「ようやく梅雨が明けた。つまりこれからは私の時代と言っても過言ではない」<フンスフンス
「……そもそもの話、いつもいつでもTASさんの時代ー、みたいなものなのでは?」
「──それもそう」<スンッ
「うわぁ、いきなり落ち着くんじゃないよ?!」
いよいよ梅雨明け、いよいよ夏到来……である。
じめじめとした長雨を耐えきったTASさんは、それまでの鬱憤を晴らすかのように全力全開……の姿勢なのだが、相も変わらず表面上は分かりにくいままである。
まぁ、表情変化が乏しいのは彼女のチャームポイントの一つみたいなものなので、ここで指摘するのは止めておくが。
……因みに、今回はフロントダブルバイセップス*1……と言われてもよく分からないだろうから、顔の横に両手を上げる形のガッツポーズをしている……というのが大きな判別ポイントである。
「……それ、表情以外のところで判別していませんこと?」
「ん?いやいや、このポーズの時にほんのり凛々しいと『やる気十分!』って意味になるんだよ。普通の顔をしてると『やりました』って感じだから、全然違うんだわ」
「──まっっったくわかりませんわ」
「えー?」
なお、AUTOさんからはそんなもんわかるか、と大層不評を頂くこととなった。
……君らもそろそろTASさんとは一年近い付き合いになるんだから、もうちょっと自分で判別できるようになってほしいもんなんだがなー。
え?なんでかって?そりゃまぁ、俺以外にもTASさんの機嫌取りをできる人が増えてほしいからげふんげふん。
ともかく、今日は長雨で外に出られないことにより、溜まりに溜まったストレスを発散しようという日。
ゆえにTASさんは元気に外へと(いつもの三割増しの速度で)飛び出し、ついでに
「お兄さん大変。ダミ子が死んだ」
「死んでませんよぅ……」
「……いや、今の間に一体なにがあったし」
飛び出してから数分後、全身ぐるぐる巻きの包帯人間と化したダミ子さんを担いでTASさんが戻ってきたため、なんのこっちゃと一同首を傾げることとなったのであった。
「あー、今日は暑かったからねぇ。私は手頃な枝を
「……火傷?日焼けではなく?」
「うん、火傷。……無茶苦茶日差しが強いからね、今日。肌が弱い人ならば普通にあり得ることだと思うよ?」
この家は西日の入りにくい間取りをしているため気付かなかったが、どうやら今日の日差しは殺人級に強いらしい……ということを、後から合流したMODさんから伝え聞いた俺達。
……いやまぁ、流石に『殺人級』は言い過ぎで、精々いつもより日差しが強いー、くらいの話ではあるみたいなのだが……。
「基本的に部屋から出てこないダミ子君にとっては、この日差しはまさに毒だったみたいだね」
「なるほど日陰族……」
「部署のお荷物みたいな言い方は止めて下さいぃ~!」
そもそも日差しに弱いダミ子さんにとっては、この上ないくらいに特効ダメージの入るモノであったらしい。
結果、TASさんが慌てるレベルで応急処置を施す必要が出てしまった、と。
「むぅ、それだと困る。今日はダミ子をあちこち連れ回す気でいたのに」
「そもそもなんで私なんですかぁ~……別に他の人でもいいじゃないですかぁ~……」
「ふむ……そうなると、ダミ子さんにもなにかしらの対処を施す必要がある、ということになりますわね」
「……?あのぉ、もしもぉ~し?私の話、聞いて下さってますかぁ~?」
「そんなに日差しに弱いってんなら……やっぱり、日焼け止めとか塗っとくか?」
「そうだねぇ。一番楽なのは長袖を着て日除け傘でも差す……ってことになるのだろうけど、今日の気温でそれは自殺行為だからねぇ」
「あのぉ~、すみませぇ~ん、私の話を聞いて下さぁ~い?」
「では、UVカット増し増しの日除け止めを用意しておきましょう。ダミ子さんのような白い肌は、中々に貴重だとお聞き致しますし」
「むぅ、軟弱。日差しなんて避ければいいのに」<シュバババ
「それができるのは貴方くらいのものですわよ……」
「私のぉ!話をぉ!!聞いて下さぁ~いっ!!」
「うわびっくりした。居たんだダミ子さん」
「居ますよぉ!?寧ろなんで私の話をしてるのに私の存在を忘れるんですかぁ!?」
「……声が小さかったから?」
「口元まで包帯ぐるぐる巻きだから声がくぐもってただけですぅ!!」
なお、TASさん的にはダミ子さんを連れていかない、という選択肢は端から用意されていなかったようで。
止めて下さいぃ~、と抵抗するダミ子さんが全身に日焼け止めクリームを塗布するため、彼女の部屋に連行されて行くのを俺は無言で見送るのであった。
……許せダミ子。流石に君の手助けのためとはいえその場に乗り込むことは出来んのでな。主に性別的な意味で。
「?久しぶりにお兄さんも女の子になってみる?」
「間に合ってます」