「まず、この作戦において一番重要なのは、
「……見分けられなくていいのか?」
「そっちの方が相手の危機感を煽れる、という意味で効果的」
騒動の起こる前、周囲の探索のために二手にわかれる前のこと。
俺がTASさんに聞いていたのは、例のプログラムについての詳しい説明であった。
端的に言えば、一定範囲内に居る人達全てに特定のホログラムを被せる、みたいなモノだったわけなのだが。
そのために使われる高度なホログラムだの、それを実現するのに必要な高度演算だの、投影のための設備だの……といった風に、技術として確立しているとしても、まともに運用するのはほぼ不可能……みたいな感じで、実質使える人間が限られていた。
具体的に説明するのなら、どっかから必要台数の映像投射用ドローンと同じ台数のスーパーコンピューターを現地に持ってこなきゃ無理、みたいな?
……説明のために大分はしょっているため、実際にはこれ以外にも色々いるわけだが。なんにせよ、いきなり用意しろと言われて用意できるようなものではない、ということは確かだろう。
──ゆえに、これはそれらを代用できる二人……CHEATちゃんとDMさんのコンビにのみ運用できるプログラム、ということになるのであった。
で、そこまでしてやることであるホログラム投影だが。
そこに居る人間の動作を予測・観測し、即座にそれに見合う映像を三百六十度どこから見ても破綻なく認識できるように見せる……とかいう、はっきり言って『それをするスペックで他のことをした方がいい』としか言えないモノであった。
まぁ、TASさんが言うには『これがベスト』らしいのだが。……獲得経験値とかまで含めているだろうから、これより早い者があってもおかしくはなさそうである。
ともあれ、そこまでして起動しようとしているプログラムだが……彼女の言うところによれば、こっち側にも細かい人物を把握する余裕……必要?はないのだという。
そもそもこのプログラム自体、それを走らせるのに全力を注視する必要のあるもの。……やってる内に
……それだとあれこれ困らんか?みたいな気分だが、TASさんが言うにはそれでいいとのこと。
寧ろ、そうでないとMODさんの不安は煽れないだろう、と。
「私にも判別できないくらいじゃないと、『TASに任せればいい』という甘えが出る。それではMODは寄ってこない」
「……いやでも、それだと事態の収拾付かなくない?」
「問題ない。所詮はプログラムだから、CHEATのパソコンぶっ壊せばいい」
「えー……」
なんと無茶苦茶な解決方法……。
でもそれ、MODさん側も同じ解法を思い付くのでは?とツッコミを入れると「問題ない、どれが正解のパソコンかわからなくする」との返答が。
……多分ろくでもないことを考えているのだろうが、ここでは聞かないことにする俺である。
ともかく。
今回必要なことは、『TASさんは手伝わない』ことをMODさんに印象付けること。……TASさんが関わると任せてしまうのなら、なにもTASけないスタイルで行くことをハッキリさせるというわけである。
それで王女様が危険に晒されたとしても、知ったことではない。
というか、TASけない方が早くなるのなら、彼女としては願ったり叶ったりなのである。……と、
「確かにTASけない方が早い時もある。……とはいえ、それで別のイベントを誘発してたら世話がない」
などと彼女は言うが……実のところ、彼女は意外と人情に厚いところがある。
パッと見るとTASらしく時々非道、みたいな感じのある彼女だが、その実必要のない犠牲は嫌うタイプである。
その辺りを周囲にあまり感じさせないだけであって、機械のように人情味がないわけではないのだ。
……まぁ、その辺りを知っているのは普段から一緒にいる俺くらいのものなのだが。
つまり、今回の一件は、ある意味ではMODさんとTASさんの我慢比べなのである。
王女様が危険に晒されることに、どこまで互いが耐えられるのか。……それを競う二人の争いみたいなものなのだ。
「でも私本人は動かない。分身してステルスして儀式しておく」
「……勝ったら『アンタ一体なんなんだ』って言えばいい?」
「おねがいー」
……まぁ、とはいってもTASさん側が遥かに優位なのだが。
とか言いながら、猿のお面を被って謎のダンスをするTASさんを眺める俺なのであった。
……ビッグTAS、とでも呼べばいいのかなこの場合。