出直して参れ、とかなんとか老人の声が聞こえたような気がするが、とりあえずスルー。
それはダミ子さんの領分だ、今の俺には荷が重い。
「いえ、私の領分でもないですよ!?いや確かにこうなる前は顔がバグってましたけど!?」
「と、突然なにを興奮していらっしゃるんですの……?」
いえ、言っとかないと酷く理不尽なことになりそうな気がして……などと首を捻るダミ子さんを背後に、相変わらず固まっているDMさんである。
ああうん、こういう時メカボディなのって役に立つよね。フリーズしたんだなぁ、ってごまかせるし。
しかし、しかしだ。
普通の状況・普通の人相手ならそれでごまかせるかもしれないが、ここにいるのは決して普通ではない女の子達。
特に、そこで目を輝かせてる(※当社比)
「なるほど」<チャキッ
「……ええと、TASさん?手刀を構えて……どうするつもりで?」
「知れたこと。昔の偉い人は言いました。──機械なんて、斜め四十五度から殴れば大抵直るって」
「それは、昔の機械のはんだ付けなどの出来が杜撰だったから……というやつではありませんでしたか……?」
「ビーッ!ビーッ!警告!警告!現在再起動中!外部ヨリノ過剰ナ衝撃ハ当機体ノ深刻ナエラーヲ引キ起コス可能性大ノ為、自重サレタシ!!」
「おお、警告音」
(た、楽しんでやがるこいつ……っ!)
壊れたんなら直せばいいよね!……とばかりに
「それでは、DM君が再起動を果たしたところで改めて……どうだろう?結局のところ、こういう場所で使えるセンサーとかは存在するのだろうか?」
「ええとその、無くはないと言いますか……でも正直こういう時に使うには向かないと言いますか……」
「……ふむ、向かないと来たか。それは何故?」
「あー、その、ええと……えー、かつてここで起きたのは、異世界への転送……ということになるんですよね?少なくとも、MODさんの認識上では」
「……?まぁ、そうなるね。そもそも、どこからともなく生きてる頼りが届くのだから、そうじゃないとおかしいって言うところもあるけど」
はてさて、一度仕切り直しを図ったものの、物の見事に考える時間を粉砕されたDMさん。
このままでは危険が危ない、というやつなのだが……DMさんはどうやら腹を決めたようで、か細い声だったのを普通の声色に戻し、MODさんへと言葉を返し始めたのだった。
……腹を決めたのは良いのだが、それははたして
それ、自動的に俺も巻き込まれるやつなので、出来ればこちらにも子細をわけて欲しいのだが、どうにも彼女MODさんへの説明に全タスクを投入しているようで、こちらに念話を飛ばしてくる様子は一切ない。
つまり、俺は目の前で行われていることに介入する手段が欠片もないわけで、さながら競馬のレースで最後のカーブを「曲がれーっ!!」と、固唾を呑んで見守る気分に襲われている最中なのだ……。
……え?そんな例え方するってことは、お前は競馬とかしたことがあるのかって?俺に付いてきてTASさんが入り浸るようになるのが目に見えてるから、生憎競馬場に近寄ったことすらありませんよ?
見つめるだけで株価を変動させられる彼女に、そういうギャンブル系の場所への立ち入りを許可した日には、例えこっちが賭けたりしていなくても酷いことになるのは明白。
……いやだよ俺、毎レース毎に億単位でお金が飛び交うようになるの。
まぁそんなわけで、さっきの例え話は想像を多分に交えたものだったわけだが、けれどDMさんという馬に人生全賭けしてるような状況、というのは決して過言でもないわけで。
そんな、緊張と震えをひた隠しに現場を眺める状況は、
「……以前、TASさんも言っていましたが。他の世界を迂闊に認知してしまうことは、すなわちこの世界の崩壊に繋がる重大事項です。それなのにも関わらず、貴方の妹さんのような事件や、これから起こるであろうサンタクロース事件……それらがある意味で見逃されているのは、何故だと思いますか?」
「ふむ?……言われてみると確かに。TAS君は正確には未来視技能者だから、そこら辺の話が本当に危ないのなら、端から発生要因を潰せば済むことでもある。……ああいや、確か彼女は生まれた頃から未来視技能者、というわけではないのだったか?」
「ん。空を飛ぶ赤ちゃん、なんてものは実在しなかったから安心して」
「それって安心するところなのか……?」
「ともかく、それらの事件は
「なん……だと……!?」
大分、いやかなりこちらの予想から外れた方向に、転がり始めていたのであった。
……収拾付くかな、これ?