うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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異世界紀行は続くよ、何処まで?

 部長さんが首を傾げるのを見て、MODさんの妹さん──こっちは不思議さんとでも呼びたまえ、と言っていた。……自称するのそれ?──は、小さく苦笑を浮かべている。

 

 

「まぁ、彼女は一部を除いてわりと一般人だからね。私みたいに耐性がない、というわけなのさ」

「うっわ、自分だけ『わかってますよー』って顔してるよこの人。……っていうか、なんで今日は一人称変えてるんで?猫被りかなにか?」

「一人称?」

 

 

 そんな彼女の様子に、部長さんは不満げに声を挙げていた。

 ……その中で溢れた言葉に、俺は首を傾げることに。……ええと、一人称が違うというのは、本来『私』って自分のことを呼ぶタイプではないってことなんです?

 なんでまたそんなことを、とこちらが問い掛けるような視線を向ければ、彼女はバツが悪そうに頬を掻きながら、小さくぼやいたのであった。

 

 

いやその……女の子らしくしなさい、って姉に怒られそうだというか……

「ええ……?(困惑)」

 

 

 ……どうやら、昔から自分のことを『僕』と言っていた不思議さんは、それでよくMODさんから『せめて女の子らしくしなさいよ!』とかなんとか怒られていたらしい。

 それが今でも変わってない、となればそれこそ姉がこっちに攻めてきそうだ、と彼女は感じているのだとか。

 

 

『うん、正解。貴女が一人称を変えてなければ、恐らくあと数十分もしない内にMODがこちらに乗り込んできていたところ』

「身も蓋もないくらいに間一髪!!?」

「滅茶苦茶焦ってらっしゃる……」

 

 

 さっきまでの余裕綽々っぷりは何処へやら。

 不思議さんは額の汗を拭いつつ、「良かった……本当に良かった……」などと呟いていたのであった。……うーむ、ぐだぐだしてるぅ。

 

 

 

・A・

 

 

 

「ところでTASさん、俺ってどのくらいで向こうに帰れる感じ?」

『今回は前の夏休みの時の違って、三個どころか十個くらい離れた世界に来てるから、その分迎えが来るのも遅れる感じ』

「うへぇ、マジかー」

 

 

 先導してくれる不思議さんの背を追いつつ、写真の中のTASさんに問い掛ける俺。

 彼女の説明するところによれば、今回の異世界移動は前回夏休みの時のそれより遥かに遠方に吹っ飛ばされているらしく、迎えが来るまで結構な時間が掛かりそうだとのことであった。

 ……『私がこうして一緒に来てなかったら、もっと掛かってた』という辺り、この写真をビーコン代わりにできている現状はまだマシ、ということになるらしい。

 そういう意味では、彼女の同行は必然的であった、ということになるのだろうか。

 

 

「……そういえば気になってたんだけど、君ら変わってなくね?」

「…………?」

「いや、そこで首を傾げられてもお姉さん困るんだけど。……あー、歳取って無くない?というか」

「え、一年そこらでそんなに変わんないと思うんですけど」

 

 

 そうしてTASさんと会話していると、気になることがあったのか横合いから部長さんが口を出してきた。

 ただ、その内容は『見た目が変わってない』というなんとも奇妙なもので、こちらとしては首を傾げざるを得なかったのだが……あー、そういえばこっちってループしてるから、歳とか取ってないんだっけ?

 そんなことを考えながら声を返せば、何故か部長さんは困惑するような仕草を見せていた。……ええと、なにか変なこといいましたかね俺?

 

 

「……君の中でどういうことになっているのかはわからないけど。彼女が君と会ったのは、()()()()()なんだよ、身も蓋もないことにね」

「……なんですと?」

 

 

 そんな風に困惑に困惑で返すこととなった俺に、不思議さんが補足として情報を提示してくれたのだが……俺は余計に困惑することになったのだった。

 なにせ、こっちからしてみれば(ループ云々を抜きにすれば)去年の話なのに、部長さんからしてみると三年前の話だったと言うのだから。

 

 ……ただ、その言葉に納得する部分もなくはなかった。

 なにせ部長さん、よくよく見るとあの夏の日よりもちょっと大人びている感じだし。

 

 

「……お?ナンパかな?」

「人が真面目に話してるんだから真面目に聞いてくれません?」

「おおっと御免御免。……まぁうん、あの時の私ってば高校三年生だったからねー。流石にお酒も飲める歳ともなれば、色々と変わってくるってもんよ」

「……変わってるかね?」

『さぁ?』

「変わってるーんーだーよー!」

 

 

 とはいえ、さほど大きな変化と言うわけでもなく、不思議さんの言葉を受けて初めて気付いたくらいだったりもするわけなのだが。

 そんなこちらの言葉に、部長さんはなにやら不満げな様子で声を挙げるのであった。

 ……いやまぁ、俺的には結局歳下であることは変わらないので、あんまり実感がないというか。

 

 

「歳下?……君、幾つなんだい?」

「これくらい」

「……いや、免許出されてもわからないからね?こっちと暦が違うんだし」

「おおっとそうか。……ええと、今年で二十四ですね、はい」

「うわ見えない!?童顔過ぎるでしょ!?」

「……よく言われる」

 

 

 なお、自分達より歳上ってどれくらい?

 ……と聞かれた俺は、一先ず免許を呈示してごまかしたものの、こっちの暦と向こうの暦が違うのでわからん……と至極もっともなことを言われたため、結局自分の口から年齢を明かすことになったのだが……。

 案の定、見えないだのなんだのと言われてしまったため、微妙に不機嫌になる羽目になったのであった。

 ……うるせー!童顔言うなー!

 

 

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