「まぁそういうわけで、最終的にはあっさり太陽をミニチュアにした部品が見付かってねー。そうして、世界は落陽の危機から逃れることができた……というわけなのさ」
「ふーん、なるほどねー。……いや、随分あっさりと言ってるけど、大概ワケわかんないことしてるわよね、それ」
「言わんでくれ、できれば現実を直視したくない」
はてさて、太陽が世界から消える……などという、どう考えても世界滅亡の危機としか言い様のない状態が、なんとか解決したあと。
俺は道路に面した優雅なカフェテラスで、のんびりとコーヒーブレイクと洒落込んでいたのであった。
で、そのコーヒーのお供に、と選んだ話題が、先の太陽消失事件だったわけである。
相手方の受けは上々(?)だったため、単なる話題の肴としては十二分の効果を発揮してくれたと言えるだろう。
「ふぅむ?……こっちの世界も大概かと思っていたけれど、君の世界も中々に大概だ、ということのようだね。身も蓋もない言い方をすると、週刊世界の危機……みたいな?」
「甘ぇよ、チョコラテのように甘ぇよアンタ。……TASさんが居る以上、週刊じゃなくて秒間世界の危機です……」
「……それは確かに」
向こうの連れである女性(ふと見ただけだと中性的な男性にも見える)さんは、こちらの話を聞きながら苦笑を浮かべていた。
……まぁうん、一人居るだけで世界の危機、みたいな人物はそう何人もいらんよねーははははー。
…………さて、いい加減現実逃避は止めるとして。
なんの事はない平凡なお兄さん、通算二回目の異世界紀行にございます。……なんでさ!?
わけを話せば長くなる……などということはさらさらなく。
単に、ミニチュア太陽を元の場所に転写する際に、なにやら熱暴走でも起こしたのか周囲が黒い光に包まれ、結果俺だけがこの街の近くの森に投げ出された……というだけの話なのだが。
状況が状況だったため、MODさんが暴走してないかが気掛かりな俺である。
「あー、一応前説明で例の『黒い光』とやらが人を殺すモノではなく、あくまでもどこか遠くの世界に吹っ飛ばしてしまうモノ……ってことは納得してるけど」
「だからといって、それに巻き込まれる人を見て冷静でいられる保証はない……身も蓋もないことを言うと、それこそ今までの鬱憤ごと爆発するかも……と心配してるわけだね?」
「あとはメンバーの一人に突っ掛かって行かないかも心配で……」
「「あー」」
なにせ、シチュエーション的にはかつてのトラウマの再来である。……妹さんからの元気な便りゆえに、そこまで気にしていないようにも見えたけど……。
それが単なる強がり、という可能性はどうにも否定できない。
更には現在の彼女、例の技術がDMさんのところの文明圏に関わりがある……正確には、彼女視点だと唯一の干渉手段になりうるもの、だなんて風に思っているはずなので、衝動的にDMさんに掴み掛かってもおかしくはない。
その辺りはまぁ、他の面々がフォローしてくれるのを祈るしかないわけだが……なんにせよ、吹っ飛ばされた側の俺としてはなーんもできないのも確かなので、仕方がなくこちらの世界でのんびり過ごしている最中なのであった。
……え?呑気が過ぎる?もうちょっと慌てたらどうかって?
「いやー、状況が状況だけに、慌てるを通り越して感情が凪いでいるというか……」
「おおっと、突然の小声タイム。もしかして思考に耽ってる?それとも郷愁に喘いでる?」
「単なる独り言なのでお気になさらず。……ところで、そちらは用事とかは大丈夫なので?」
確か、待ち合わせ中だとかなんだとか言っていたような気がするのだが。
そんなこちらの言葉に、彼女は「あー、相棒から『すまん、ちょっと遅れる』って連絡があってねー。暫く暇なんだよね、お姉さんってば」などと苦笑いを浮かべている。
ではもう一方の女性の方はどうか、というと。
「いや、なに。身も蓋もないことを言うと、私の目的は端から君でね。──異界の稀人、それもかつての我が故郷からの来訪者ともなれば、全身全霊を尽くしてもてなそう、という気分にもなるものなのさ」
「……一つ聞くんですけど、この人いっっっつもこんな感じなんです???」
「あー……うん。中二病が服を着て歩いているような人だからね、いっつもこんなもんだよ」
「はっはっはっ。本人を目の前にひそひそ話とはいい度胸だ。どうせだから君の纏う幻想を白日の元に晒すと言うのはどうだい?このハーレム女」
「あはははー。なるほど喧嘩なら買いますよー言い値の倍でー」
「なにこのひとたちこわい」
彼女は最初から、俺と接触することを目的としていたようで。
……いや、なんで俺?というか、その言いぐさだと俺がこっちに来ること端から知ってたみたいで怖くね?
などという感想を脳内に描きつつ、俺は突然笑顔で威嚇し始めた女達の戦いに、「うちはこういうのなくて良かったなー」などと場違いな思考を垂れ流すのであった。
……そうだよ現実逃避だよ悪いか!