「自然なこと、というのは?」
「文字通り、です。……確かに、こちらから意識して他の世界に触れるのは、この世界の崩壊を招きかねないのでNGですが。主体が私達ではなく
はてさて、DMさんが語るところによると。
異世界との繋がり、というのは人がなにをせずとも、年に数度・ともすれば数十度から数百度の頻度で人知れず起きているもの、ということになるらしい。
ゆえに、『異世界に繋がること』そのものが世界の崩落を招くのではなく、確たる意思を以て他の世界と繋がることがそれを招くのだと。
「私が崇められていた文化圏では、その事実について明確に……とまでは行きませんが、体感的には理解をしていたわけで。……まぁそういうわけで、一種の禁忌的な技術として扱われていたのです」
「なるほど、『それがある』と認知するのはまだしも、『それができる』にまで発展してしまうと、それを試してしまうモノが現れるかもしれない……ということだね?」
「察しが早くて助かります」
観測が出来れば、次は触れて確かめたい、となるのは自明の理。
そして実在を確かめられたのなら、今度はそれを試したくなるのもまた、人の性というやつだろう。
……邪神ゆえその辺りの機微には詳しかった彼女は、かつての文明圏において『知ること』までは許したが、『触れること』や『試すこと』については許さなかったのだという。
それゆえ、彼女が持つ『手段』はとても拙く、知れはしても触れはしない、とても中途半端なものしかないのだ……という話になるのであった。
……まぁ無論、全部口から出任せである。
確かに彼女は、邪神としてはわりと緩いというか、優しい類いの存在ではあるが……同時に、厳格な神かと言われればそうでもないわけで。
件の異世界技術に関しても、『見る』のも『触れる』のも『試す』のも、全部禁止したりはしていなかったとのこと。
幸いにして『見る』以外の二種──『触れる』と『試す』に関しては、それらの技術を持った者ごと他所の世界に飛ばされて行ったらしいので、こちらにそれらの研究の成果が残っていたりはしないらしいが。
なのでまぁ、口から出任せではあるものの、結果的には『見る』だけを許した、みたいな形に落ち着いているのだそうだ。
……え?黒板?あれはほら、やろうと思えばできるってだけで、実際には『見る』だけのモノだから。
作ったコードを確認するだけのモノ、というのが本来の役目らしいので、たまたまCHEATちゃんの手に渡ってしまったのがアレだったというか?
まぁともかく、彼女はこう言いたいわけである。
──『私の持つ技術は、恐らく貴方の望む結果を得ることは出来ない』と。
「……妹をこちらに呼び戻そうとしていると、君は思ったんだね?」
「まぁ、それが自然な流れかと。事実、貴方は何度かここに立ち寄り続けているのでしょう?──未練がある、と見るのはなにもおかしいことではないのでは?」
「まぁ、そう取られてもおかしくはないね」
そう告げるDMさんに対し、MODさんは至って落ち着き払っている。
……さっきまでの話的に、もう少し感情的になったりするかと思っていたのだが、予想を裏切る落ち着きっぷりに俺達が顔を見合わせていると。
「言っただろう?あの子の生存を思わせるモノが転がっている、と。……これがね、思わず笑ってしまうようなモノなのさ」
「はぁ、どれどれってぶふっ!!?」
「うわDMさん汚っ」
「というか、それは一体なにを噴出させているんですの……?」
MODさんが懐から取り出したのは、一枚の紙切れのようなもの。
……どうやら、それは写真のように見えたわけだが。先ほどMODさんが例に挙げていたのは、おもちゃとか調度品だとか、もう少し個人を特定させないようなモノであったはず。
つまり、その写真はそれらとは趣を異とするモノということになるのだが……、それを真っ先に見せられたDMさんは、まるで生身の人間のように唾?のようなものを吹き出していたのだった。
……洗浄液かなにかかな?などと考えつつ、噎せている彼女を横目にMODさんの持つ写真を覗き込む俺達。
そこで俺達は、彼女が何故この写真を見て吹き出したのか、その理由を知ることとなるのであった。
「……め、滅茶苦茶元気そう……?」
「っていうか、確か
「はっはっはっ。まぁ、向こうはきっとこっちと時間の流れが違うんだろうねぇ」
その写真に写っていたのは、幾つかの人物。
恐らくはサークルかなにかの仲間だと思われるそれらの内、中心に写っている人物。
……普段のMODさんとの類似性を感じさせるその人物は、澄ました顔でピースサインをカメラに向けていたのだった。……滅茶苦茶余裕そうだこの人!?