「挑戦者?」
「そう。駅の黒板に『TAS求む』って走り書きがあったってAUTOさんが」
「滅茶苦茶歳食った人からの挑戦状じゃね?それ」
もしくは新しい作品を見た若い人か。
……なんにせよ、わざわざ駅に黒板を設置して『XYZ』と文の末尾に書く、というのはわからない人にはまったくわからない連絡手段なのではないだろうか。
っていうか普通に迷惑だし、勝手に黒板設置。
「恐らくはレトロゲーのお誘い。なんだろう、マ○オ?ボ○バーマン?」
「勝手に対戦ゲーのお誘いだと解釈するのも、俺はどうかと思うわけだが」
「号外ー!号外ですわー!」
「なんで君までちょっと古いの?」
ワクワクを思い出した、みたいな感じに顔を輝かせるTASさんに、思わず苦笑を浮かべていると。
なんだか様子のおかしいAUTOさんが玄関をバーン、と開けて駆け込んできたため、思わず呆れてしまうことに。……なんです?今回はレトロな感じに進むんです?
「……!なるほど、今回の挑戦者がわかった」
「ほう、その心は?」
「地味に危ないから、お兄さんは一緒に来ない方がいいかも、ってこと」
「……んん?」
そんな俺の様子とは反し、何事かに気付いた様子のTASさん。
未来予知でもしたのかな?と特に深い考えもなく尋ねた俺は──突然の戦力外告知に、思わず目の前が真っ暗になるのであった。……俺の反応も古いな、わりと。
どうにも、これまでの状況証拠から、相手の正体というものを暴いたらしいTASさん。
そんな彼女が言うことには、相手の行動が何処となく古臭いのは、相手の性質に寄るものであり──それが間違いないのであれば、一般人が近付くのはとても危険、とのことだった。
まぁ、危険云々についてはTASさんの近くにいる時点で今さら、と返せば「……それもそっか」という感じに流されてしまったのだが。……自覚してるんなら多少は気にして欲しいんだが?
そんなこっちのお願いは聞き流され、そのまま駅に向かった俺達三人。
そこに待っていたのは、こちらを威嚇するかのように通路の中心に佇んでいる、一つの黒板なのであった。
「……いや邪魔!?マジで邪魔なんだけど!?」
「先ほどとは位置が変わっていますわね……」
「しかも動くの!?動くのこれ?!近くに人が居ないんだけど、もしかして自立行動するのこれ?!」
「多分。だって周りの人、怖がって遠巻きにしてる」
「……あ、なんかやけに人通り少ないなーと思ってたら、薄気味悪がられてたのね……」
思わずノリツッコミをしてしまったが……いやホントに邪魔。
通路の大部分を占領しているこの黒板、見た目はキャスターの付いた移動式の黒板なのだが……発している空気が宜しくない。
おどろおどろしいとでもいうのか、ともかくあまり直視したくない感じの空気を纏っているのである。
世界観が世界観なら、思わずダイスロールを要求されそうな感じであるためか、人々も全然近寄ってこない。
乗り込む電車の停まる位置、などの問題で仕方なく横を抜ける人もいるが、脇見もせずに駆け抜けていくので黒板の近くに人の影がある、という状況は長続きしないでいた。
……で、いい加減目を逸らしていた部分にツッコむと。
そうして黒板が避けられる度に、誰も居ないのに黒板に独りでに文字が浮かび上がるのである。しかも頻繁に。
絵面だけ見たら完全にホラーやんけ!
「……ただ、みんな『勝手に文字が浮かび上がる』ってところに注目しすぎてるのも、確かみたいだけどな……」
「……そうですわね。これを最後まで見れば、感じる印象というのも別のものに変わるでしょう」
……で、そこで終わりなら単に呪いのアイテム、くらいの話で済むのだが。
そうはならないのが俺の周りの騒動達。
浮かび上がる速度があまり早くないため、それが全貌を現すよりも前に周囲の人々は『見ないふり見ないふり』とばかりに無関係を装って横を抜けていってしまうわけだが。
こうして真正面から、この黒板に向かい合い続けている俺達は、そこに浮かび上がったものの正体を、しかと認知していたのであった。
そう、そこにあったのは!
……『(´;ω;`)』。そう、ショボーンである。やっぱりなんか古いなこれ?
とかなんとか言ってたら、今度は黒板の文字が『(`・ω・´)』に変わる。……どうやら憤慨しているらしい。
「……いやまぁ、おかしいものではあるんだろうけどさ。……絶妙に古臭いせいで、これどっちかっていうと共感性羞恥とかそういう意味での悪寒だったんだなー、ってなるというか……」
「仕方ない。想定できる相手の性質上、ちょっと古臭くなるのは間違いじゃない」
「はぁ。……で、結局これはなんなんです……?」
「これは──」
古いのは相手の性質によるもの、と何度も念を押してくるTASさんに思わずペースを乱されつつ、改めて相手の正体について尋ねる俺。
そうして俺が声をあげると同時、先ほどまでの顔文字は掻き消され、変わりに四×六の四角いマスが書き上げられていき──、
「これは、コードフ○ークさん。……それだと怒られるから、言い換えると──
「……はい?」
そこには、幾つかの絵のようなものが、合わせて納められていたのだった。