うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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その名前に偽り無し

「……なるほど?」

 

 

 特に問題もなく、王女様の祖国の端の方に着陸した我らがキャンピングカー。

 盗難にあったりしないように戸締まりやら警報やらをちゃんとセットし、周囲から見付からないような位置に隠したそれに別れを告げ、徒歩で歩くことしばし。

 そうして俺達は、オリエンタルな雰囲気溢れる街へとたどり着いたわけなのだが……。

 

 

「……必要なもの揃えたらさっさと出た方がいいな」

「ですよねー」

 

 

 うん、いくら夏場でクソ暑くて直射日光やら熱気やらに肌を晒すのはNG、つっても他所の国の人がそこまで重武装だとなんとなく見られてしまうようで。

 

 ほんのり視線を集めていることに気が付いた俺達は、必要なものを揃えたらさっさと出ていくことに決めたのであった。

 このまま見られっぱなしだと、その内一団に王女様が混じってることに気付かれるかもしれないからね!

 

 

「……他者付与は難しいからねぇ」

 

 

 なお、当初の『MODさんに偽装工作を施して貰う』という案だが。

 自分に使うそれとは違い、どうにも他者に付与したモノは()()()()()()()()()()()()()()という欠点があったようで。

 ……うん、無機物相手だとそんなことは起きなかったのだけれど、人相手だとどうにもなんか色々と制約が有るようで……。

 

 なので、当初の予定通り一応ごまかしてはいるものの、そんなに長持ちはしないということになっているのであった。

 いやまぁ、チラチラ見られる程度なら大丈夫そうではあるんだけどね?

 

 

「……というか、MODさん自体の姿を変えなきゃいけないのもわりと盲点だったよなぁ」

「言われてみればそれはそうだぁ、って感じですけどねぇ~」

 

 

 ……で、この制約。

 単純に他人に付与しているからというのもあるのだが、同時にMODさん自身の姿もごまかしているから、みたいなところも関係してるとかいないとか。

 要するに、処理すべきタスクが二つになってるので負担が増している……みたいな?

 

 今まで彼女が他人や無機物にMODを被せる時というのは、自分の姿については気にしていないということが多かったのだが……。

 今回王女様の祖国に向かうに辺り、ごまかしていない時の本来の彼女の姿が()()()()()()()()()()というのが問題になったのだ。

 

 いやまぁ、ちょっと考えればわかる話なんだけどね?

 王女様の容姿は、MODさんの妹──不思議さんのそれとよく似ている。

 となれば、彼女と姉妹であるMODさんとも、ほんのり似ているのだ。……同じ理由で、母親さんもなんとなく似ていたり。

 

 無論、並べれば別人だと気付くことは容易だが、例えばなんの前置きもなしに突然MODさんをこの国の人に見せた場合、王女様を想起することはまず間違いないだろう。

 そうなれば『王女様に似ている相手』ということで視線が集まり、自動的に王女様のごまかし耐久値にもダメージが入る、というわけだ。

 

 なので、MODさんは自分の容姿についてもごまかす必要が出てきたわけなのだが……。

 この時初めて、先述した問題が顕になったというわけである。

 

 

「今まで同時にやったことはなかったからねぇ……他人相手の能力行使って時点であれなのに、自分まで加えるとここまで辛いとは……」

「ヤバくなったら俺の背にでも隠れな。ちったぁマシだろうよ」

「その時は有り難くそうさせて貰うよ」

 

 

 ……で、ここで意外な活躍を見せたのが新規メンバー・ROUTEさんである。

 

 初見で男性と勘違いしたことからわかるように、この人俺達の集団の中では一番体格が大きいのだ。

 俺よりも背が高くて横幅もそれなりだというのだから、わりと華奢な方のMODさんくらい後ろ背に隠すこともわけないというか。

 ……これで全部脱ぎ捨てると筋肉質な美女になるというのだから、世の中よくわからないものである。

 

 

「裏家業やるんなら体は普通に資本だからな。鍛えておくに越したことはないぜ」

「私もそれなりに鍛えてはいるんだけどねぇ、筋肉は付かないんだよねぇ」

「姿がごまかせる人が筋肉が付かない云々を言ってもネタのようなものでは?」

 

 

 なお、確かにマッシブな彼女だが、別にこの中で一番力が強い、というわけでもない。

 AUTOさんとかと腕相撲をすると普通に負けるので、まだまだ鍛え方が甘いとかぼやいていたりした。

 

 ……いやまぁ、AUTOさんを引き合いに出すのは止めといた方がいい、とも言ったんだけどね?

 なにせこの人、体の使い方が上手いどころの話じゃないし。効率的運用の権化、みたいなものというか。

 

 ともあれ、序盤から頼れる姿を見せたROUTEさんは、そこから先にこそ本領を発揮したのであった。

 ……そう、車内で言っていたあれである。

 

 

「目的地に道案内する時限定だけどな、選択肢を数珠繋ぎにしてルート構築ができるんだよ」

「おー……」

「つまりはカーナビ?」

「……いや、間違ってねーけどよぉ?」

 

 

 彼女の能力──『選択肢の提示』は、どうやら使い方を絞ることで道案内のためにも使えるのだという。

 これは、実際に行ったことのない場所でも問題なく案内できるとかで、迷路のような場所の探索にも重宝していたのだそうだ。

 

 まさに『(ROUTE)』の名前通りの活躍、というか。

 ……なお、TASさんは早速彼女のやり方を見ながら学習しようとしていた。

 昔の総当たり方式から進歩したとはいえ、まだまだルート構築を洗練する余地はあるとかなんとかだそうで、彼女の目は目的地にたどり着くまでキラキラしっぱなしなのであった……。

 

 

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