「もうダメだ……なにもかもおしまいだ……みんなの頼れるお姉さん的なMODさんは死に、今度からはみんなの足を引っ張る無様でぼろ雑巾な女が一人生まれるだけなんだ……」
「……滅茶苦茶凹んでるんだけど」
「人ってここまで落ちぶれるんだなぁ」
いやまぁ、正確にはまだ落ちぶれる恐怖に震えてるだけ、ではあるのだが。
ともあれ、地味に無理難題が飛んできた感のある今回の騒動。
……なにが問題って、基本的には彼女自身で頑張らないといけない、というのがね?
まさか替え玉受験的なことをするわけにもいかないし。
「……かえだまじゅけん?」
「あー、誰かに変装して貰って代わりにテストを受けて貰う……みたいな?一応そのテストが終われば、上がってしまった難易度も下がるだろうし……」
根本的には『特別扱いされる理由』の補強が今回の無理難題の理由なのだろうから、再度提出物が滞る……みたいなことさえ起こさなければ、同じように無理難題を課される可能性は低くなるだろう。
喉元過ぎれば熱さを忘れる、的な対処なのであまり多用すべきではないだろうが……その実、今回の問題を乗り越えるためだけならば、一番確実性がある案であることも確かである。
「問題があるとすれば、それをやってくれる代わりが居ない、ってことかな……」
「あー、皆さん学生さんですからねぇ~」
一つ問題があるとすれば、替え玉しようにもその相手が居ない、ということだろうか?
なにせ試験の日というのは大抵被るもの。
……高校違いのAUTOさんもその日は試験であるし、TASさんはクラスメイト、CHEATちゃんに至ってはそもそも後輩なので試験範囲を習ってない始末である。
「一応チート使って解く、みたいな抜け道はあるけど……どっちにしろ平日だからCHEATちゃんも普通に学校です、って当たり前の問題もあるしね」
「ぬぐぅ……やはりズルはダメだと言うことか……っ」
「そうですわ。例え道が困難であれ、自分で頑張らなければ意味はありませんわ」
それ、君が言うんだ。基本的に壁とかほとんどぶち当たることのない君が。
……的な、恨みとも怨念とも付かない気配がMODさんから立ち上っている気がしないでもないが、(AUTOさんが気付いてなさそうなので)敢えてスルーする俺である。
ともあれ、今回に関しては必勝法はない。
ゆえにMODさんには血反吐を吐いて貰いながら、死ぬ気で頑張って貰うしか……、
「──なるほど。貸し一つ、というのは中々魅力的ですね」
「……って、あ」
などと思っていた矢先。
こちらの耳朶を打ったのは、鈴を転がすような──されどほんのり悪意を感じる高い声。
なるほど確かに。ダミ子さんには端から頼れず、俺はそもそも性別違い……みたいな感じで、
一人、ただ一人だけ、この場で替え玉に非常に向いている人物がいる、ということを失念していた。
「ふふふ……邪神と契約する度胸はありますか?」
「て、てんしたん……!」
「じゃーしーんーでーすー!っていうかキャラおかしくありませんかっ?!」
その該当者……DMさんは、ちょっぴり悪役ムーヴをしたあと、キャラ変わりすぎなMODさんの様子に思わず素を見せていたのであった。
……ああなるほど、AUTOさん対策ね、はいはい。
はてさて、それから後の事というと、語るべき事はそう多くない。
一度諦めさせた替え玉受験を再興させようとするDMさんに、AUTOさんが抗議をしようとしたところを、裏で結託()していたCHEATちゃんが気を逸らして有耶無耶にし。
その間にDMさんは、MODさんの技能でボディの偽装ができるかを確認。……無事変身できたことを確認し、当日の替え玉受験を確約。
涙で顔をグシャグシャにしながら感謝するMODさんに若干ドン引きしつつ、その日は以降平常通りに進行。
来る試験の当日、彼女はMODさんの代わりに学校へ赴き、
「若干の違和感……とは?」
「他者を真似する時、ある程度特徴を強調したりすることがあるでしょう?……今回はその辺りやり過ぎてしまって、何故か校内にファンクラブが……」
「誇張しすぎじゃないかなぁ!?」
……校内にMODさんファンクラブ、なる胡乱なものが生み出されてしまったらしいが、まぁ詮なきことである。
なお、肝心の試験についてだが。彼女は邪神である前にメカ娘であるため、そこら辺はまっったくと言っていいほど問題にならなかった、と付け加えておきたいと思う。
「……ところで、なんで手伝う気になったので?」
「色々と理由はありますが……彼女のフラグが正常に機能しなかった場合、私の出番が脅かされる可能性が非常に高い、と演算結果が出まして……」
「あー……」
なお、彼女が悪役ムーヴしながらもMODさんを手伝った理由は、単純に自分の出番が脅かされる可能性が高いから、というなんとも所帯染みた理由なのであった。……うーむ、世知辛い。
あ、あとMODさんはこのあと