「……私の葛藤はなんだったので!?」
「ま、まぁまぁ……」
このメダルじゃなくても開くんかい!
……的な怒りを爆発させる王女様を、MODさんが宥めるのを横目に、現れた階段を降りる俺達一行である。
中は薄暗く、底は見えないほどに深い。
そんな暗闇の中を、懐中電灯の明かりを頼りに一歩一歩進んでいっているわけなのだが……。
「……今何分経過した?」
「まだ十分も経っていませんわよ?」
「マジかよ……」
いやねぇ、そのねぇ……ねぇ?
思わず声を挙げる俺に、周囲からは怪訝そうな視線が返ってくるが……いやだって、ねぇ?
一抹の希望を持ってダミ子さんの方に視線を向けるが、彼女は先ほどの一件──串焼きがダメになった──のダメージがまだ残っているのか、ぶつぶつと何事かを呟きながら、危なっかしい歩みで階段を降りていたのであった。
「……まさか、暗いところがダメとか?」
「いやいや、そんなわけないだろ。今まで色んな事があったけど、暗闇の中に放り出されることとかいっぱいあっただろう?」
「……となると、底が見えない──高いところがダメ、というわけでも無さそうですわね。TASさん相手ですと普通に高いところに連れ出されることも多いですから」
「紐無しバンジーもやった。お兄さんの強化には暇を惜しまない」<フンス
「いや止めてやれよそういうの……」
そうしてキョロキョロしている俺を見て、CHEATちゃんの言葉を皮切りに俺の挙動不審の理由探しが始まったわけだが……。
いやいや、高所も閉所も暗所も今まで散々体験してきましたし。そんなので怖がってたら、TASさんのお隣になんて居られないですしおすし。
……といった感じで、議論は停滞中。
そのままなし崩し的に流れてくれればいいなー、などと思っていたのだが、そうは問屋が卸さない……ということなのか。
「……あー、まさかと思うが……複合型か?」
「………………」
「あっ、これ正解だ!」
「なるほど、高所閉所暗所が纏まっている時だけ、と」
「ちちちちちげーし!完全な暗闇ならともかく、懐中電灯一本だけだとなんか不安を煽られるなーとか思ってねーし!……あ」
「語るに落ちたね……」
ふと思い付いた……もとい選択肢でも見えてしまったのか、ROUTEさんがこちらに問い掛けてきたことによって、俺が落ち着かない様子でいる理由が判明してしまったのであった。
……半ば自爆?ほっとけ。
まぁ、うん。
高所も閉所も暗所もそれ単体なら問題ないし、なんならそれが組合わさっていても特に問題はない。
……どっこい、それらに加えて中途半端に明かりがある、という状況が重なると……なんというかこう、背筋が寒くなるというか。
そんな感じのことを述べれば、周囲から返ってくるのは微妙な表情。
多分、『いや、状況が限定過ぎやしない?』的なことを言いたいのだろうが……。
「バカヤローオメー、TASさんに付き合わされてりゃこうもなるわい……」
「……TASさん?何故ここで彼女が……んん?」
「露骨に視線を逸らしたんだけど」
「気のせい。探索系ゲームの早解きしてたらリアルでもやりたくなった、とかではないから」
「うわぁ」
……うん、ホラゲーってその限定状況がデフォルトで進むよね、というか?
昔一度、まだ彼女のあれこれに慣れていない時にショック療法的に連れていかれたところが、そんなノリで終始周囲から見えないなにかが襲ってくるようなところだったというか。
……当時のTASさんはまだ若く、こちらの体調やら精神状態やらを気遣いながら動く、みたいなことはあんまり出来ていなくてだね。
結果、その廃病棟を踏破して出てきたTASさんは、右手に引っ張っていた
……まぁそういうわけなので、こういうところはちょっとその当時を思い出してしまうので、なんとなーくへっぴり腰になるというか。
どうせだから白状すると、古代遺跡っぽいから
「…………」
「え、なんで王女様が視線を逸らす必要が?」
「いえその……言っていませんでしたが、ここは我ら王家の人間が代々その骸を収める陵墓とされている場所ですので……」
「え」
「……その、現王家の姫である私が居る以上、盗掘者と間違われることはないと思うのですが……それはそれで子孫の顔を眺めに
「……はっはっはっ。嫌だなぁ、幽霊なんているわけないじゃないか。非科学的な」
「それ絶対俺らが言っていいやつじゃないだろ……」
なお、そんな俺のカミングアウトを聞いた王女様の反応()
……いやまぁ、以前のところと比べた場合、こちらに襲い掛かってくることはないだろう、っていう点で比べ物にもならないのだが、それはそれでこの肩辺りの冷たい空気を肯定する内容になるのでなんとも笑えないなー、というか?
「え?」
「え?」
「え?」
「ほぎゃあぁあぁぁあ出ましたですぅ~!!」
そうしてみんなで笑いあって()いたところ。
ふと声を挙げたのはTASさん、その右手には半透明の何者かの右手。
……壁から半分だけ顔を出したその人物?は、こちらを見て首を傾げ。
たまたま視線を上に向けたダミ子さんと目が合い、彼女は雄叫びのような悲鳴を挙げながら、階段を転げ落ちて行ったのでした。
……いや、叫ぶの俺じゃなくてお前かいっ。