「……うーむ、仕方ない。こうなっては恥も外聞もない」
「ええと……その言い分ですと、なにか策がお有りなので?」
「策と言うにはとても拙い、ほとんど逃げみたいな方法だけどね」
暫く一同で考え込んでみたものの、特にうまい策は思い付かず。
それゆえ俺は仕方なく……遺憾ながら仕方なく、とある一つの方法を取ることにしたのであった。
「……と、言うわけで。DMさん、お願いします」
「……ってはい?わ、私ですか?」
で、その方法と言うのが、DMさんに任せるという、ある意味思考を放棄したような力業なのであった。
「……ええと、それは私達が天候を操作しようとするのと、一体何が違うのでしょう……?」
「本来の持ち主かそうでないかの違い、みたいな?神の技術なんだから人が使っちゃダメ……みたいな制限なんだから、それこそ元々神様なDMさんにその制約が振り掛かるわけがないというか……」
「あー、言われてみれば確かに……」
で、ここでこの選択肢が出てきたのは、つまるところ件の制約が
雑に言ってしまえば、加入前から普通に使えていたはずのDMさんに、その辺りの制限が発生するはずがない……というわけである。
ただまぁこれ、実際のところここまで選択肢に挙げるのを渋った理由、というものがあるわけで。
「第一に、梅雨みたいな長期間続くタイプの天候変化を抑える、となると負担が大きすぎるって点」
「……ああ、DMさんと地球、それからTASさんにとって……というわけですわね」
「え?なんでその三人なんだ?」
その一つめの理由が、天候操作に掛かる負担の捻出。
まず以て、この行為はTASさんからDMさんに頼む、という形になる。
ゆえに、形式上彼女に対して何か報酬を渡さなければならない……ということになるわけだが、その場合に予測される報酬の額が阿呆みたいなことになる可能性がとても高いのだ。
何故かと言えば、TASさんが個人の判断でオンオフするのならいざ知らず、頼み込む以上はあまり何度もそういうことはさせられないだろう、というのが一点。
彼女が天候操作を欲する時というのは、原則なにかしらを短縮するためである。
……逆を言えば、その判断は常にTASさんの中で瞬時に行われるものであり、それをDMさんに察知してフレーム単位で切り換えろ、などと言われても無理がある……ということになるのだ。
なので、必然的に天気は『晴れ』のままにする、というのが丸いということになるのだが……そうなると今度は地球環境の方に問題が出てくる。
実際どのようにして天候を操作しているのか、俺にはわからないが……バグが出にくい方法として考えるのならば、予め先に何処かで降雨を起こしておく……などの形式が考えられるだろう。
無論、そんなこと繰り返していたら別の地域に梅雨が移動してしまう形になるし、そもそも日本の方もずっと晴れになるせいで水不足になる、みたいなことになりかねない。
流石にそんなことになってしまっては、TASさんの行為も咎められる以外の道はなく……とまぁ、雑に見繕ってもそれくらいのデメリットがポンポン出てくるわけなのだ。
「……あれ?でもそれだと、普通にTASのやつがそれを使えるようになっても、それはそれで問題なんじゃ……?」
「説明の中で触れたけど、TASが必要とするタイミングを他人が察知しようとするのが難しい、ってのが主題だからね。実のところ、TASさん本人が使う分にはその辺りの問題はないのさ」
「えー……?」
そこまで説明したところで、CHEATちゃんからは疑惑の眼差しが飛んでくる。
基本的に傍若無人感のあるTASさんが、地球環境に配慮なんぞしているのか?……みたいな疑念なわけだが、そりゃもうしてない方がおかしいくらいなのでしてますよ、というか。
そもそもの話、天候の無茶な変化が地球環境に大きなダメージを与えることがある……というのは、それに伴って正常な動作を阻害される可能性がアップする、ということでもある。
任意コード実行は便利だが、扱い方を間違えると大本のデータや基盤にダメージを与えることもある……みたいな?
そのため、彼女はそれらの技能を使う際は、必要以上に使わないことを常に心掛けているのである。
なので、先の天候操作の場合だと、ラグ取りに必要な範囲・時間以上の継続的な天候操作は行わない。
ゆえに、彼女がそれを使っている姿を外から見た場合、どこぞの聖者の如く進行方向の雲が割れる、くらいの見た目となって現れるのである。
……え?それはそれであれじゃないかって?大規模な気象異常引き起こすよりかは健全なんじゃないかな……。
とまぁ、それがDMさんに頼む際一つ目の問題点。
そして次が二つ目の問題点なんだけど……。
「なるほど……ところでDM、これから道具として使われる予定はない?」
「じょうだんをいっているめつきじゃない……ですと……!?」
「TASさんが気付いてしまうと、このようにDMさん.exeを別の機械に移そうとしてくるんだ」
「それは……問題ですわね……」
なんだ、方法あったんじゃん。
……くらいのノリで、DMさんの人権……神権?を気軽に侵害しようとし始めるから、というなんとも言えない理由なのであった。