「それは、どういう……?」
「文字通り、だよ。──単純な記憶だけではない、記録・記述・記載……
MODさんの口から飛び出した、衝撃的すぎる事実。
それは、件の黒い星とやらに消されてしまったものが、全てこの世界からなくなってしまった、というもの。
──そう、そこにあったはずの生家は
これには皆、一様に言葉を失う他なかった。
なにせ、存在の完全な抹消である。……そこにあった、という痕跡そのものがなくなってしまっているというのが、どれほどおぞましいモノであるかは言うまでもないだろう。
「……あれ?でもそれだとおかしくありませんかぁ?」
「おかしいって……なにが?」
「ああ、ダミ子君の言いたいことはわかるよ。──
「あ」
ただ、その言葉に疑問を浮かべる者もいた。……ダミ子さんである。
ちょっとずれたモノの見方をしている彼女は、だからこそすぐにその話のおかしさに気が付いたというわけである。
……まぁ、他の面々よりも早かったというだけで、後にみんな気付くことになったわけだが。
そう、MODさんは
……だとすれば、彼女の記憶からも消えていなければおかしいのである。
そして、それに対しての答えというのが、
「……その時に、姿を変える力を身に付けたと?」
「あの輝きを身に受けた、からなのだろうね。私はあの時よりも前の私から変質した。
「うわぁ……」
思わず、声が漏れる。
その黒い光は、彼女の生家を呑み込んだ。──影響は、それだけで済んでいなかったのだ。
それも当然、それは彼女の言うように黒くとも
……世界とは本来、闇に包まれているのだという。
その無明の大地を照らす──否や
ならば、例えその輝きが黒くとも、それが『光』である以上は
つまり、その
それに間近で立ち会った彼女は、例えその姿を呑まれずとも少なくない影響を刻まれていた、ということである。
その結果、彼女に生まれたのは『姿を変える』力であった。
黒く焼かれたその姿は影となり、そして影であるがゆえにその存在の輪郭を得てして掴ませない。
ゆえに、彼女はその存在に数多の殻を被せることを可能とするようになった。
そしてその代償かと言うように、その瞬間を永遠に忘れられなくされた……というわけである。
「まぁ、実際どういう原理なのかはわからないけどね。……とはいえ、無数の姿を与えられた私が自分を見失わずにいられるのは、この時焼き付いた自分があるからこそ……みたいな面もあるから、ちょっと感謝してる部分もあるのだけれどね」
なんでもないように笑うMODさんだが、その裏にどんな感情を隠しているのかまでは、俺達にはわからない。
……とはいえ、彼女がとても大きな感情を隠している、ということは察せられる。
それが怒りなのか、憎しみなのか、悲しみなのかはわからないが……ともあれ、口調ほど軽い思いではないということは間違いないだろう。
そんな、彼女の後悔とでも言うべきものを聞かされ、皆が神妙とした面持ちとなる中、彼女はその空気を払拭するかのように手を叩く。
「まぁ、面白くもない過去語りさ。それにそもそも、そこまで悲観する必要もないのだからね」
「……と、言いますと?」
「簡単さ。あの輝きはこの世界から妹を連れていっただけで、私はそれを確信しているというだけのことだよ」
「……あー、そこで神隠しに繋がるのか……」
こちらの視線を集めた彼女は、そこまで大袈裟に受け取らないでくれと声をあげる。
……妹の喪失・自身の変質をもたらしたそれを、なんでもないことのように流した彼女は、それがどういうモノなのかを掴み掛けているからだと答えを返す。
そう、話を聞いている限りは
話を聞く限り、この一件を神隠しとして広められるのは彼女だけ。……ある意味、それが答えだったのだ。
「ごく稀にだけどね。時折、この場所に物が転がっていることがあるのさ。家の中に残されていた家族の持ち物だとか、私の持っていたオモチャだとか。まるで、
「なるほど……ならば、妹さんは生きていると見るのが正しく、かつそれが何年にも渡って起きていることならば、どこか他の世界で暮らしているのだと見る方がよい……」
「つまり、ここになにかしらの次元の歪み的なものが残ってる、ってことになるわけか」
そしてそれを周囲に見せれば、所在はわからずともなにかが起きていることは察せられる。
……とはいえ、ここに家があったことは彼女にしかわからないのだから、周囲の人が気味悪がるのも間違いあるまい。
再度あの輝きに呑まれる人が居ないように、周囲から人を遠ざける理由ともなるそれは、数年掛けてこの場所を過疎地域に変えることに成功した、というわけなのであった。
……さて、どうにも重苦しい話だったため、周囲のみんながどうにもテンションを戻すのに四苦八苦する中、内心慌てふためく者が二人。
(──例の裏切り者ってMODさんでは……?)
(は、はわわわわ!?これってうちのかんりせきにんでは!?)
その当事者二人は何の気なしに顔を見合わせ、ほんのり青白くなったそれに互いの思考を悟ることとなったのであった。