「……つまり、ダミ子さんのダミーデータはキャラクター情報だけで、アイテムデータとかフィールドデータとかのダミーはまた別の話……ってこと?」
「まぁ、簡単に言うとそうなる」
あれからダミ子さんを落ち着かせたのち、改めてTASさんに詳しい話を聞いたところ。
彼女から引き出せた情報は、大体次のようなものであった。
曰く、ダミ子さんの司る(?)ダミーデータとは、あくまでもキャラデータのみのことを指す。
この場合のキャラデータとは本当に単なるキャラデータのことであり、『ダミー』というデータ群の中でもわりと狭い範囲のものになるのだとか。
そのため、例の巨大樹木とかの侵略には無力だった……と。
「……一瞬納得しそうになったけど、よくよく考えたらサンタさん普通に来てたじゃん!いやまぁ、わりとゴリ押ししてたような気もするけど!」
「あれに関しては、彼女がアドレス偽装とかできたのも理由の一員」
「なんだかまたややこしい話になってきた予感がしますね……」
そんなTASさんの説明だが、秒で反論が飛んできたことは言うまでもない。
……いやだって、ねぇ?
確かにまぁ、ダミーデータのロックを掛けた範囲がキャラデータのみ……というのであれば、確かにキャラではない巨大樹木には効かない、ってのはわからんでもないけども。
そもそもの話、彼女がダミ子さんとして成立したあとにこっちに来たことのあるサンタさんが居る時点で、説明としては片手落ちというか?
そう問い質せば、彼女はまた別のシステムを持ち出してきたのであった。
「そもそもの話、あの時のサンタは忘れ物を取り戻すのにわりと必死だった。だから、どんな手を使ってでもこっちに来る必要性があった」
「それがアドレス偽装という言葉に繋がる……と?」
「そういうこと。あの時の彼女は、知ってか知らずか自分をキャラクターとしては扱っていなかった」
どうやら彼女が『サンタ』という、ある意味で特別な存在であることから起きた半ば必然的なすれ違い、ということになるようで。
どういうことかと言うと、彼女は『サンタ』である限り
……もう少し噛み砕いて説明すると、どうやらあの人、扱いの上では『イベント』に区分されるのだとか。
より正確に言えば、キャラクターとしての要素とイベントとしての要素を併せ持っている、と言うべきか。
「ゲーム作りにちょっとでも触れたことのある人ならわかるかもしれないけれど、イベント用のNPCとそこらを動いているNPCというのは、厳密には別物だったりすることがある」
彼女が例に出したのは、ゲーム内のイベントの構築の仕方。
例えば特定の条件を満たさないと出てこないイベントがあるとして、そのキーとなる人物は普段単なるNPCとしてそこらを動いている……みたいなことがある。
条件を満たしていないうちは、何度話し掛けても当たり障りのないことしか喋らないが……条件を満たした途端、人が変わったようにそのイベントの話をする……みたいな感じか。
こういうキャラのシステムを組む場合、条件を満たす前と満たした後では、外見上同じキャラでも内部的には別のキャラが置かれている、なんてパターンがある。
そして、あの時のサンタさんはそのパターンに近いのだ、とのことであった。
「単純なキャラデータはダミ子が埋めてたから、イベント用のキャラで来てた感じ。……サンタ視界ハックとか言ってたけど、その原理をこっちの概念で説明するなら、あの時の彼女は
「……ええと、本来周囲の人からの視界に反映されるはずの見た目は、ダミ子さん側が既に使用していたため、本来それと一緒に動く当たり判定と見た目の判定のないイベント用データが適用されていた、ということですか?」
「どっちにしろ説明がわかりにくい……」
あー、噛み砕いて説明すると。
見た目用のキャラと、イベント用のキャラの二種類が重なっているのが普通のキャラクター達の状態。
それを可能にするために、イベント用のキャラには当たり判定も見た目の判定も設定されておらず、結果として普通に見る分には見た目用のキャラクターの外見が優先される。
だが、あの時のサンタさんは『見た目用のキャラクター』をダミ子さんの存在で使用不可にされていたため、『イベント用のキャラクター』の姿で動いていた、と。
で、そっちには見た目とかの設定はないので、周囲の人に注目されることもなかった……みたいな?
まぁ、正直これが合っているのかどうかもよくわからんのだが……ともかく、ダミ子さんの効果が無かったと言うよりは、効果が薄かったとなる方が彼女的に安心、というのは間違いあるまい。
「見た目用……?イベント用……??」
「まぁ、本人が理解できるかどうかはまた別問題なんだが」
なお、一応ダミ子さん的には朗報のはずだが、当の本人は『なに言ってるんだかわからん』とばかりに目をぐるぐるさせていたのであった。
……専門用語を噛み砕いて説明するのって難しいからね、仕方ないね。