「~~~っ、お、覚えてろよー!!!」
「最後の逃げ方まで古典的。流石に憧れてしまう」
「うるせーっ!!」
負けが確定してのち、暫くぷるぷると震えていたCHEATさんはと言えば、最後に捨て台詞的なものをこちらに投げ付けたのち、黒板を押しながら走って逃げ出したのであった。
……なお、二人の勝負が終わるまで待っていた警察さん達が追っ掛けていく、というおまけ付きである。──昭和の悪役かな?
まぁともかく、こちらも巻き込まれた側なので……と警察さん達には伝え、ようやく解放された俺たちは、数時間ぶりに駅舎から外に出ることが出来たのだった。
……え?しりとりだけで数時間も経過してたのかって?まさかー。
「負けを認めず何度も向かってくる。そういうところも古典的」
「せめてガッツがある、と言ってあげませんか……?」
「勝ち目がない相手に挑み続けるのは単なる無謀なんよ……」
しりとりが終わったあとも、なんかこうレトロ感漂う勝負を挑み続けてきた彼女は、その悉くで返り討ち。
……いやまぁ、チートとは言ってもルール──ゲーム的にはプログラムに則った
「しりとりなのにしりとりしていない、とかやってましたものね……」
「理屈はわかるけど、『
「ぶい」
「いやぶい、じゃなく」
だってほら、お相手役はTASさんである。
見た目的には絶対正解していないのに正解になる……というルール無視がデフォの相手をするには、彼女はまさに役不足だったのだ。
……なお、この問題に関してはまだわかりやすい方で、正確には『ぅろさっかー』、Pが認識されていないのだとか。まぁやられた方は怒りのあまり、
「あれは危なかった。あのままだと私は負けていた」
「負けてたの!?」
「偶然は恐ろしい。『#♂∧∀∇』語と偶然一致していた」
「まずそのなんとか語からわからないのですが?……あ、そういうものがあると認識したせいか、なんだか話せるような気がしてきましたわ」
「君も大概おかしいよね???」
よもやTASさんに負け筋があったとは。
驚きではあるが、結局追記の波に飲まれたとあっては、微かな勝機も藻屑の泡である。
……あとやっぱりAUTOさんもおかしいな、って話になった。流石は
その分ルール外のことをしてくる人には滅法弱いのだが……なんてことを、謎の言語を習得してちょっとはしゃぎ、すぐ目の前でTASさんが普通に会話して来たことに気付いて意気消沈する……という、浮き沈みの激しいAUTOさんの姿を見ながら考える俺なのであった。
……いや、いくらなんでも秒速で負けるのやめない?
そんなことがあった、次の日。
今日も今日とてバーガーショップにてバイトに精を出す俺は、元気にスマイルを売り出していたのだった。
いやまぁ、ゼロ円のモノを売り出しても仕方ないってのはわかるのだが、このご時世朝でも昼でも夜でもない中途半端な時間帯に、飯屋が忙しくなるなんてことはほとんどないわけで。……まぁぶっちゃけると暇なのである。
無論、そんな暇な時間帯なので、店員も俺一人のワンオペ状態。
これがTASさんなら、「わかった、この時間に鬼稼ぎすればいいんだね?」とばかりに、どこからともなく売り上げを捻出し始めるのだろうが……生憎と俺は一般人なのでそういうことは出来ない、あしからず。
「……いや、そもそもその場合、そのお金はどっから来たもんなんだ……?」
なお、そこまで考えたところで、そうして異次元から捻出されたお金って、お札とかの場合番号とかどうなっているんだ?……という、法治国家においてはわりと死活問題な部分に気付いてしまい、ちょっと思考の迷路に放り込まれてしまったが……。
「あ、あのー……」
「ん?……アッハイラッシャーセーッ!!」
「ぴっ!?あっ、あわわわわ……」
背後、具体的にはカウンターの方から微かに聞こえてきた声に振り返り──そこに人影、すなわち客がいたことにより、あっさりと脱出することに成功したのだった。
……ふぅ、危ない危ない。危うく客を無視してしまうところだったZE☆……え?向こうから声を掛けられてる時点で、既に遅い?それはそう。
ともあれ、折角暇な時間帯に来てくれた客なのだから、盛大にもてなさねばなるまい。
いやまぁ、挨拶した途端にびっくりしていたので、あんまり大声出してはいけないタイプのような気もするので、ほどほどの接客にはなるだろうが。
なんてことを思いながら、相手の注文を待つ俺だったのだが……。
「…………んん?」
「ひぇっ」
「じー……」
「はっ、はわわわ……」
「……どこかでお逢いしましたか?」
「初対面ですぅ~……!!」
「あっ、そうでしたか。ゴチュウモンドウゾー」
「は、はいぃ~……」
その少女の顔に、どことなーく見覚えがあったため、思わず声を掛けてしまったのだが……ああうん。気のせいだったようだ。
はからずもナンパのようなことをしてしまったので、努めて冷静に仕事に戻りつつ。
素直に注文をして、席に小走りに駈けていく彼女の背をなんとなく視線で追いながら、俺は内心でこう吐露するのであった。
──いや、CHEATさんやんけ、と。
彼女の持っていた鞄、そこにぶら下がるキーホルダー。……