うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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TASさんは力を溜めている……

「我が国が栄えているのは、主に地下資源の豊富さによるもの。……ですが近年、その資源に枯渇の可能性が訴えられるようになってきたのです」

 

 

 王女様が語ったのは、この国が何故栄えているのかというもの。

 

 ……熱帯に属するこの国は、他の周辺国と同じく基本的には人が住むのに適していない地域である。

 砂漠が広がるその大地は、真昼は灼熱の様相を呈し・反対に深夜には極寒の様相を見せる。

 過酷な環境であるこの地域では穀物もろくに育たず、故にこそ資源や安全を求めて人々は地下を目指した。

 灼熱の陽光を受けず、死を運ぶ夜の風を受けず。

 ともすれば水や鉱物などの資源を有す地下というのは、砂漠の民にとってまさに夢の世界だったというわけだ。

 

 とはいえ、夢は夢。

 汲めども尽きぬ水、などというものは存在しない。

 体よく油田などを見付けられたのならばともかく、そうでない場所では地下の夢すら見られない……ということも少なくはない。

 

 そんな地域にあって、彼女の国は恵まれた方だったと言えるだろう。

 現在の世界に必要である特殊な資源を算出するこの国は、まさしく地下の夢によって生かされていると言っても過言ではあるまい。

 ──故にこそ、彼らは夢を見続けるために苦難の道を歩む必要があった。

 

 

「我が国は危機に瀕する度、冥界へと赴き続けた。地下を巡り、新たな希望を見付け続けてきた。──その繰り返しが、再度必要な時が来たのです」

「そうそう。久方ぶりの王家筋の人間……ということで、私達も歓迎のために気が逸った……というわけさ」

「……ん?ってことはさっきの人達は……?」

「一部違うのが混じってたけど、基本的には皆冥界行に失敗した人達さ☆」

「怖っ」

 

 

 ……王女様の話を聞く限り、件の資源が尽き掛けている……ないし、採掘可能な範囲の資源を掘り尽くしてしまった、ということになるのだろう。

 それゆえ、彼女は再度の奇跡を求め、地下へ向かうことを決めた。……のは良いのだが、それを実行するまでに幾つもの関門が待ち構えていたのだという。

 

 

「まず第一に、前回の冥界行が()()()()()()()()()()()、という事実が立ちはだかった。──たかが百年、されど百年。私にとっては昨日のことのようなものだが、君達にとっては容易に手の届かぬ過去だということになるだろう?」

「……なるほど。百年という月日はかつての栄光を容易く鈍らせる……ということですわね」

「近代の百年と古代の百年は違う、みたいなところもあるかも知れねぇな?」

 

 

 一つ目の壁として立ちはだかったのが、前回の冥界行がおよそ百年前に行われたものである、という点。

 ……実際にやった人間が居る、という事実から本来風化することはあり得ないのだが、当の本人である曾祖母の祖母さんはなにを思ったか、日本へと渡来してきている。

 

 つまり、語り継ぐ人間が居なくなってしまっているため、『実際にあったこと』が『伝説上の出来事』になってしまったのだ。

 ついでに言うと、それが近代の出来事であるということも、『実際にあったこと』を風化させる理由になっていた。

 オカルトがまだ信じられていた時代ならともかく、現代において神だの悪魔だのを真剣に信じていたら、頭を疑われることこの上ないだろう。

 ……無論、民衆の生活に宗教が密接に関わっているような場所ならその限りではないが、その場合も宗教には関わらない単なる神話・ないし伝承であれば、単なる寓話などとして処理される可能性も少なくはあるまい。

 

 

「そうして風化してしまったことで、王家の人間にも冥界行というものが眉唾物として扱われることとなった……ということになるわけだね」

「あー、『そんな夢みたいなこと言ってる暇があったら、他に有意義なことをしなさい』……みたいな?」

「まぁ、そんな感じだね」

 

 

 民衆が信じないのであれば、王家もそれを殊更に主張する意味もないだろう。

 そういった伝承は王家の箔や正当性を主張するモノであるが、その役を果たせないのであれば無用の長物でしかあるまい。

 

 

「そして、一番決定的だったのが──この陵墓に繋がる道が失われた、ということだろうね」

「あー……さっきはTASさんがズルしt()「してない」……おほん。さっきは無くても開けられたけど、鍵が無くなってるんだからそりゃまぁ来るのは無理、ってなるよね……」

 

 

 最後の決め手は、この陵墓に繋がる路が実質的に閉ざされてしまっていた、ということになるだろう。

 

 あのメダルがこの場所への鍵となっていたうえ、それが半分紛失してしまっていたのだから、最早ここは開かずの間になっていたようなものである。

 たどり着けないのだから、伝承を確かめる手段もない。

 民衆への求心力アップにも使えないのだか、覚えておく必要性すら薄れていただろう。

 

 それらの理由が重なり、王女様は冥界行を(結果的に)禁じられていた、というわけである。

 

 

「……それでも諦めないって辺りぃ、なんというか凄いですぅ」

「祖国の存亡が掛かっているのです。決して諦めるわけには、行きませんでしたから」

 

 

 まぁ、実際にはご覧の通り、王女様は無理に無理を重ねて冥界行を敢行した……というわけなのだが。

 

 こちらの発言は恐らく半分ほど(墓守さんの声以外)しか聞こえていないにも関わらず、彼女は会話の内容を推測し、胸に手を当てながら粛々と語るのであった。

 

 

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