うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

208 / 728
日はまた昇るのなら、今は沈んでてもよくない?

「もうお嫁に行けない……」

「……この方は何を仰っているのです?」

「あーうん、そっとしておいてあげてください」

「はぁ……?」

 

 

 知らぬは本人ばかり、というべきか。

 ……いやまぁ、MODさんが勝手に自爆していたようなものなんだけども。

 ともあれ、二人の共同作業により無事生み出されたコピーカメラは、現在CHEATちゃんとDMさんの手により分解作業中である。

 

 

「……ブービートラップくらい仕掛けられているかもと思っていましたが、拍子抜けするくらいなにもありませんね」

「そんなん、ないならないでいいっての」

 

 

 なお、分解の際タブレットのままだとあれだろう、ということでDMさんはメカTASさんの姿に戻っている。

 そんなメイド姿の彼女は、カメラを弄りながら困惑したように声を挙げるのだった。

 

 まぁ確かに、太陽を写真に封じ込める、なんて無茶苦茶なことができるカメラなのだから、重要な内部構造にはそれを解析されないようにあれこれと仕掛けがしてあってもおかしくない……。

 というか、寧ろ仕掛けられているのだと半ば確信していたからこそ、こうしてコピーを作ってそれを解体する……という遠回しな行為に及んだわけなのだから、拍子抜けというかくたびれ儲けというか、とにかく微妙な気分になってくるのは仕方がないだろう。

 

 

「……ふぅむ、コピーの精度が足りていなかった、とかでしょうか?ならばもう一度コピーを「もうやらないからねぇっ!!?」……というわけには、いかないみたいですわね」

 

 

 そんなDMさんの様子を見て、もしかしてオカルト的なパワーがこのカメラの肝であり、その部分が再現できていないからこそ現在なんのトラップも発生していないのでは?

 ……と考えたAUTOさんにより、再度のコピー作成の提案が──為される前に、涙目のMODさんに嫌がられたために頓挫したのであった。

 

 ……ううむ、こうなると仮に彼女の回復を待ってもう一度、という方針にしても、直前で彼女に逃げられるとかの事態を招きそうである。

 と、なると。現状のコピー品から、なんとか問題解決の取っ掛かりを見付けるしかない、ということになるのだけれど……。

 

 

「……おっと、これは……」

「ん?なになに、なにが見付かった?」

 

 

 そんな風にみんなで唸っていると、解体を続けていたDMさんが怪訝そうな声を一つ発した。

 ……なにかを見付けたのだろうか、と俺達が彼女の周囲に集まると、彼女は一つのパーツをピンセットで摘まみ、こちらへと見せてくるのだった。

 

 

「……ええと、これはなんなんです?」

「ああ、こちらの方ではまだ実用化はされていないんでしたっけ。これ、『ajmtdf,bolsvl』ですよ」

「……なんて?」

「ですから、『djisvlm,jaisvoz』ですって」

「さっきと発音違うんですけど!?」

 

 

 ピンセットで摘ままれたそれは、まるで宝石のよう。

 とはいえ、あまり見たことのない輝きをしているので、本当に宝石なのかはわからない。

 なにせ、()()()()()()()。黒色の物体が光の反射で輝いているのではなく、あくまで()()()と呼べる輝き方、というべきか。

 ……ってん?()()()

 

 そういえばさっきまで、そんな感じの光についての話をしていたような、と冷や汗を流す俺と、そんな俺には気付かず説明を続けるDMさん。

 

 

「本来もっと大きなモノのはずなのですが、ここまで縮小されたものは初めて見ますね。それでいて、機能は従来のものより良さそうです。……ああなるほど、確かにこれが組み込まれていたのなら、太陽を閉じ込めるだなんて非常識なことができるのも頷けます」

「……ええと、DMさんはこれがなんなのかを知っている、ということですか?」

「はい、なにせこれは──っ!」

「?DMさん?」

 

 

 そのままだとやべぇ、ということで必死に視線で告げる俺に、間一髪DMさんは気付いたようで。

 そのまま彼女は一度言葉を呑み込み、言うべきことを吟味したあと、再び口を開いたのだった。

 

 

「ええとですね、これはさっきも話題に出した異世界の観測技術の更にその発展、だと思われるモノでしてですね?」

「ということは、DMさんがかつて崇められていた文明圏と関係が?」

「ああいえ、こういう技術って最終的には似通ってきたりするものなのですよ?いわゆる収斂進化というやつです。決して、決してうちの文明圏とは関係ありませんので悪しからず」

「は、はぁ……」

 

 

 その態度は関係ある、って言ってるようなもんじゃねーかなー、などという俺の感想はともかく。

 要するにこのカメラ、その『なんとか』とかいう装置を使うことで、撮ったものを()()()()スケールダウンさせるモノなのだとか。

 詳しい原理は『三次と二次のスケール移動を行えるようなワームホール』が云々かんぬん、とかいうややこしい話をされたので一先ず割愛するが……。

 

 ともかく、三次元のものを二次元の世界に押し込める、という部分を担当しているのがこの装置、ということになるようだ。

 なので、太陽が写真からミニチュアに戻ったのは、この装置を逆動作させられたから、なのだとか。

 

 これがなにを意味するのかと言うと……。

 

 

「つまり、コピーはちゃんと成功してたってことだね!やったー!」

「そこまで喜ぶことなんですの……?」

 

 

 恐らく、このミニチュア太陽を元の大きさに戻して元の場所に転写する機能も、このコピーカメラの内部に再現されているはず、ということ。

 その事実に、「もう一回やれとか言われなくてよかった!」と喜ぶMODさんを見て、AUTOさんはなんだか納得が行かないように首を捻っていたのだった……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。