うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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チートには、実は弱点がある

 ──しりとり。

 その起源は古く平安時代の『文字鎖(もじぐさり)』にまで遡るという。

 ……まぁ要するに、遊びそのものが古いもの、ということになってしまうわけで。

 さっきから彼女に感じる古臭さの証明になってしまっており、なんというかやっぱりこの子(本人がどうあれ)の基準は昔のもの、なのだなぁと思ってしまうというか。

 

 

「いやまぁ、そもそもの話を言うとなんで俺の周りの子達、みんなゲーム由来のなにかっぽいのばっかなのか、って話になるんだけどね?」

「……?なにかおっしゃいましたか?」

「いや、レトロゲーって配信許可取りやすいから、配信者達はよくやってるよなーって思っただけ」

「はぁ……?」

 

 

 なお、こっちの話を聞いていなかったらしいAUTOさんに首を傾げられたが、別の話をすることで有耶無耶にする俺であった。

 

 ……ともあれ、話をTASさん達がやってるものに戻すと。

 あれはしりとりはしりとりなのだが、黒板に書かれた升目の中のものを使ってのしりとり、という時点でなにがモチーフなのかというのは、わかる人にはわかってしまう。

 ……名前は出さないが、緑色の恐竜(ヨッ○ーではない)のゲームにあるミニゲーム、あれが元で間違いあるまい。

 

 このミニゲーム、至ってシンプルなしりとり……というわけではない。

 升目の中に描かれたモノを使ってのしりとりであり、かつそこに許される解釈の幅が広いことで有名なゲームなのだ。

 

 例えば、サイコロが描かれているとする。

 普通に考えれば、相手の単語の末尾が『さ』になった時に選ぶモノということになるのだが……そのサイコロの絵が一の目をこちらに見せている場合、それを『いちのめ』と読んでしまうことも可能なのである。

 

 無論、所詮はプログラムによって作られたミニゲーム、ゆえに特殊な読み方もゲームに予め設定されたものしか使えないわけだが……それでも、そのしりとりが色々と革命的だったことに違いはないだろう。

 絵を選ぶという仕様・および当時はドット絵が主流だったことも合わせて、壺にも魚にも見える選択肢()がある……なんてこともあったわけだし。

 

 とまれ、ここまではあくまで前提知識。

 これがリアル・かつCHEAT(チート) VS TAS(タス)の戦いである以上、どうなるかというのは火を見るより明らかである。

 

 

「私が選ぶのは『ゆ○ぎおう』!さあ、どうでる!?」

「……私には単なる『トランプ』にしか見えないのですが?」

「リアルだとわりと言ったもん勝ちなところあるよね」

「じゃあこれ」

「ええと……いや、それはどう考えても『テレビ』だろう!?」

「残念。それは『う%∵♀⊇は』。次どうぞ」

「今どうやって発音した!?」

「TAS語だな」

「TAS語ですわね……」

 

 

 見た目どう足掻いてもトランプじゃん、みたいな升目を指差しながら、データ改竄(チート)して答えを捏造してくるCHEATさんに対し、TASさんも負けじとTAS語で対応。

 ……どう考えても地獄の対決だが、傍目には一応勝負が成り立っているように見えなくもない。……見えるだけかもしれない。

 

 しりとりとは本来、答えを思い付かなくなるか・はたまた単語の最後が『ん』になることで終わりを迎えるもの。……なのだが。

 この升目しりとりにおいては、明確に『升目の数』という限界がある。また、升目の中の絵柄をしりとりの単語として使う以上、どう足掻いても答えがだせない、なんてパターンも存在している。

 

 先のサイコロを例にあげるのならば、『さいころ』『いちのめ』あとは……『しかく』なんて読み方も可能だろう。

 が、これはあくまでもしりとり。多彩な読み方が出来たとて、相手の言葉尻を捉えられなければ意味がないのである。

 つまり、盤面にサイコロが残っている状態で、相手が『さ』『い』『し』以外の文字で終わる単語を出してきた場合、答えが出せないので負けになる、ということだ。

 

 ──さて、ここまで語ったところで、さっきの二人の攻防を改めて確認してみよう。

 CHEATさんの方は、『カード』を指して『ゆう○おう』の答えを導きだした。

 ……答えの捏造をしてはいるものの、一応『カード』の一区分ではある。他にも『ヴァイ○シュバルツ』とか『デュ○マ』とかも答えとして出せたかもしれない。

 

 対し、TASさんの方はと言うと、テレビを指して『う%∵♀⊇は』と答えた。

 これは、実際に答えを書く必要のあるゲーム、『脳○レ』などで出てきた答え方──『TAS語』の一種である。

 視聴者側には意味不明の単語の並びにしか見えないが、内部的にはちゃんとした答えを選んでいる、というやつなのだが……この時点で気付くことがないだろうか?

 

 そう。この答えが正答として処理されているということは、『テレビ』の読み方として認められているということ。

 テレビを指して『う』から始まる読み方なぞ、見付けられるはずも……まぁ、頭を捻れば出てくるかもしれないが、少なくともすぐにすぐ出てくるようなものではないのは確かだろう。

 それが受理されているのだから、『う%∵♀⊇は』は『う』から始まる『テレビ』なのである。

 

 ……え?わからん?

 じゃあ単純に。

 

 

「CHEATさんの負けですね……」

「なんでやー!!!!??」

「ぶい」

 

 

 答えを捏造しているとはいえ、結局のところ升目内の絵に準じた答えしか出せない(=チートとは言いつつ、ルールには逆らえない)CHEATさんと。

 そもそも正解判定から弄りに掛かっているので、なにを言っても正解になるTASさんとでは、端から勝負になっていないということである。

 

 ……この結果は最初から見えていたので、AUTOさんと一緒に静観していたわけだったのでしたとさ。

 

 

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