同居人がTASさんである時、一番困ることというのは、やはり突然ワープしてくることだろう。
……真面目に話を聞いている相手にこう告げると、大抵変な顔を返されるわけだが……別に俺が適当なことを言ってるわけでも、彼女が物理法則を無視した動きをしているというわけでもない。
いやまぁ、実際には物理法則なんて屁の河童、空気抵抗もなんのそのとばかりに、どこかの勇者みたいな
なんでも、『お兄さんの前でそれをすると(お兄さんが)儚く散ってしまう』とのこと。……つまりはそれ、衝撃波とか出る速度まで加速できるってことなんです?ケツも使わずに?(恐怖)
まぁともかく。
そういうわけなので、ワープすると言ってもこちらの死角に常に回ってくる、みたいな意味で捉えて貰えれば問題ない。
結果として『相手の姿が見えていない』という状況が連続するため、ワープのように錯覚してしまうというだけの話なのだ。……それはそれでおかしい?それはそう。
「でも、お兄さんの死角は読みやすい方。多分追記は三桁行かない」
「そう言われても、お兄さんにはそれが多いのか少ないのかわかんないしなー」
「参考までに、私とは全く無関係の学校に侵入して、そこにいる校長先生のカツラを
「へー……いや待った、その記録はなんの参考にもならないし、そもそもなんでそんな行動の追記数知ってるのキミ?」
「……技術の発展には犠牲が付き物」
「校長先生の恥部を、なんか尊いものみたいに言ってんじゃねーよ」
んもー、この子は気軽に人を地獄に叩き落とすんだからー。
……いやまぁ、恐らくは
未然に事故とか事件とか防いじゃってるみたいなので、予言者としては落伍者も良いところだと思うけどね。
「気付いてしまった」
「なにに?」
「この世の真実」
「へー」
「ほら、短縮できた」
「……いや、それで良いのかキミは」
突然に投げられた話題が大暴投だと思っていたら、後ろのフェンスに跳ね返ってストライクゾーンに戻ってきた件について。
この間実際にやられて驚愕したが、可能性が一パーセントでもあるのならやれないことはない……というのはとても恐ろしいことだと思う。
まぁ、その才能をもっと別の場所で活かせよ、みたいな気分も同時に沸いてきたわけなのだが。
ともあれ、今日も今日とて短縮に余念のない子である。
具体的になにを短縮しているのかはわからないので、実際に短縮できたという確信は彼女の中にしか存在しないわけだが。
「……見たいの?」
「寧ろ見れるもんなの?」
「……見せられるかもしれないけれど、見たら多分発狂する」
「なんと、そんなにショッキングな光景が……っ!」
「いらないパターンが多過ぎて飽きる。っていうか腹が立つ」
「……動画編集者の悲哀みたいなもんだった件について」
なんでもできるように見えて、意外と苦労も多いのだな……と、涙をホロリと流す俺なのであった。
「……ごめん今のやり直しさせて、ムービーになっちゃった」
「別にいいけど、仄かに同情した俺の気持ちも返して?」
TASさんと言えばロシア系の金髪ようじょ、みたいな話がどこから広まったのか、俺は詳しい話を知らないけれど。
とりあえず、自称TASである目の前の少女が、世間一般的に美少女区分になるということくらいはわかる。
……いやまぁ、例え金髪ようじょだろうがそうじゃなかろうが、突然突拍子もない行動を取り始める時点で、千年の恋も冷めるというものだろうけど。
「TAS的にはとてもよい。(恋愛)フラグを一つ丸々飛ばせる」
「んー、そのTAS的感覚が最早ポジティブにしか聞こえないの、正直お兄さんも毒されてきた感が凄いなー」
「でも実際、拘束系のイベントはできれば避けたいのが本音。場合によっては酷い乱数しか引けない(から逃げるのに時間が掛かる)、なんて状況になることもあるし」
「なるほど?一応参考までに聞いておくけど、例えば縄でぐるぐる巻きにされるのって嫌な感じ?」
「それは問題ない。最悪関節外して抜けるから」
「……いや、どこの格闘家なのキミ?」
「波◯拳は撃てないけど、竜巻◯風脚ならイケる。高所から飛び降りる時に便利」
「その台詞吐けるの、てっきりストリートなファイターさん達だけだと思ってたわ」
そもそも、人の人体構造で浮力とか出せるんだ?
……的なツッコミが脳裏に浮かんだが、実際に目の前でくるくる回って