うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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母親は強いもの、とても強いもの

(まぁ、なにを利用するかはわかったけど。……でもそれだと、向こうも本気を出して逃げないか?)

(問題はそこ、なのですわ)

 

 

 酷いこと思い付きやがる、などという面々からの苦い思考をスルーしながら、AUTOさんが声をあげる。

 ……そう、そこら辺の隠蔽もあっさり看過しそうな人が、TASとは別に一人いる……というのがわかったところで、それで問題が解決するかといえば話は別。

 

 というか寧ろ、そっちの相手の方こそMODさんが会いたくない相手であるがゆえに、下手すると半径五百メートル以内に近寄って来ない……なんて可能性すら浮かび上がってくる辺り、その人を担ぎ出すのは最早本末転倒どころの話では済まないのである。

 

 ゆえに、今回の作戦を成功させる鍵は、どれだけMODさんにその人──母親の接近を知らせずにいられるか、という部分に懸かっていると言っても過言ではないのだが。

 

 

(……そもそもあの人にMODを引き合わせるってのが今回の話のゴールなんだから、ゴールに進むのにゴールが必要……みたいな状況はどうしようもないのでは?)

(うーん……)

 

 

 そう、今回の話の目的は、(おや)前逃亡をしたMODさんを、親の前に引きずり出すこと。

 そのために必要なのが『母親とMODさんを引き合わせること』というのでは、前提と結果が同一になってエラーを吐く羽目になるというものである。

 

 目的を達成するために用意した手段が、その実目的そのものだった……というのでは、本末転倒と笑われても仕方ないだろう。

 とはいえ、現状ではそれくらいしか手段がない、というのも確かな話なのである。

 

 

(……会いたくないのが彼女で、現状の打破に必要なのも彼女。ならば、私達が取るべき手段は一つなのでは?)

(DMさん?)

 

 

 そうしてうーむ、と考え込む俺達に対し、思考の繋ぎ役を務めていたDMさんから声が掛かる。

 どうにも、俺達の(しこう)聞いて(よんで)いる中で、解決策を一つ思い付いたらしい。

 

 その内容を聞いた俺達は、『……え、いけるのこれ?』とか『あー、できなくはない……かも?』とか、そんな言葉を漏らすことになったのであった──。

 

 

 

・A・

 

 

 

(んで、今に至ると。……どう?行けそう?)

(少々お待ちを。最低限のプログラムは頂きましたが、それを実際に実行に移すとなると少々調整が必要になりますので)

 

 

 はてさて、時間は戻って朝の体操中。

 みんなで元気に体を動かしているわけなのだが、その中で一人だけ、少々別の行動を取っている者が一人。

 ……そう、「実は私ロボットですので、体操とか意味がないのです」と唐突なカミングアウトを行ったDMさんである。

 

 おばあちゃんはロボット?と頭上にはてなマークを浮かべている感じだったが、流石に母親さんは「なに言ってるのこの子」と半信半疑どころではない顔をしていた。

 ……が、そのあとDMさんが、その声帯からラジオの音声を垂れ流し始めたことで一変。とても驚いた顔をしたのち、なるほどと納得してくれたのであった。

 

 

「そもそもDMの場合、単純なロボットってわけじゃなくて機械に神がとり憑いてる、っていう大分例外感たっぷりな代物だけど」

「TASさん、しーっ!」

 

 

 ……まぁTASさんの言う通り、DMさんを単なるロボと言い張るのはちょっと無理があるのも確かなのだが。

 多分さっきの説明だと、母親さんは彼女のことを『高性能AI搭載ロボット』だと思っているだろうし。

 

 ……実際はメカという器にいずこかの邪神がとり憑いている存在、というどっちかというとオカルトの産物的なモノなんだけどね。

 まぁ、オカルト由来のくせして、今ではメカの扱いも普通に一流クラスなのだが。

 

 で、そんなメカの扱いつよつよのDMさんが、現在なにをしているのかというと。

 ラジオ体操の音源を流しているのは大前提として、それ以外に一つ、とても重要な仕事を密かに行っている最中である。それは……。

 

 

(……視線を読まれないのはロボの利点、ですね)

(ステルス機能でも付けられれば良かったのですが……流石に急拵えは無理でしたわね……)

(でも手持ちの材料でドローンは作れるんですねぇ……)

 

 

 困惑したようなダミ子さんの言葉に、思わず頷きそうになる俺である。

 ……そう、現在DMさんが行っているのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのであった。因みに相手は母親さんである。

 

 ツッコミ処が多い、という声が聞こえてきそうなので説明をすると。

 

 まず、このドローンの用意をしたのはAUTOさんである。

 ……有り合わせの材料でサッと作って見せた辺り、彼女も大概おかしくなってきたなーと思わなくもないが、とりあえずここではスルー。

 

 で、わざわざ超遠距離から盗撮している理由だが……ドローンを使っている理由にも繋がることだが、お相手の母親さんが視線に気付く可能性が大である、というところがとても大きい。

 

 これは、彼女が気付くことによって、連鎖的にMODさんが母親さんの異変に気付く可能性がある……というところから考え出された、わりと苦肉の策である。

 作戦の成功のためには、MODさんの虚を突く必要がある以上、向こうに察知されることは可能な限り避けたい……そんな思考と。

 事実、普通に観察してたらまず気付くだけの勘の良さを持つ母親さんを警戒した結果……とでもいうか。

 

 では何故、母親さんを観察しているのかというと。

 

 

(これくらいの手伝いは許容範囲)

 

 

 などという言葉と共にTASさんから提供された、とあるプログラムを使用するためなのであった。

 

 

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