うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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一夜は一夜、長くても一夜

 神隠し、という現象がある。

 実体のある人間が、突然姿を煙のように(くら)ませてしまうそれは、直前の足取りよりも後の所在を、全く辿れなくなるものであり。

 そうして消える姿が、まるで神に拐われたかのように見えるからこそそう呼ばれる……というものである。

 

 

「ここいらがこんなに過疎ってしまってるのは、実はその神隠しが頻発する、っていう噂が流れていたからなんだよ。……まぁ実際のところは、何時かの私みたいに『秘密裏にこの田舎から飛び出していく』若者達が後を断たなかった、という謎もへったくへもない話なんだけどね?」

「……遠回しに田舎ってクソ、って言ってません?」

「いいや?言ってないけど?」

 

 

 本当かなぁ……?なんか若干以上に真顔なその表情が、全てを物語っているような気がするけどなぁ……?

 そんな感想を抱いた俺が、夕食のパスタをちゅるちゅると啜る中、窓から覗く外の景色はすっかりと暗くなってしまっていたのであった。

 

 そんなわけで(?)、旅行一日目の夜である。

 キャンピングカーを止められる場所へと移動した俺達はというと、そのままここで一夜を過ごすことに決め、流れるように夕食の準備へと移行したのであった。

 

 まぁ、現地で食糧調達とかをするのもこういう旅の醍醐味……などと言って、基本的に麺とか小麦とかの主食ばっかり乗っけて、おかずになるようなものをほとんど持ってきていないため、結果として随分質素な夕食が出来上がってしまったわけなのだが。

 

 ……うん、ペペロンチーノだよ!いわゆるところの『絶望のパスタ』だよ!寧ろなんで唐辛子は積んであるんだよ!?

 というツッコミはノーセンキューである()まぁ薬味だから多少は、ね?

 

 

「お昼に食べすぎてしまったのでぇ、夜はこれくらいの量でも満足ですぅ」

「いや、ダミ子さんはそうかもしれんけど、他の人は……いや、よく考えたら俺以外みんな女の子なんだから、別に夜が質素でもなんの問題もないのか……」

「今さら気付いたのかよアンタ……」

 

 

 なお、他の面々はその質素な夕食に特に文句を言うでもなく、もくもくとパスタを口に運んでいたのであった。

 ……ああうん、そういえばそうだね!俺以外みんな女の子だったね!道理でちょっとボリューム足りてない夕食でも、そこまで抗議に発展しないわけですわ!!

 

 そんなわけで、俺一人だけちょっともの足りねぇなぁ、みたいな気分になりながら、静かに夕食を終えたのでしたとさ。

 

 

 

・A・

 

 

 

「田舎が都会に誇れるもの……となると、やっぱり自然関係のものに絞られると思うんだよねぇ」

「言い方ぁ」

 

 

 よく言うだろ、都会よりも田舎は空気が澄んでるから、空がよく見える……みたいな話。

 まぁ実際のところは、地上に明かりが少ないから、夜空に灯る微かな明かり()を阻害せずに済むってだけの話なんだけども。

 

 そんな語り文句と一緒に、キャンピングカーの外へと連れ出された俺達一行は、MODさんが指差す空を眺めながら優雅に天体観測を始めていたのであった。

 ……まぁ約一名ほど、全然違う楽しみ方をしているのも居るわけなのだが。

 

 

「むぅん、ヘイト集中!さぁこい野生の蚊共!貴様達の攻撃を全て避けきってやんよ!」<シュバババババ

「……ええと、TASさんは何故いきなりシャドーボクシングを……?」

「そんなの、この手の中に周囲の蚊を掴み取り放題してるから、っていう理由以外になにがあるの?」

「お止めなさい、ネタでもなんでもなく今すぐにお止めなさい」

「えー?」

 

 

 なにかフェロモン的なやつ?……を発生させ、周囲の蚊達に血を吸われやすい状態になったTASさんが、そうして無防備に寄ってくる蚊達をシュパパパパッ、って感じにキャッチしていく。

 

 ……いやうん、凄いのは凄いし、こっちが蚊に刺されることもなくなるので、とても有り難くはあるのだけれど。

 特に気にもせずぷちぷち潰していくものだから、彼女の手の中が人に見せられないような、あまりにグロテスク状態になってしまっていたのであった。

 そのため、AUTOさんから即時止めるように、という要請が飛んでくることとなったわけである。

 ……っていうか、そんなに潰して気持ち悪くなったりしないのだろうかTASさん……?

 

 エグいことになってるその手を今すぐ洗ってくるように……と言われたため、キャンピングカーへと駆け足で戻っていくTASさんである。

 ……その後、夜に外へ出るとか変なフラグを立ててしまいますぅ……などと言って車内に残り、現在布団の上でぐだぐだしているはずのダミ子さんの、とっても情けない叫び声が聞こえてきた辺り、中でTASさんが(ダミ子さんで)遊んでいるのは確定的。

 そのため、怒ったAUTOさんがTASさんの後に続いて車内に戻る形になったが、多分問題は無い。……無いったらない。

 

 ともかく、そうして社会の喧騒から離れ、星を眺めてのんびりすることとなった俺達。

 ちらりと横目で見るMODさんは、空を眺めほぅ、と息を吐いている。

 

 そんな彼女を見ながら、俺達はTASさん達が戻ってくるのを待つことになるのであった。

 

 

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