うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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二重人格は乙女の嗜み(?)

「……配信者っぽい、って印象は間違いじゃなかった、ってことかねぇ」

 

 

 パンに挟むパティを焼きつつ、緊張した様子で席に座って待っているCHEATさん……ちゃん?を横目に確認する俺。

 

 昨日の彼女はとにかく派手で、なんというか見ているだけで疲れてくる感じだったが……今の彼女は前髪によって両目は隠れており、その髪の色も服の色も、地味めな感じの物で纏められている。

 

 少なくとも、両者を見て同一人物と気付くには、アイデアロールとか必要な感じなわけだが……すまんな、多分クリティカルしたわ。

 疑惑ではなく確信を抱いている今の俺にとって、彼女がCHEATちゃんではない、なんて疑いは一切ない。

 その上で──昨日の『配信者みたい』という感想は、けっして間違いではなかったのだなぁと頷くことになったのだった。

 

 いやでも、ド派手な配信者の中身が地味めな女の子、とか使い古されてやしない?……って感じがしてくるのだけれど、「あっ、だからか」って気分にもなってくるわけで。……どこまで古いんだろうね、この子。

 

 というか、恐らくだけど『ソフトとゲーム機の間に挟む』って部分も、彼女のキャラクター性に加味されているのだろう。

 本来の自分を書き換え、まったく別の自分を出力する──というその形式は、なるほどある意味ではコードの書き換え(チート)、と呼んでしまってもおかしくないかもしれない。

 

 そんなことを考えていると、ポテトが出来上がったことを知らせる独特の音が鳴る。

 ……ちょうど良くパティも卵も焼き上がったため、手際よくそれらをまとめてハンバーガーに成形し、紙に包んでトレーに乗せる。

 ポテトを容器にザッと詰め、ドリンクをザカッと投入し、最後にナゲットを添えればはい、完成。

 

 

……出来立てのハンバーガーはいかが?

「……っ!?!?!?……ななななに今の?ネコチャン?

(んんっ)

 

 

 やべぇ、吹きそうになった。

 出来上がりを眺めた結果、思わず漏れた言葉に露骨にビビるCHEATちゃんに、堪らず笑いそうになったがどうにか耐えた俺。

 そのまま笑いを堪えた微妙な顔のまま、出来上がった商品を彼女の座る席にまで運び──、

 

 

「ぶっふっ!!」

はふぁひゃぁ!?!?

「げふっ、げふっ……あああ、すみませんすみません!」

いいいいいえこちらこそ……

 

 

 机の上で黒板をタブレットくらいの大きさに変化させ、その上で大真面目に『しりとりに勝つには?』と書いてあれこれと対策を練る彼女の姿を見て、思わず吹き出してしまった俺。

 流石に相手に料理をひっくり返すことこそ無かったが、トレーの上でぐちゃぐちゃになった料理を見た俺は、「これは俺の自腹だな……」と脳内で冷静に考えつつ、失礼をしたのは確かなので彼女に謝り倒すこととなるのだった。

 

 ……なお、彼女的には黒板(の内容)を見られたことの方がよっぽどショッキングだったようで、ごまかすためにこちらも謝り倒してくることになるのだった。

 

 

 

・∀・

 

 

 

「……それで、作り直したモノを渡したあとは、気まずくなって観察するのは止めた……と?」

「まぁそういうことになるねー」

 

 

 バイトが終わり、俺の家。

 遊びに来ていたAUTOさんに一部始終を話した俺は、彼女からのなんとも言えない視線を浴び続けることになっていたのだった。

 ……いやでもさ、今時あんなにおどおどしてるのも、隠したがってたのに見える範囲で対策練ってたのも、笑わずにいられるかって話でね?

 

 

「ああいえ。貴方様については特に、なにも。いつも通りだな、という感じですので」

「俺に優しさをくれない?」

「?」

「いや『あげてますよ?十分に』みたいな顔されても困るんだわ俺」

「まぁ欲しがりさん。……ええと、こういう時はいやしんぼめ、と言えばいいのでしたっけ?」

「……AUTOさんってわりと知識が片寄ってるよね」

「あれ?何故私がおかしい、みたいな話に……?」

 

 

 寧ろルールに沿ってさえいれば、大体のことはこなせるような人間が普通なわけないだろいい加減にしろ、と返せば、彼女は首を捻りながらも「……それもそうですわね」と頷くのだった。

 いや認めるんかい、とは言わない。蒸し返すと俺のことも蒸し返すことになるからね、仕方ないね。

 

 まぁともかく。

 全然関係ないところでCHEATちゃんに出会った、という事実は共有されたわけで。

 対処云々について語るべき、ということになるわけなのだが……。

 

 

「……別に実害はないのですし、放っておけば宜しいのでは?」

「いやでもさ、帰ってきてから改めて思い返したんだけど……あの子常連なんだわ、うちの」

「……ハンバーガーショップの?」

「ハンバーガーショップの」

「それは……心配ですわね、栄養状態が」

「そこ?!」

 

 

 そうなのである。

 記憶を掘り起こしてみたところ、あの地味状態のCHEATさん、実はうちの店の常連だったのである。

 しかも、俺の勤務中にしか来てないみたい、というおまけ付き。

 

 ……こうなると、もっと前からTASさんのことを嗅ぎ回っていた、なんてこともあり得るわけで。

 ってことは、最悪俺を人質にしようとしてるかも……!?

 ……なんて心配をする俺とは裏腹に、目の前のAUTOさんはCHEATちゃんの健康状態を気にし始めるのだった。いや、俺の心配もして???

 

 

「大丈夫、お兄さんに人質の価値はないから」

「俺のことなんだと思ってるのこの子達???」

 

 

 なお、台所から戻ってきたTASさんからも、遠回しにディスられる羽目になるのだった。……なんでや!!

 

 

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