うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

223 / 728
雨の日には外に出るべきではないのだから

 はてさて、血走った目(※当社比)でDMさんを追っ掛けるTASさんをどうにか宥め、改めてDMさんに天候操作は使えるのかどうかを確かめたところ。

 

 

「あー……はい、使えないこともないみたいですね、一応」

「……一応?」

 

 

 と、なんとも微妙な反応を頂くことになったのであった。

 なので、その辺りを詳しく尋ねると。

 

 

「ええとですね、そもそもお二方が教えたモノを使えない理由って、『まだその時期ではない』からでしょう?」

「まぁ……恐らくは。それくらいしか原因が思い付きませんし」

「それとほとんど同じです。そもそもの話、()()()()ってこの時期どうしていると思います?」

「本来のDMさん?……ええと、確か……って、あ」

「……居ない時期のパラメーターは、基本的に本来のモノを踏襲する……でしたか?まぁそういうわけで、天候操作のような大掛かりなものは、出来てこの周辺半径百メートルくらいなのです。時間もほぼ一瞬、みたいな感じですね」

 

 

 本来私、封印中のはずなので。

 ……苦笑いと共に放たれた言葉に、一同はがっくりと肩を落としたのであった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「……ってことは、仮にDMさんをあてにするとしても、まともに運用できるのは冬頃ってことか……」

「そしてその時期になってしまえば、そもそもこちらの技能の解禁もすぐそこ。……敢えて彼女に負担を投げる必要性も、ありませんわね……」

「お力になれず申し訳ありません、とだけ返しておきますね」

 

 

 そのわりにはほっとしているような、とは言わない俺である。

 ……まぁ、杖とかにすげ替えられかけてたんだから、さもありなんというか。

 

 ともあれ、話は振り出しに戻ってしまった。

 梅雨の時期のTASさんのイライラをどうにかする、という名目で始まった会議は、文字通り完全に失敗したというわけである。

 一応、CHEATちゃんに天候操作アイテムでも作って貰おうか、みたいな案も持ち上がりはしたが……。

 

 

「……いや、この前みたいなのはヤだし」

 

 

 とすげなく断られてしまった。

 ……あーうん、彼女自身に天候操作の経験が無い以上、この間のカメラの解析の如く、集中力やら気力やら総動員する羽目になりそうなのは間違いなく。

 そりゃまぁ、やりたくないと突っぱねられても仕方がない話というべきか。

 

 ……あの時に比べれば、やり方を知っている人が他にいたりする分、まだ楽な方ではあると思うのだが。

 何分その相手というのがTASさんとAUTOさんという、地味に他人に説明するのが得意ではない二人……というのはマイナスポイントというか。

 

 

「……私は説明、下手くそなどではありませんが?」

「自らの技能に任せて、相手の記憶に焼き付けるようなやり方をするのは、決して説明とは言いません」

「……くっ!」

「いや『くっ!』じゃないが?」

 

 

 なお、AUTOさん説明下手くそ説に関しては、正確には『伝え方までもが最適化されるせいで、覚える過程とかまでもが省略されてしまう』という、なんというか色々おかしなことになるせいである……とだけ付け加えておく。

 いやまぁ、そんなことになるのは()()()()()()()()()()()()()()()に関してだけ、みたいな感じではあるのだが。

 ……説明書を熟知していなくても、操作自体はできるだろうけど。

 CHEATちゃん的には、説明書を隅から隅まで熟知しないとコードを書けないので相性が悪い……みたいな?

 

 まぁともかく、今のところ天候操作技術をどこからか用意する、みたいなあては無さげである。

 辛うじて、MODさんに周囲の壁紙を晴天に変えて貰って、気分だけでも晴れにするってくらいはできそうだが……「それって、彼女に喧嘩売ってる扱いにならないかい?」と言われれば強行はできまい。

 

 

「そういうわけなので、ここで考え方を変えます」

「考え方?」

「そう。結局のところ、この辺りはTASさんの胸三寸で決まる話なわけで、こっちがあれこれと気を揉んでも意味がない……なんてパターンは寧ろ頻発してしかるべき、くらいのものなわけでね?」

「先程までの会議を全部無駄だったって言い始めたんだけどこいつ」

「そこまでは言ってない言ってない」

 

 

 仮に無駄だとしても、対処法が無かったって結果を知れたのは間違いないわけだし。

 

 ……話がずれたので元に戻すと、結局彼女自身の意思でやれないとどこかで()()が出る、というのがここでの主題。

 本人は相変わらず「そんなことないもん」って言っているが、やっぱりコンマ一秒でも短縮の余地を見たのなら、彼女が満足しないのはわかりきった話。

 

 なので、こちらがあれこれ考えるよりも、彼女の意識を切り替える方が幾分楽、というわけなのである。

 

 

「はぁ……?」

「まぁ、言葉で説明してもわかりにくいだろうから実例を。──TASさん」

「なに、話を聞かないお兄さんとは話すことなんて「制限TAS」……なに?」

「ラグ有り天候操作縛り梅雨TASだ、やれるね」

「なるほどコントローラー壊れた想定。じゃあ仕方ない、頑張る」

「おー、頑張れー」

 

 

 ってわけで、こちらがTASさんに告げたのは、使えないのではなく使()()()()という体で進めよう、という心構え的なもの。

 ……そんなんでなにが変わるの?と言われれば、TASさんのやる気が変わるとしか。

 

 

「そ、そんな単純な話で終わるのですか……?!」

「いやまぁ、一連の流れで『代替手段がない』ってことを予め確認しておかないと、TASさんの説得成功率が無いに等しいから必要ではあったんだよ?今さっきまでの流れ」

「だとしても、骨折り損的な気分は免れないよ……」

 

 

 はぁ、と肩を落とす皆とは対称的に、TASさんは腕をぐるぐる回して楽しげに(※当社比)雨雲を見上げていたのでありました、どっとはれ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。