うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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一夜漬けのお供に

「なんでこんなことに……」

「いやほら……今回って二周目だろう?だからこう、前の周回の記憶がちょっと混濁したというかなんというか……」

「なるほど、出した気でいたということか……」

「あーなるほどぉ。MODさんは出席も最低限なのでぇ、提出物が溜まっていることに気付き辛いんですねぇ」

「その上出したつもりでいるものだから、それがまだ出していないものである……ということにお気付きにならなかったと。……会社の方は大丈夫だったのですか、それで?」

「ええと、そっちは優秀な秘書がいるから……」

「なるほど任せきり、と。どうせなら学校の方でも秘書をお一人お雇いになられては如何ですか?」

「うぐぅ……」

(珍しくMODさんがガチ凹みしている……)

 

 

 そしてここぞとばかりにみんなが弄っている……と、一団から離れた位置で様子を確認しつつ、お茶を嗜む俺である。

 まぁ、今回に関してはMODさんの迂闊さゆえの問題発生なので、仕方のない部分もあるのだが。

 

 

「で、これらのマイナスを埋めるために、次の試験において満点を取る必要が出てしまったと。……一応お伺いしますが、別に勉学が不得意と言うわけではありませんわよね?」

「まぁ……うん……人並みには……」

「なるほど、流石に満点を取れ、と言われると躊躇する……と」

「うぐぅ~……」

 

 

 で、今回彼女が泣き付いてきた一番の理由は、彼女の技能がこういう時になんの助けにもなってくれない、というところにある。

 そう、彼女の技能はあくまでも姿が変わるだけ。

 変化した姿に合わせてスペックが変わる、などということはないため、こういう試験の際には地力が求められるのである。

 

 まぁ、普段ならそれでも問題はなかった。

 彼女は別に頭が悪いというわけではないため、必要最低限の点数を取っていれば、それで教師達も納得してくれた。

 

 しかし今回、その納得を引き出すための下地──提出物の提出、という部分で引っ掛かってしまった。

 それゆえ、彼女は別の部分でそれを挽回する必要に駆られてしまった、というわけである。

 

 

「それにしても満点ねぇ。……随分と買われてるみたいだねぇ」

「……好き勝手するだけの実力があると示せ、ってことだからね。そりゃまぁ、言われても仕方のないところはあるさ」

 

 

 なにより問題なのは、彼女自身この要求が無理難題だとは思えない、ということだろう。

 

 学生社長とはいえ、学生は学生。

 ゆえに特別扱いを求めるのなら、相応の成果を求められるのもまた必然、というわけである。

 いや、寧ろ今までは必要最低限で済ませていたわけだから、ここに来て証拠の提出を求められた、というのが近いのかもしれない。

 

 なんにせよ、向こうの要求を突っぱねることは心情的にも不可能。

 ここに、彼女は満点を取ることを強いられてしまった……というわけである。

 

 

「なんとかしなければ……」

「とは言いますけど、満点でしょう?それも内容から察するに、全科目で。……なんとかなるとお思いで?」

「無理かなぁ……」

「珍しく凄い弱気!」

「いやだってさぁ、英語とかは話せるのと問題が解けるのはまた別問題だし、数学は応用力の問題だから試験の内容によってはどうしようもなかったりするわけだし……」

 

 

 基本的には高スペック組に分類されるMODさんだが、その基礎性能はどちらかといえば人間の範疇の内。

 すなわち、TASさん辺りと比べられると普通に部が悪いのである。

 で、テストで満点を取る……というのは、万全を期そうとするとTASさん、否やAUTOさんクラスのスペックは欲しくなってしまうものなのだ。

 ……なんでかって?こういうパターンの場合、向こうが出してくる問題の難易度が上がってるからだよ!

 

 

「あー……汝、その身が最強である証を示せ……というわけではありませんが。目的が『MODさんが今までの横暴を許されるだけの能力を持っているか否か』の確認である以上、自然と問題のレベルが上がってしまう……というわけですわね?」

「天才なら横暴も許される、なんてのは創作だけの話のはずなんだけどねぇ」

 

 

 ……それを享受していた側がそれを言うのか、とは言わない俺である。

 

 ともあれ、特別扱いされたいのなら特別であるところを見せろ、というのはとても自然な流れである。

 ゆえに今回の場合、普段の試験より遥かに難易度の高い問題が飛んでくる可能性、というものが跳ね上がってしまっているのであった。……巻き込まれた一般生徒の諸君はとてもお気の毒様である。

 

 

「ふむ……そうなりますと……一夜漬けは寧ろ逆効果、ということになるかも知れませんね。こういう場合は単なる知識力だけではなく、同時に応用力をも測る形に持っていくでしょうし」

「うあぁぁあそんなの無理に決まってるだろぉぉぉ」<ゴロゴロゴロゴロ

「悶え転げ回っていらっしゃいますわね……」

 

 

 傍目から見ている分には喜劇だが、同時に悲劇でもある。

 なにせもし、彼女がここで試験に失敗でもして、退学になった日には……。

 

 

「……うん。完全未知ルートだね。ちょっとワクワクするかも?」

「そんな未知は嫌だなぁ!?」

 

 

 今までの情報全部パァ、だと言うのにTASさんはちょっと楽しげであった。

 

 ……まぁ、この子が嫌がるだけの出来事、って方が珍しいからね、仕方ないね。

 愉悦される側になってしまったMODさんには、本当にお気の毒なことだけども。

 

 

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