はてさて、一時期変なことになっていたダミ子さんが、無事元のダミ子さんに戻ってから暫くのこと。
六月もそろそろ半ば、例年であればそろそろ梅雨明けとなる時期、ということになるのだが……。
「……むぅ、まだ明けない」
「どうやら今年は少し長いみたいですねぇ~」
生憎と梅雨は継続中。
不満げに窓から空を眺めるTASさんを見て、ダミ子さんは小さく苦笑を浮かべていたのであった。
……で、俺はそれを見ながら部屋の中に除湿用のグッズを設置している……と。
「……熱心だね、お兄さん」
「あたぼうよ!湿気は敵!洗濯物は乾かないしカビは増えるし!でも作物には必要だから雨雲は消し飛ばさないでね!!」
「発言に苦労のあとが見えますぅ」
湿気が敵なのは確かな話だが、それを口実にされると困るというのもまた確かな話。
それゆえ、口汚く罵ったあとにフォローを入れる、という珍妙なことをしないといけないのは問題だと言えるだろう。
……いやまぁ、俺が変な目で見られる分にはまだマシ、ってのも確かなんだけどね!!
「涙ぐましい抵抗、お粗末様です」
「おおっと、すまんねDMさん。お昼御飯の用意任せきりにしちゃって」
「そうですね、貴方が味見をしてくれなかったので、適当な味付けになってしまったのは貴方のせい……ということになるのでしょうね」
「うげ」
「ふふ……冗談ですよ、冗談」
そんな風に会話をしていると、トレーの上に昼食を乗せたDMさんが、居間に向かって歩いてくる。
そのトレーを受け取りながら謝罪を返せば、あまり笑えない冗談を飛ばされることになったのであった。
……うん、この人メカっ娘だから味見とかできないんだよね。いやまぁ、食事機能自体はあるけど、味覚が独特(大分迂遠な表現)だし。
だから彼女に調理を任せる時は、誰かしら味見役を付けるのが常なんだけど……TASさんはあの通りで、ダミ子さんは病み上がり(?)。
なので、必然的に俺が手伝いに行かなければいけないはず、だったのだが……この通り、室内の湿度への対処に追われていたため、彼女のことを放置する羽目になったのであった。
そりゃまぁ、責められるのも仕方のない話というか……。
などと頭を掻きながら恐縮そうにしていると、たまたまこちらを見ていたTASさんと視線が合い──。
「……流石にDMは不毛。止めておいた方がいい」
「いきなりなにを言い出すのかなこの子は???」
「?」
何故か呆れたように、ため息を吐かれてしまうのであった。
……いや違うから。別に尻に敷かれてるとかそういうんじゃないからこれは。
はてさて、DMさんの用意してくれた昼食──そうめんに薬味が色々──を食べ終え、一息吐いた俺達。
そのままなし崩し的にゲーム大会へと移行したわけなのだが……。
「ちょっとTASさんー?幾らなんでも手を抜きすぎではー?」
「手を抜かれている状態でなお勝てない自分の腕を見直すべき」
「ぐぬぬぬ正論を……」
「それにしたってちょっとやる気無さすぎでは……?」
今回のTASさん、テンションの下がり方がゲームプレイにも出てしまっているようで。
なんと彼女、片手だけでこちらの相手をしているのである。……無論、ボードゲームのような片手でも問題ないやつなどではなく、パーティゲーム系の普通なら両手が必要となるタイプで、である。
これには俺達も激おこ……となれば良かったのだが、その状態でもこちらは相手の背を掴むことすら難儀するレベルだったわけで。
こう、なんというか彼我のレベル差を痛感せざるを得ない状態なのであった。
しかし、このまま嘗められたまま、というのは宜しくない。
例え勝てないのが確定しているとしても、一矢報いるくらいはして見せねば男が廃るというもの。
「そういうわけだから、行きますよダミ子さん!今こそ俺達のコンビネーションを見せる時だ!!」
「……コンビネーション?私と?お兄さんが?……ふっ」
「なんでそこで笑った貴様ー!もはや許さん、まずは貴様から落としてくれるわー!!」
「えっちょっ、なんでそうなるんですかぁ!?私じゃなくてTASさんを狙えばいいでしょぉ!?」
「うるせー!!こっちの手を払ったんだから貴様は敵じゃー!!」
「隙あり」
「「ほげぇーっ!!?」」
「……まとめて倒されていては世話がないと思うのですけれど」
「ごもっともですぅ……」
そんなわけで、ダミ子さんと協力してTASさんをどうにかする、という方針を打ち出したのだが、当のダミ子さんからは嘲笑からの却下のコンボを受けることになったのであった。
……え?そういうつもりじゃなかった?コンビネーション云々言えるほどに息が合うと思わなかっただけ?
うるせー!!こっちの勇気ある誘いを断った時点で敵じゃー!
……と、バカみたいな仲間割れをした瞬間を隙とみなされどちらも撃墜。
横でゲームに参加せずに俺たちを眺めていたDMさんに、なにやってるのこの人達……みたいな視線を貰うことになってしまったのであった。解せぬ。
そんなこんなで、なんでもない梅雨の日は暮れていくのであった……。