うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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突然の異世界旅行、再び

 突然の女達の醜い(?)争いを無言で観戦しつつ、コーヒーに口を付ける俺。

 

 どうにもこの二人、同じ大学のゼミに通う先輩後輩の間柄らしいのだが、時々こうしてキャットファイト的なモノを繰り広げているらしい。

 

 

『つまりは乳繰り合い。とても不潔』

「ツッコミたいことは幾つかあるけど、とりあえず一つだけ。……どこでそんな言葉覚えたのTASさん」

 

 

 そんな裏事情を(何故か)解説してくれたTASさんは、写真の中で小首を傾げていたのであった。

 ……いや、というかそもそもなんでここに居るのTASさん。

 確かこっちに来る前に写真の中からは脱出できてたはずだし、そもそも俺ってば君の写った写真なんか持って来てなかったよね?

 

 

『安心して。この写真は予め撮っておいたものを、お兄さんの鞄の中にこっそりと忍ばせておいたものだから。ついでに言うと、用事が済んだら爆発して証拠隠滅する』

「怖っ!?爆発すんのこの写真!?っていうかまさかの先撮り?!(未来を)読んでたんなら止めてよ俺の異世界旅行を!?」

『またまたー、もうお兄さんもわかってる癖にー』

「ぐぬぬぬ……」

 

 

 そんな俺の疑問を一刀両断し、TASさんはふふんと笑っていたのであった(※当社比・写真内)。

 ……うん、先読みしてるのに止めてないってことは、TASさん的には必要な行程だと思ってる、ということなのでそりゃまぁ俺にはどうしようもないというか。

 

 そんな風にたそがれていると、どうやら言い争いは終わったらしく、二人が揃ってこちらを見てくる。

 

 

「「君はどっちに案内されたいっ!?」」

「あ、終わってねーわこれ。争いの舞台が別のステージに移行しただけだわこれ」

『お兄さんったらモテモテ。良かったね?』

 

 

 なんも良くねーよとTASさんに返しながら、俺は小さく頭を抱えるのであった。

 

 

 

・A・

 

 

 

 暫く悩んだ結果、MODさんの妹さんの近況について調べるのを優先すべきだろう……ということになり、主な案内役を(半ば嫌々ながら)そちらに任せた俺。

 ……嫌がってる理由?そりゃまぁ、単純にこの人なに言ってんだかわかんないことが多いというか。

 

 

「むぅ……私の喋り方なんて、そう大したモノではないのだけれどね。なにせうちには身も蓋もないことに、私の数十倍くらいなに言ってるのか初見では判別できないような後輩がいるのだからね」

「またまたご冗談をー。そんな人居るわけな……え?もしかしてマジで言ってらっしゃる?」

「んー、数十倍は言い過ぎかなー。喋ると一緒に副音声が聞こえてくるってだけだからね」

「……いや、そっちの方が怖いんだけど???」

 

 

 なにそれこわい。

 ……いやマジで、普通の発声に常に副音声がくっ付くとか、それどういう原理なん?

 

 なお、写真の中のTASさんはその人物へ謎の対抗心を燃やしており、『私も一回の発声で二音以上出せるようになる』などと決意を新たにしていたりしたのであった。

 ……いや、俺聖徳太子とかじゃないんで、喋るんなら普通に一音一音別々に喋って貰えます?

 

 

『でも、上下同時押しみたいに活用箇所多そうだし……』

「いやまぁ、TASさん的には魅力的なのはわかるけども。……それよりなにより、そんなの覚えて帰られると、AUTOさんとか他の面々にも伝播しかねないから止めてくれ、というか……」

「ふむ……確かその子は、人のできることならば大体洗練させられるとかいう子だったかな?」

「そうですよー。だから『一度の発声で主音声と副音声を同時に出せる人が居る』だなんて知られたら、確実に覚えて活用できるようになります」

 

 

 そして、CHEATちゃんも真似できないか試し始めるだろうし、DMさんもメカであることを活かして真似してみることだろう。

 MODさんができるかは微妙だが……明確に無理だろうって感じのダミ子さんを除けば、半数以上が同時発声を覚えて使えるようになる可能性がある、ということになってしまう。

 

 ……結果、周囲から聞こえてくる声が半人分増え(1.5倍になり)、俺はなーんもわからんと匙を投げる羽目になるのだ。

 そんな未来がありありと予測できたため、TASさんには悪いのだが諦めて欲しい俺なのである。

 

 

『むぅ、そこまで言われては仕方ない。今回だけね』

「……しまった、ここで『今回だけね』を使いきってしまったか!?」

「なにその謎の御約束みたいなの?……というか、さっきからツッコミ損ねてたから今ツッコむけど……なんでその写真、中のTASちゃんが喋ってるの?流石の私も意味わからんのだけど?」

「……?だって、TASさんですよ?」

「……いや、TASって言葉をなんでも説明できる魔法の言葉として扱うの止めよう?」

 

 

 やべぇ、こんなしょーもないところでTASさんの『今回だけ』を使いきってしまった!

 このままでは、こっちの世界で見つけたすばらしい()技能を、TASさんが覚えてしまうことを拒否できなくなってしまう……!

 

 などとコント染みたやり取りをしていたところ、例の人から今さら過ぎるツッコミを頂くこととなったため、俺は首を傾げ返すことになったのであった。

 ……いやだって、TASさんがTASさんであることになんの問題が?

 

 そんなこちらの様子を見て、彼女──部長と呼べ、と言っていた。……なんの部長?──は、困惑したように眉を曲げるのであった。

 

 

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