はてさて、なんというかもう、こっちの手の届く範囲を三段くらい飛び越してったっぽい現状なわけだが、事態はこちらが思う以上にとても深刻である。
「え?……あ、ああ。確かに、地球を照らす太陽が消えたということは、それ即ちこの星の臨終のカウントダウンが始まった、ということと同義ですものね……」
「ああ、ゆゆしき事態だ……このままではいつまでも夜だから朝に起きれなくなってしまう……っ!!」
「悩みのスケールが小さすぎではありませんことっ!?」
こちらに驚愕の声を投げてくるAUTOさんだが……いや違うんだよ、もうここまで来ると驚くとか驚かないとか以前に、現実味が無さすぎて最早なんも感想が浮かんでこないというか?
いやだって、人を閉じ込めるだけならまだしも、まさかの天体一つ閉じ込め成功である。……心なしか手の内のカメラまで震えてるような気がしてくる始末だ。まさかいけるとは、みたいな?
ともあれ、冷静に考えると地球滅亡のピンチ、というのは間違いない。
地球という星に人が住めるのは、太陽が地表を暖めているから……という面があることは否定できない。
無論、それだけが理由なわけでもないが……太陽が無くなれば地球に決して終わらぬ冬が来る、ということは間違いない。
なにせ、永遠に夜なのである。
空気が暖められることはなく、日が差し込まないので草木が光合成を行うこともなく。
人工の明かりでごまかすにしても、世界全てが真っ暗なままであるのなら、それは永遠に明かりを灯し続けなければいけないことと同義。
つまり、エネルギー問題が今の何倍・何十倍の速度で襲い掛かってくる、ということと同義である。
それ以外にも問題は山積みだろうが……ともかく、未知の生物が襲ってくるー、なんて絵空事より遥かに地球の危機である、ということは間違いないだろう。
……太陽がなくなるとか、本来ならその『未知の生物』より遥かに実現性の低い危機のはず、なんだけどね!
「……いや待て、そうだTASさんが光っているのなら、写真に閉じ込められた太陽も輝いて然るべきなのでは?」
「冷静になってくださいまし貴方様、そもそも写真が輝いていること自体がおかしいんですわよ?」
「あっ、光った」
「そんな馬鹿な!?うわ眩しっ!?」
そこまで考えて、そういえばTASさんが光ってるなら太陽だって輝けるはずでは?……という思考が俺の脳裏に閃いた。
……冷静に考えればAUTOさんの言う通り、写真が光るわけなんてないのだが……こうして俺が口にした瞬間、まるでそれをさっきまで忘れていただけだった、と言わんばかりに太陽は写真の中で輝き始めたのだった。
まぁ、流石に地上に太陽の輝きがそのまま顕現した場合、眩しいどころの騒ぎではないので、程度的には周囲が昼間になるくらいの光源、といった感じだったが。
『もし太陽そのままの輝きだったら、一先ず宇宙に写真を打ち出せば問題の先送りくらいはできたのにね』
「先送りできても、騒動が終わるわけではないと思うのですが……」
太陽に負けじと輝くTASさんと、それにツッコミを入れるのは止めておくことにしたAUTOさんの掛け合いを眺めつつ、はてさてここからどうしたものかと俺は一つため息を吐くのであった。
「ただいまー」
「おっとお帰りなさいMODさ……なにその物体!?」
「逃げてる途中で辺りが暗くなっただろう?そこにさっきの自分の行為を思い出した結果、『これやったの自分だ!?』と罪が増えたことに気付いて胃をやられたCHEAT君の慣れはてだよ」
「うわぁ……」
暫くして、MODさんが松明片手に戻ってきた。
……どこから出したのその松明?という問い掛けには、近くの枝をパキッと折って、
ともあれ、彼女がこうして返ってきたということは、すなわちCHEATちゃんを確保したということ。
ゆえに、俺は件の人物の姿を確認しようとしたのだが……あれ?居なくね?
そう、本来ならMODさんの背後に隠れて、申し訳なさそうにしてるはずのCHEATちゃんの姿がない。
そこで始めて、俺はMODさんが松明を持ってない方の手でなにかを引っ張っていることに気が付いたのであった。
左手に握られたそれはロープであり、そのロープは彼女の背後へと続いている。
そのロープはキャスター付きの台のようなモノに繋がっており、その台の上に鎮座しているのは……人の顔のように見える模様の刻まれた岩、みたいなもの。
そしてその顔、よくよく見ると苦悶するCHEATちゃんのそれ、という驚愕物体だったのだ!
これには俺も思わず大声を挙げたが……聞けば納得、どうやらこの大岩はCHEATちゃんに大岩MODを当てた存在、ということになるらしい。
他人に対してのMOD適用できるようになったんだ、などという場違いの感想には、『相手の同意がある時だけね』という言葉が返ってきたのだった。
……つまり、申し訳なさの余りに岩になりたがった、ということらしい。
──そこまで思い詰めるなら逃げなきゃいいのに、という言葉は禁句である。