「……説明が欲しいんだけど」
右手を母親に捕まれ、観念したように左手を上げたMODさんは、視線でこちらに問い掛けてくる。
……
「簡単な話だよ。MODさんが見てないうちにダミ子さんと母親さんを入れ換えたってだけ」
「……簡単に言うけど、どうやって?」
「そこはまぁ、このプログラムとダミ子さんの相性の問題、みたいな?」
「はぁ?」
……そう。
以前、ダミ子さんにMODを被せようとすると酷いことになる、みたいなことを言ったことがあると思う。
元々ダミーデータと紐付いている彼女は、下手にアバターを弄るとデータが変なことになる……というやつだ。
とはいえ、中のデータに触れなければ──要するに今回みたいに、表面上に他の映像を映す……みたいなやり方であれば問題はないのだそうで。
その辺りはまぁ、そりゃそうだろうなというかそうなんだーというか、まぁその程度の話なのだが……。
「
「……は?」
これが他人にダミ子さんの姿を映す、という場合だと話が変わってくる。
プログラムを停止させる迄の間という制限があるものの、その間変装している本人は
どうにも、このプログラムとダミ子さんが謎の噛み合いを見せた結果、ということになるらしいのだが……ともあれ、このプログラムでダミ子さんを映すと、しばらくの間その人の存在感とかキャラクター性とかがダミ子さんに上書きされてしまうらしい。
意味不明なバグ利用、って感じの裏道なわけだが……これが今回、MODさんを騙すのに効果的な手段と化していたのであった。
「端的に言うと、『ダミ子さんに扮していた母親さん』の外面に更に
「……そ、そんな方法が……」
二重に見た目を弄っていた、というべきか。
……ダミ子さんの上に他の映像を乗せるのは問題ない、というのは先の話の通り。
そしてそれは、例えば先にその人がダミ子さんの映像を映すことで、ダミ子さん扱いになっていたとしても問題はない。
……コピーの上に更にコピーを張る、みたいな大分迂遠なやり方だが、だからこそMODさんの審美眼を騙すことができた、というわけである。
確かに彼女は単に母親の姿をしているだけの相手と、本物の母親を見分けるだけの目を持っていたが。
それが二重に被せられた虚構であったため、気付くための嗅覚が上手く働かなかった、というわけだ。
で、こっちとしては母親さんをMODさんに近付けるだけでゲームクリア。
……そのために必要だったのが、こうして俺達に付いてきているのが
「一応、表に出てくるパーソナルは自動でダミ子さんになるから、そこまで神経質になる必要もなかったんだけど……」
「とはいえ、根本の部分が違えば、どうしても違和感は漂うもの。……なので、極力喋らないようにとお願いしていたのですわ」
「……ああ、今思うと確かに。普段のダミ子君からすれば、毒が足りない感はあったね」
……どこからか『私のイメージがおかしなことになってませんかぁ!?』みたいな悲鳴が聞こえてきた気がするが、スルーする俺達である。
ともあれ、当初の目的である『母親さんにMODさんを引き合わせる』というモノは達成した。……であれば、次にするべきことは決まっている。
「……?まだなにかあるのかい?」
「あるとも!この状況において、やらないといけないことがね!」
「やらなきゃいけないこと?…………あ゛」
そう。俺達はMODさんを捕まえるため、あらゆるモノを犠牲にした。……それは本来ここに来た目的であるところの、王女様の守護をも含む。
つまり、投げ捨てたそれらの行動を再びやり始めなければ、ここまで苦労した意味がないということ。
一応、近くにTASさんが居るはずなので大きな問題にはなっていないはずだが……。
「歯切れが悪いね?!」
「いやー、こっから王女様が拐われた方が面白い、みたいなことを考えられてたら困るというか?」
「バカー!!?」
TASさんは必要のない犠牲は嫌うタイプである。
……が、それは裏を返せば
……つまり、仮に拐われても酷いことされないのであれば、そしてその結果新しいルートとかが開拓されるのであれば、わりとスルーする可能性が高いのである。
とまぁ、そこまで話を聞いたMODさんは、こちらに向かってあらん限りの罵倒を投げ掛けてくるのであった。
……いや、マジでゴメンて。