのはあまり気持ちのいい状況でもない、というのも確かなわけなのだが。
……この辺りは、個室ではない男性側トイレだけの問題……なのかもしれない。
「見てみてー!すっげーのここのお土産!」
「ふむ?……おお、真珠のガチャとはまた珍しいものを……」
「一回千円くらいのもの、でしたか?……まぁ、お土産としては十分なのではないでしょうか?」
「だろだろー!……ところでダミ子、それもしかして全部食う気なのか……?」
「パーキングエリアと言えばご当地グルメですぅ!食べないのは損ですぅ!……でも流石にちょっと買いすぎましたぁ」
(……そもそもそれを買うお金は何処から……?)
他方、お手洗いではなく中の売店に向かった一団の方は、購入してきたお土産を前にあれこれと会話をしている最中であった。
特に真珠のガチャをしていたというCHEATちゃんが話の中心のようで、彼女が手に入れたモノを手始めに、隣でアイスを三本・焼き鳥などの串モノを五本・それから焼きそばやらお好み焼きやらの定番メニューや、ここでしか食べられないというご当地グルメの数々を購入し、もぐもぐ食べているダミ子さんへとツッコミが飛んだりもしていた。
DMさんがほんのり怪訝そうな顔をしていたのが気になったが……まぁ多分、そこまで変なことではないだろうと思い直し、彼女達へと声を掛ける俺である。
「そろそろ出発するから、転んだりしないように気を付けろよー」
「はーい」
そうしてシートベルトの着用を促しつつ、運転席にてハンドルを握る俺なのであった。
そうして暫く高速道路を走り、日本を南下して行った俺達。
途中助手席にやって来たMODさんの誘導により、料金所から一般道に降り、そのまま道なりに進むこと数十分。
ようやく俺達は、件の目的地へとたどり着くことに成功していたのであった。
「これはまた、のどかな田舎って感じのところ」
「まぁうん、限界集落……ってほどではないけど、結構田舎だからねぇ」
そこは、一面菜の花畑に囲まれた、のどかな田舎町……といった風情の場所。
ある意味MODさんが全身から発するお洒落感とは、真っ向から反発する感じの場所であったが……ふと覗き見た彼女の様子から察するに、特に悪感情があるなどの様子は無さげである。
……いやまぁ、相手はスパイなので表情をごまかすのは朝飯前、という可能性も大いにあるわけなのだが。
「……なんだい藪から棒に。私がこの町から飛び出したのは、田舎が嫌だったから……だとでも思っていたのかい?」
「いやまぁ、特に文句がなければ住み慣れた田舎で一生を終える……ってのはわりと普通の人生じゃないか?」
そして、そんな人生が嫌だ……イコール田舎が嫌だ、と思うからこそ住み慣れた故郷を飛び出す、というのもある種普通の人生なのでは?
……などという思いからの感想だったわけだが、こちらの言葉にMODさんは「別に、ここになにか嫌な記憶があるとか、そんなことはないさ」と苦笑を浮かべている。
じゃあ、なんで故郷を飛び出して、世界を飛び回るスパイになったのだろう?
……そんな疑問を含んだ視線を受けたMODさんは、苦笑を不敵な笑みに切り換えながら、こう告げるのであった。
「それは勿論、私がこんな田舎で収まるような器ではなかったからだね!」
「あーなるほど、嫌じゃないけど燻ってたパターンか」
「わりと俗な理由」
「……いや、君達は私になにを求めてるんだい?」
「そりゃもう、なにかしらの劇的な理由とか?」
「そんなドラマやアニメじゃないんだから。そういう刺激的な話は、そうそう転がっているモノでもないさ」
とりあえず、車を止められる場所まで移動しようか──。
そんなことを言いながら、車の中に戻っていくMODさんを見て、顔を見合わせる俺達。
……言外に、なにかしらの劇的な理由を秘めていることを感じさせる彼女の様子を眺めながら、俺達は車内へと戻っていくのであった。