はてさて、行動方針が決まったのなら善は急げである。
さくさくとここで立てられるフラグを消化し、さっさと次の行動に移らねば。
「そういうわけなので、王女様の探してるものがなんなのかを知りたいのですが?」
「なにがそういうわけなのかわからないけど……王女様が欲しがってるモノについては心当たりがあるよ」
そういうわけで、朝食を終えたタイミングで母親さんに話し掛けた俺達。
彼女はこちらの突然の様相の変化に目を白黒させていたが、暫くして気を取り直したのか、片付けが終わったら案内してあげる、と言葉を返してきたのであった。
「ならば善は急げ。我らは今より食器洗いのプロ!」
「らじゃー。じゃあ
「え?ええと……
「んじゃ
「そしてこれで完成ですぅ~。……完成ですぅ???」
そんなわけで、秒速で食器の片付けを終わらせた俺達である。
……え?抽象的過ぎてなにやってるのかわからなかったって?
具体的には上から
ポイントは、乾かす役としてCHEATちゃんを採用したこと。
彼女以外にやらせるとどうしても無茶苦茶になるので、ここでは彼女が適任と言うわけだ。
「……具体的には、どう無茶苦茶になるんだい?」
「布で拭くにしても時間が掛かる。水分を蒸発させようとすると食器の温度がエグいことになる。……みたいな感じかな?」
「なるほど、パラメーターを弄って水分をそのまま移動させた、みたいな感じなのですね?」
「そういうことー」
なんと豪華な無駄遣い。
一応は真っ当な手段(過程や結果まで真っ当だとは言わない)しか取れないTASさんやAUTOさんと違い、CHEATちゃんは端から物理法則とか無視した行動を選ぶことができる。
……いやまぁ、一応風圧で吹っ飛ばす、みたいな穏当かつ物理法則に即したやり方もあったりはするが、それを今の食器の量で・尚且つ一瞬でやろうとすると周辺被害が酷いことになるのは目に見えてるので……。
そういう意味では、周囲に影響を与えず・尚且つ一瞬で食器を乾かす……という行動が求められる状況であれば、CHEATちゃん以上の適任はいないということになるのであった。
──無論、最初に言ったように無駄遣い感も半端ないけども。
ともあれ、宣言通りに一瞬で片付けを終えた俺達の様子に唖然としている母親さんに改めて声を掛け、俺達は王女様が探している『あれ』とやらを拝むため、先導する彼女の背を追い掛けるのであった。
「……と、いうわけで。これがうちの曾祖母の母親が日本に来る時に持ち出したって言う逸品だよ」
「ほほう、これが……」
「……なんですかぁこれはぁ?」
母親さんがおばあちゃんから鍵を受け取り、そのまま向かったのは家の裏手。
……表からだと目立たないそこにあったのは、小さな小屋くらいの大きさの倉であった。
なんでも季節の行事の時に使うモノとかの、頻繁に使用しない品物をしまっておくための場所なのだそうだが……その中に入って行った母親さんががさごそと収蔵物を漁り、表に持ち出して来たのは季節モノなどでは絶対にない、些か不可解なモノなのであった。
具体的に言うと、小皿よりちょっと大きめの円盤……の、半分である。
表に引っくり返してみるが、特になにかが描かれているということもない。
無地の地味めな色の破片、みたいな感じであり、こんなものを探していたのか?……的な空気をダミ子さんが醸し出してしまうのも仕方のないことなのであった。
そんな疑いの視線を向けられた母親さんはというと、苦笑いを浮かべながらもう一つ倉から持ち出して来たもの──一つの箱のようなモノをこちらに渡してくる。
訝しみながら箱を開けば、
……まさかと思いながら先ほどの円盤をそこに置いてみると、見事にそのスペースに収まったのであった。
なお、それでなにかが起こる、みたいなことはなかった。……ずっこけなかった俺を褒めて頂きたい。
「いやまぁ、その箱に入ってた……ってだけだからね?……保管状態が悪かったのか、はたまた最初からなにも書かれていなかったのか、その辺りは私にはわかんないけど」
「ううむ、これはハズレのような……って、王女様?」
母親さんの説明に、思わず渋い顔をしていた俺。
……そんな俺の横から円盤に伸びた手は、こちらのやり取りなど聞こえていない様子の王女様。
その右手に持った半円を裏返したり、はたまた日に透かすように空へと掲げたりしていた彼女は、やがて得心したようにふぅ、と一つ息を吐いて。
「ではMOD様、こちらをお持ちくださいまし」
「へ?いやなんで私が?」
「い・い・か・ら!さっさとお持ちくださいませ!」
「ええ怖っ……わかったよ持てばいいんだろう持て
なんだその古典的な反応……。
などと突っ込む間もなく、MODさんが持った途端に光輝き始める円盤の欠片。
暫くして光の収まった後に彼女の手の内に残るのは、
それを見届けた王女様は、懐に手を突っ込んで(俺は首を九十度横に向けた)なにかを取り出す。
「……そう、これこそを探していたのです、私は」
「てってれー。王女は『かがやくメダル』を手に入れた」
「なんでそんなに小声なんだ……?」
もう大丈夫かな?……と振り向いた俺の視界に入ってきたのは、輝く一枚の円盤──TASさんの言を信じるならメダルを手の内に持ち、ちょっと怖い笑みを浮かべている王女様の姿なのであった。
……一応確認だけど、君実は悪人だったりしないよね?その笑みちょっと危うい気がするんだけど???