うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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勝つために必要なのは、戦力を充実させることである

 TASさんから提供された、とあるプログラム。

 これを利用できるのはただ一人──ここにいる面々の中では、CHEATちゃんだけということになるのだが。

 その大前提として、データの収集が必要となってくる。

 

 ではそれをCHEATちゃんにやらせようとすると……まぁほぼ確実に、母親さんに気付かれてしまうのがオチだろう。

 多分……「おや、占い師さんは私のことも気になるのかい?」とかなんとか、そんな感じのことを言われてしまうのが容易に想像できるというか。

 

 で、もし仮にそうなった場合、どこか遠くでこっちを監視しているだろうMODさんは(なにがおかしいのかまではわからないにしろ)異変を感じ、最悪この周囲から完全に移動してしまう……などということになりかねない。

 

 本来、このイベントは彼女と王女様二人のみで進むモノのため、その行動はイレギュラー以外の何物でもないのだが……事実として、今この場には彼女以外に王女様を守れる人間がいる。

 ……自分がこの場に居なくても大丈夫だろう、と思う下地は十分に整っているのだ。

 今はまだ、彼女自身のこのイベントへの関心が、その警戒心よりも高いがためにこの場に残っているが……そのバランスが崩れれたとすれば、さっさと離脱してしまう可能性はそれなりに高いのである。

 

 ゆえに、こちらとしては母親さんの警戒をこちらに向ける(及び、そこから連鎖するMODさんの警戒心上昇)、という行動(イベント)取った(引いた)時点で詰みなのだ。

 なので、超遠距離からのドローンを用いた盗撮、という間接&間接的な観察が必要となってくる……と。

 

 

(確かに彼女の勘はすさまじいものですが、流石にここまで間接的な行動にされてもなお、本元を察するほどの超技能……というわけでは無いようですわね)

(良かった、って言うべきかなー……)

 

 

 ファインダー越しの視線であっても気付く、という人間も世の中には存在している。

 だが流石に、監視カメラ越しにこちらを見る警備員の視線にまで勘が及ぶ……ということは中々ないだろう。

 今回の場合は、それよりさらに判別は付き辛いはずだ。

 

 超遠距離からの盗撮にすることにより、もう一つの視線──MODさんが隠れて母親さんに向けている視線と混同させ、かつ機械越しにすることにより視線の熱を極力排除する……。

 さらに、それを行うのをDMさんにすることにより、人の視線の温度すらカットする徹底ぶり。……これで気付かれたら最早単なる超能力者である。

 いやまぁ、女の勘は超能力みたいなもの……とも言うけどね?

 

 とはいえ、今のところこの策は功を奏しているようで、母親さんは『誰かに見られている』とは思いつつも、それを行っているのがDMさんだとは思っていない様子であった。

 ……え?見られていることに気付いている時点で大概だって?それはそう。

 

 まぁそれはそれとして。

 こうして観察を続けることにより、必要なデータは続々と集まっていく。

 

 プログラムの起動に必要なあらゆるデータ。

 それをこのラジオ体操中に集めきり、そこから次なる策に繋げねば俺達の勝ちはない。

 ゆえに、TASさん以外の面々は緊張を仄かに滲ませることすらせず、わいわいとラジオ体操に勤しんでいたのであった。

 

 

「……びっくりするくらい、皆真面目に体操してるねぇ。てっきり一人くらいはサボるかなにかすると思ってたんだけど」

「TASさんが言い出した時点で、下手に適当感を出すと後々酷いことになるのが目に見えてますねー」

「むぅ、お兄さんってば酷い。私は単に、みんなの作業効率アップのために提案してあげただけなのに」

「うさんくせー、実態はともかくうさんくせー……」

「そういうことを言う口はこの口かー」

やへよよいええらろ(やめろよいてえだろ)?!」

「なにやっていますのお二人とも……」

 

 

 表面上はこれこの通り。

 実にいつも通りのやりとり、といった風情である。

 ……手伝いはしないって言ってたけど、邪魔もする気がないのねTASさん。

 などと脳内で思っていると、突如響いてくる少女の声。……特に捻りもなくTASさんからの念話(?)であったわけだが、その声はこう告げていた。

 

 

(流石の私も自分にされて嫌なことはしない)

(……嘘付け、という感情のこもった空気)

(むぅ、信じてない。新しいTAS走者の誕生を阻害する、とか絶対やらないのに)

(おかしいな、いつの間にかTASしてる判定になってるぞ……?)

 

 

 ……うん、まぁ、TASさんはいつものTASさんだった、ということで。

 

 なお、この辺りの思考も外に少しでも漏らすとなにかしら母親さんに気付かれかねないので、全部自身の内面に留めておく次第である。

 ……なんというかこの母親さんの扱いが、次第にゲームとかでたまにいる『その場所に到達した直後のレベル帯では絶対勝てない系の敵』とかへのそれになってきている気がしてきた俺であった。

 一応一般人のはずなんだけどね、この人。

 

 

「事実は小説より奇なり」<ボソッ

「現実で奇跡を振り回す人は言うことが違うなぁ……」

「それほどでも」<テレリコテレリコ

「いや褒めてないからね???」

 

 

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