その日はいわゆる秋晴れという奴で、前日の台風が嘘のような快晴であった。
暴風が嫌なものを纏めて持っていってくれるから、そうなるのだ……という理屈を、その時の私は知らなかったが。
ともあれ、その快晴を見上げ、余計に腹を立てたのを覚えている。
まぁ、子供の癇癪なんてそんなものだ。
一つ気に入らなければ二つ、二つ気に入らなければ三つ。
そんな理不尽な怒りが罷り通るのが、子供の残酷さであることは間違いあるまい。
──だからその時の私は、その怒りのままに妹の腕を振り切ったのだった。
「……ふうん?つまりはあれかね、お前さんは妹ばかりが褒められるのが気に食わなかったと?」
「……別に、それだけじゃないし。ずっと後ろに付いてくる癖に、なに言ってるかわかんないのが嫌だったんだし」
はてさて、とはいっても最後の一歩を踏み出させたきっかけ、というものがあるはずだろうというのも確かな話。
それに関して触れるのであれば──当時の妹は、どうにも周囲と合わせられないタイプの人物だった、と言うべきか。
今だからわかるが、あれは恐らく周囲と知能レベルが違いすぎたのだろう。
雑に理解しようとするのであれば、あの子は転生者みたいなものだった、と言うべきだろうか?
まぁ流石に、本当に転生者だった……なんてことはないとは思うが。
ともあれ、周囲との噛みあわなさを持つ妹と、そんな彼女と話すことが時折嫌になる時がある、ということは間違いではなく。
その日はそれが爆発して、妹を放置してこの駄菓子屋に逃げ込んだのだった。
そこの店主である老婆とは、別に血縁関係と言うわけでもない私だったが。……こうして一時的な逃げ場として利用するくらいには、見知った顔であることも確かな話。
ゆえに、特に気負うこともなく話をして、結果彼女からは呆れたようなお小言を貰うこととなっていたのだった。
……とはいえ、こうして会話してる時点で怒りはもう冷めてしまっており、そのお小言も口では否定しつつ、私が悪いのだろうなということは既に理解していたわけで。
それを理解していた彼女は、毎度苦笑いのようなものを浮かべながら、私を外へと放り出すのだ。
「変なことにならないうちに謝っときな。──謝れなくなるよりは、遥かにマシだろうさ」
そんな、何かの悔恨を滲ませるような言葉と共に。
そして私は駄菓子屋を後にし、代わりに母がそこへと足を運ぶ。
顔見知り、かつ娘がこうして世話になることもあり、二人の会話が長くなるのは既定路線であり。
その間に、私が自宅近くへと戻ることとなり──それを見たのであった。
「
その輝きは、静かにその暴威を発揮したのだ。
──それは、まるでそこだけが夜になったかのような光景であった。
そう、私の家の周りは漆黒に包まれていた。……それだけではない、その漆黒は
黒い星、光る闇。とかくおかしな感想を抱かせるそれは、ゾッとするほど静かに、緩やかに、私の目の前で家の上に降りてきて。
「気付いた時には遅かった。全ては瞬く間に終わっていた。……眩しさが終わって目蓋を開けた時、私の目の前には
「それはまた、なんとも……」
静かに語る私の姿に、他の面々は声を失っている。
……意外と私、語り部の才能があるのかもな、などと苦笑しながら、彼女達の疑問に答えていく。
「消えたってのは、純粋に消えたってだけなのか?」
「……鋭いね、CHEAT君。君の想像通りさ」
「うへぇ……」
「……?なにに気付いたのですか、CHEATさん?」
「いやさ……これって『神隠し』なんだろ?それにしちゃ、どっちかと言うと──」
「──ああ、なるほどぉ。『神隠し』だなんて甘い話じゃないですもんねぇ」
そうして導き出されたのは、この話だけだとここで起きたことが神隠しだとは思えない、という疑問だった。
確かに、家や周辺の建造物ごと消えたそれは、どっちかと言えばキャトルミューティレーションなどの類いに聞こえてくる。
神隠しだなんて、あやふやな単語で表すような事態だとは到底思えない。
なにせ、
物理的な証拠が残っている以上、同じオカルトでも宇宙的ではなく神秘よりの現象となる『神隠し』に準えられる理由が見えてこない。
だがその疑問は、この事件がどう処理されたのか、どうして処理されたのかを思えば、すぐに氷解するモノでもあった。
「……それは?」
「
「……は?」
──その答え。
それは、そこにあった家と、その中にあった・居た