うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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シリアスが終わる。シリアルが始まる()

 この気持ちをどう例えようか。

 ……敢えて言うのなら、今まで頼りにしてきた人の、意外な弱点を知ったような気分?

 

 とまぁ、そんな微妙な語り口から始まりました今回。

 さっきまで瞬間湯沸し器の如くカンカンであったMODさんをどうにか宥め賺し、どうにか腰を落ち着かせた俺達はと言うと。

 改めて、彼女の妹さんの写る写真に視線を集めていたのであった。……検分が途中で中断させられたからね、仕方ないね。

 

 

「……これを道具欄に入れて選択(セレクト)ボタンを一定回数押したあと、私が細かにジャンプすることで向こう(異世界)にカチコミを掛けるというのは?」

「却下。いやまぁ君は普通に帰ってこられるんだろうけど、向こうのなにも知らない人々にTASさんを見せるのは、精神的ダメージ(TASリアリティショック)を考慮すると一つとして許可できないんでダメです」

「むぅ。それが一番手っ取り早いのに」

「早さの犠牲になるのが世界とか民衆とかになるのなら、俺はそれを止めなきゃいけないんだよなぁ」

 

 

 主に俺と世の人々の心の安寧を護るために。

 ……みたいな感じで、途中写真を持ってどこかへ飛ぼうとするTASさんを止める羽目になったりもしたが、まぁいつものことである。

 ……いや、これがいつものことなのわりと狂ってるな?

 

 とまぁ、ちょっと自分の置かれた状況に思いを馳せたりしつつ、写真を眺める俺である。

 ……ここまでの流れでなんとなくわかるかもしれないが、現在俺はこの写真になんとも言えない違和感、とでも呼ぶべきモノを感じている。

 というか、そうでもないと人んちの直接面識のない親族の写真を、それこそ目を皿のようにして眺める理由がないというか。下手すると変態かなにかと勘違いされる所業……みたいな?

 

 

「それは確かに。お兄さんがそんなに熱心になるとか、とても珍しい」

「そうなのですか?」

「基本的には冷めてるから、お兄さん」

「人聞きの悪いこと言うの止めない?単に君と一緒に行動してると、迂闊に首を突っ込んだ先で酷い目に合う確率が高いから……ってだけだからね?」

 

 

 なお、TASさんからの評判はとても悪いのだった。

 ……君の言うノリの良さって、つまりは君の隣で君の動きをトレースしながら一緒に空の果てまでかっ飛ぶ、とかそういうやつでしょう?

 そんなノリの良さはいらんと言うか、一般人が発揮したら普通に死ぬやつだから真似したくてもできねぇよと言うかだな?……おいバカ止めろCHEATちゃん、「あれ?この人わりとこいつに付いていけてねぇ?」みたいな視線を向けてくるんじゃねぇ。

 

 

「……まぁ、君の自己弁護はどうでもいいとして」

「よくないんだがー!?俺の人権無視するのは酷いんだがーっ!?」

い・い・と・し・て!!……おほん。確かに、私としても君がこの写真を熱心に眺めている理由、というものは気になるかな」

「お、おぅ……」

 

 

 怒られちまったい、なんてこったい。

 ……などと軽口を叩けば、MODさんの米神にうっすら青筋が浮かんでいたため、慌てて居住まいを正すこととなる俺である。

 

 ともかく。みんなが気にしているようなので、一応言葉にしてみると。

 

 

「……見覚えがある気がする?」

「それは妹さんにですの?それとも、横のチャラ男さん?」

「いやー……どうだろ?なんとなく違和感──正確には既視感があるってだけだから、それの出所が何処なのかがわからないというか」

 

 

 だからこそ、ずっと熱心に眺めていたわけだが。

 ……そう、俺がこの写真を眺め続けていたのは、この写真に写ったものに違和感を抱いていたからだが、その違和感というのは正確には()()()だったのである。

 

 すなわち、『この写真の中のなにかを見たことがある』ということになるわけなのだが……しかし、この写真に写っているのは件の妹さんと、その横でへらっとした笑みを浮かべたチャラ男くらいのもの。

 一応、その背後に何人かの人間が写っていたりもするものの……サークルの仲間かなにか、とあやふやな表現をしたように、あまりハッキリと姿が写っているわけではない。

 まぁ、敢えて言うのならば、内装的に部室かなにかの中っぽい、ということはわかるが……例えばそれがなんの部室なのか、みたいなことはまったくわからないのであった。

 

 

「……確かに。パソコンやら資料やらが散見していますが、その内容が読み取れるほど鮮明な写真、というわけでもありませんしね」

「授業を受けてるような感じではない、ってことは辛うじてわかりますがぁ……んー、確かにそれ以上の手がかりはなさそうですねぇ」

「でも、アンタはなんか引っ掛かってるんだろ?」

「なんだよなぁ……なにが引っ掛かってるんだか……って、ん?」

「おっ、なんだなにか見付けたか?」

 

 

 写真を持ち上げて、矯めつ眇めつ眺めてみるも、どうにも違和感の正体は掴めない。

 いい加減、諦めてしまおうかと思ったその時、俺はようやくその違和感の正体にたどり着いたのであった。

 

 

「……あっ」

「あ?」

 

 

 ──この人の空気感、あの夏の日に出会った()()()()に似ているのだ、と。

 

 

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