うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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暫く続く異世界での日常

 暫く拗ねたのち、そうして拗ねてること自体が年相応に見られない理由では?……などという正論をぶつけられて撃沈した俺が、復活するまでに掛かった時間はおよそ一時間ほど。

 ……その間に大学の構内に案内された俺は、彼女達の仲間が集まる部屋へと案内されていたのであった。

 

 

「つっても、だーれも居ないんだが」

「身も蓋もないこと言うと、今日は休みだからね」

「貴方ってば、こっちからしてみたら住所不定・国籍不明の異邦人でしょ?そりゃまぁ、ホテルとかには泊められない以上、寝泊まりできるところ別に用意しないとじゃない?」

「……まさか大学に寝泊まりとかする羽目になるとは思わなんだ」

 

 

 無論、特に意味もなく連れてきたわけではなく、当面の寝床の提供のためのものだったみたいだが。

 ……忘れているかもしれないが、ここにいる二人は俺から見て異性であるし、なんなら二人とも恋人持ちである。

 

 つまり、見ず知らずの他人・かつ異性を家に泊めるような余裕というか理屈というかがないわけで。……結果、部室なら徹夜とかで寝泊まりすることもあるので問題ないだろう、ということで寝床としての提供先に選ばれることになったのであった。

 ……いやまぁ、部外者を連れ込んで寝泊まりさせてもええんかい、みたいなツッコミも無くはないのだけれど。

 

 

『その辺りは私が調整するから大丈夫』

「うーむ、流石はTASさん。こういう時は特に頼りになるぅ」

「……いやまぁ、それもそれでおかしいんだけどね、本当は」

 

 

 そこら辺の問題(見回りの教師に見咎められるパターンなど)が起きる確率については、TASさんが写真の中から乱数調整してくれるとのこと。

 うーむ、やはり持つべきものは知り合いのTASさん、というわけか。……部長さんが呆れたようにため息を吐いてる?知ーらなーい。

 

 ともかく、当座の住居を手に入れた以上、次にすべきことは決まっているだろう。

 

 

「……履歴書なしでできるバイトとかないかな?」

「衣食住のうち、食を満たすための職、というわけだね?」

「間違ったことは言ってないのに、なんだろうこの微妙なオヤジギャグ感……」

 

 

 いや、そんなつもりで言ったんじゃないからね?

 ……とほんのり顔を赤く染める不思議さんに、俺は小さく苦笑を返すのであった。

 

 

 

・∀・

 

 

 

 はてさて、当面の寝床を確保した以上、次に確保すべきなのは食べる物、ということになる。

 

 働かざる者食うべからず、というように労働をしない者に飯は手に入らないのは常識なわけだが……悲しいかな、こちらの世界に俺の身元を証明してくれる人も物もない。

 ゆえに、履歴書なしでもなんとかなるような仕事を探し、日々の糧を得なければいけないのだけれど……。

 

 

「ヤメロー!シニタクナーイ!!」

「いやいや、死なない死なない大丈夫。ちょっとお薬キメるだけだから、ね?」

「……いや、なにしてるの二人とも?」

 

 

 俺は現在、糧を得るために人としての尊厳を捧げる寸前にまで追い込まれていた。

 ……解りやすく言うと治験、というやつなわけなのだが、その薬を作っているのが不思議さん……という時点で、わりと危ないことになっているというか。

 っていうかマッドサイエンティスト枠かよこの人!?属性盛り過ぎだろ!?

 

 

『異世界人で本当は僕っ子でマッドサイエンティストで口癖は『身も蓋もない』。……うーん、今時珍しいレベルの詰め込み具合』

「……いや、身も蓋もことを言うのもあれだけど、私くらいの詰め込み具合なら昨今ありふれてないかい?」

「マジかよ日本始まったな(?)」

 

 

 なお、ここまでコント染みたことをやっていても、迫り来る薬からは逃れられなかったのであった。あー、労働の音ォ~!()

 

 

「まぁでも、同じ日本とは言えど別の世界であることには間違いないし、財布の中身を迂闊に使えないのは仕方ないよね」

「ぬぐぐぐ、この一万円さえ……一万円さえ使えれば……」

 

 

 不思議さんから対価の千円札を頂きつつ、労働の苦しみを噛み締める俺である。

 ……部長さんの言う通り、同じ日本であっても俺が異世界人であることがどうにもネックになっているというか。

 身元の保証人も居ないし、持ってる日本銀行券も番号的に足が付きそうで怖いし。

 ……そこら辺、なんとか上手いことできないのかとTASさんに聞いてみたりもしたものの、『流石に今の私にできる範囲の外』とすげなく断られてしまっては、俺としてもぐうの音を出すくらいしかできることはないのであった。

 

 

「一家にお一人TASさんだなんて夢のまた夢だったんやなって……」

『む、そこはかとなく侮られている予感』

「だからといって三連単当てようとしたりしないようにね。君の狙うやつかなり目立つんだから」

 

 

 なお、今のTASさんでもできる金策に、ギャンブルに走るという選択肢があったりしたものの……未成年にギャンブルさせるなという至極まっとうな指摘と、狙うのが大穴ばっかりで結果的に目立ちかねないから止めなさい、という注意の二点により、考慮の対象外になってしまったことを合わせて記しておきます。

 

 ……小物狙いとかTASさんからしてみれば業腹(ごうはら)ものだからね、仕方ないね。

 ──いや、そこは拘りを曲げて欲しかったんだが???

 

 

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