「……?…………???」
双眼鏡越しに巻き起こる虐殺に、思わず目を擦るMOD。
それもそのはず、彼女の記憶の上では、この街の人々はこんな感じの蛮族ではなかった。
ともすれば「おいてけー、身ぐるみ全部おいてけー」とか言い出しそうな気迫を発する機会など、まったくもってなかったのである。……そりゃまぁ、自分の目を疑うのも仕方のない話、というか。
だがしかし、彼女が己の目を疑うことになるのは、寧ろこれからの話であった。
突然祖母の家の方から上がる、奇っ怪な高音。
類似する音と言えば、いわゆる『なにかしらが出来上がった時の電子音』ということになりそうなそれは、街から遠く離れた彼女の耳朶をも打ち鳴らし──、
「……!?なんだこれ?!」
そうして視線を離した隙に街に起こった変化に、彼女は思わず双眼鏡を取り落としそうになったのであった。
大慌てで街に近寄ったMODは、されど中に入ることはしなかった。
それは何故か?自身の目を疑うと同時、目の前の状況が自身にとって
では一体、街になにが起こったのかというと。
「……いやなんだこれ?!お前誰だ!?」
「誰ってお前らの上司……ってぬわー!!?」
「上司(?)が上司(?!)に殴られた!?」
「あはははなにこれ面白ーい!顔ちがーう!」
「んー、なんだろねこれ?まぁ私達にはわかるからいいけどー、とー!」
「なるほどー、これこそほんとーのぶんしんさっぽー」
「なんでこいつらこの状況で俺らだけ(?)的確に殴ってくるの?!いやこれ本当に殴られてるの俺らの仲間かっ!?」
「……TAS君、ではないか。面白がりはすれど、こんなことをする理由が思い付かない」
いやまぁ、私を捕まえるためにというのなら、ギリギリやらなくもないかもしれないけれど……それにしては範囲が広すぎる。
彼女はTASではあれど、その干渉範囲はあくまでも本人に起因する範囲に収まっている。
あの一瞬で・この規模のことを起こすことは──それこそなにかしらのバグでも見付けない限りないだろう。
などと彼女が考察する羽目になった、今の状況。
それは、視界一面に広がる
「……なんだろうね、この地獄絵図みたいなの」
「必要だったとはいえ、すっげー光景……」
街の様子を見て、思わず遠い目をしてしまう俺達である。
……いやまぁ、やったの俺達なんだけどさ?
そういうわけで(?)、範囲内の人みーんな母親さん作戦、開始の狼煙である。
TASさんが最低限の手伝いとして提供したのは、いわゆるARシステム的なモノであった。
多角的な投影設備を用意することにより、一定の範囲内に姿を被せる……言うなれば人工的にMODさんの能力を再現したもの、とでも呼ぶべきシステムなわけなのだが。
これを運用するに辺り、二人の協力が必要となっていた。CHEATちゃんとDMさんの二人である。
「リアルタイムに見た目の書き換えをする必要があるから、
「まぁ対象人数的に、最早Tuber云々の話ではないような気も致しますが」
そこはほら、CHEATちゃんのチートパワー的なあれも必要だったから……。
そんなことを言い合う俺達も母親さんの姿であり、外の喧騒を聞き付けて出てきた王女様も隣のおばあちゃんも、纏めて母親さんと化していた。
なお、そんな状況を見た本人と思われる人は大笑い中である。どうにもバカウケしたらしい。
「……とはいえ、これはまだ計画の一段階。これからが正念場、ですわよ」
「だよねぇ。まずはMODさんが乗ってくれないといけないからねぇ」
はてさて、MODさんはいつ気付くのだろうか。
これをやっているのがCHEATちゃんとDMさん──
今はまだ理性によるブレーキが効いているが、その内調子に乗り始めない保証はどこにもないということに。
「これは手伝いではなく、そっちの方が面白そうだからという私本意の行動」<ワクワク
「……それを加速させようとする
「そうですわね、私達だけではどうにもなりませんからね(遠い目)」
手伝いじゃなければなにをしてもいい、と言わんばかりのTASさんがワクテカしていることに、早急に気付いて頂きたい。
それってつまり、今はまだ慌てているので判別できる王女様が、
……別名『TASけるって誰が言った、お前がTASけないのなら私はTASけないぞ』という外道作戦は、まだ始まったばかりなのであった。