「……ええと、思わずツッコミを入れてしまったけど……君の知り合いなのかい?この子」
「知り合いと言うか、一方的に知ってるだけというか……」
家の中に居た、
字面だけ見れば即通報案件なのだが、それをするには相手の特徴に引っ掛かりすぎるモノがあったため、その対応は保留せざるを得なくなっていた。
……とはいえ、その引っ掛かりはあくまでも俺(と、写真TASさんの記憶があるだろう普通のTASさん)くらいのモノであり、他の面々にとっては見知らぬ人、というのも間違いではない。
なので、その一行を代表してMODさんがこちらに問い掛けてきたわけなのだが……それに対して返した言葉に、彼女は更なる混乱の渦に陥ったような感じになってしまっていたのであった。
……まぁうん、歯切れの悪い返答だったのは認める。でもさぁ?
「お兄さん聞いて聞いて。
「
「……頭が痛くなってきたのですが?」
「ひぃーっ!?TASさんの言葉が二重に聞こえますぅ~!?まさかの副音声同時放送ですぅ~!!?」
「……見なかったことにしていい?」
「ダメだよ、現実と戦わないと」
「こんな現実あってたまるかっ!!」
出来れば見なかったことにして、そのまま向こうの世界に送り返したいくらいなんですよ!
……え?現状向こうにアクセスできる人がTASさんしかいないから、彼女がそのつもりになるまで無理?……神は死んだ!!
「
「ああはい、これはどうもご丁寧に……」
興奮する(※当社比)TASさんを宥めるのを諦め、彼女の自室に放り込んだのち、戻ってきた俺が相対することとなったのは、対面側に腰を降ろした一人の少女。
……古めかしいというか固いというか、いっそ中二病といった方が正しいような?……と思うような声と一緒に、聞こえてくるのは真反対の大人しげな台詞。
なお、見た目もその発言の意味不明さに合わせるかのように意味不明であった。……眼帯と眼鏡が共存してるのはどう考えてもおかしい()
そんなわけで、俺の目の前にいるのは向こうの世界で不思議さんが話題に挙げていた人物──一度に二度喋れるとかいう謎スキルを持つ通称『寡黙さん』と呼ばれる存在なのであった。
……なるほどなるほど。あれだな?この間は俺が向こうにお邪魔する形だったから、今度は向こうからこっちにお邪魔する縁ができたって奴だな?
「……ふざけんなよマジで……」
「
「またTASさんの強化イベントじゃねーか!あの子どれだけ周りに迷惑掛ければ気が済むの!?」
「……
「ええまぁ……わりといつも通りですわね……」
ぜっっったいこれ、TASさんが意図的に起こしたイベントじゃんか!
向こうではついぞ会えなかったから、わざわざこっちにまでフラグ持ち越して呼び寄せたやつ!
もう今回という今回は許さんぞ!堪忍袋の緒が切れた!
俺にはTASがわからぬ。俺は、普通の一般人である。
バイトで飯を売り、日々をのんべんだらりと過ごしてきた。
けれどもTASの横暴に対しては、人一倍敏感であった。(唐突なメ○ス語り)
脳内のもう一人の俺が「でも多分、ここでTASさんを怒っても聞き入れやしないよ?」とか「だって『必要だから』って言われたらもうなにも言えなくなるよね?」とかなんとかほざいているが、そんなことは関係ねぇ!
今あの子を叱らないと、寡黙さんが可哀想なんだ!
「……
「二度同じ事を聞かれても答えは一緒ですわ。……ええ、わりといつも通りですわね」
当人がわりと深刻じゃなさそうな辺り、この怒りは正当なものではないのかもしれない。
けれど俺は信じてる。ここでTASさんを叱らないのより、叱っておく方が世の中のためになるのだと。
例えそれが初期装備で魔王に挑む勇者のように無謀な行為であっても、それをしなくていい理由にはならないのだから……っ。
まぁそんなわけで、自分で放り込んでおきつつ再び呼び出す、というなんともマッチポンプめいた行動を取った俺はというと。
「……?もう用事は終わったから、次回には帰ってるよ?」
「それはそれで問題だろうが……っ!!」
まったく悪びれないTASさんの姿に、俺は自身の敗北を悟るのであった。
……っていうか、ここまで引っ張っといて次の回には居ないのあの人?……マジで???