「滅びが間近にないのであれば、冥界行の必要はない。されど、今私達は冥界の地に立っている……その状況の中途半端さと類似するように、今この場には微妙な立場の人間がいる」
「それが、私ということだね?」
「正確には、王女様も含めた二人ですわね」
推理をする探偵のように、AUTOさんが朗々と言葉を紡ぐ。
システマチックに冥界は、その扉を開閉させる。
なれば、多少なりとも滅びの気配がないことには、その扉を開けようという気にさせることすらできないだろう。
例え、
もし、その決定を覆すなにかがあるとすれば、それは恐らく
そして、その予兆となりうるのが、今ここにいる二人の人物──王女様とMODさんの二人である、と。
「王女様の方は、正当な血筋であるにも関わらず、冥界の主人以下全ての体無き者達を知覚することができていない。対しMODさんの方は、傍流の血筋ではあるものの、冥界の主人達との交流を結ぶことができる……」
「最近流行りの小説とかでよく見るやつ」
「国が割れる可能性大、ですぅ」
この二人、色々と対称的である。
かたや正当な王族であるにも関わらず、本来見えるはずのモノが見えない王女様と。
かたや傍流の血筋であるにも関わらず、本来の王族のように冥界の主人達を見ることのできるMODさん。
……TASさんの言う通り、この世界がいわゆるエンタメ的な作品であったのであれば、MODさんを主役にしたロマンスでも始まりそうな感じの状況である。
そしてそれは、現実的に見てもあまり宜しくない状況だと言える。
王家の正当性が薄れ、尚且つ他に担ぎ出せる相手がいる……となれば、国家転覆の起因となり得る可能性は決して低くはあるまい。
そう、二人の状態はそのまま、この国が将来的に抱える火種となっているのである。
敢えて誤解を助長する言い方をするのであれば──お飾りの王女と、かつて追放された王家の末裔……みたいな?
「まぁ、実際には当の先代は追放されたとかではなく、自分から望んで遠い異国の地へ旅立ったのだけれどね」
「……そういえば、一つ気になったのですが。何故その方は、件のメダルを半分持って日本に向かったのですか?」
まぁ、誤解を助長すると前置きしたように、実際のところは別に追放された王家の末裔、ってわけではないのだが。
……で、それを聞いて声を発したのがDMさんである。
その内容は、先代──王女様の曾祖母の祖母である人物が、何故日本へと──それもその時はまだ鍵だと思われていたメダルを半分にわけて持ち去ったのか、というもの。
そもそも今回の話をややこしくしているのが、件のメダルと先代の所在である。
それらが日本にあったからこそ、王女様は日本を目指したわけなのだから、言ってしまえば
話はそれだけに留まらない。
ここで思い返すべきなのは、
彼女は冥界への鍵だと目される、半分のメダルを前回も入手している……と思われるが、その時の彼女は意気消沈したまま国に戻った、ということだった。
これはとてもおかしい。
そもそも冥界行は
……それゆえ、メダルという鍵が復元された時点で、意気消沈する理由がなくなっているのだ。
なにせ、冥界への道は『滅びの兆し』と『鍵』、それから『王家の血筋』が揃った時点で開くことは確定しているのだから。
だが現実には、彼女はまるで冥界の扉は開かない……と確信しているかのように、失意のまま国へと戻った。
……それはつまり、その時の彼女もまた、
「……ふぅ、素直に騙されて下さればいいものを。本当に、
「……んん?」
そこまで話し終えたことで、王女様に変化が。
……ええと、なんというかこう、雰囲気がちょっと暗いというか鋭いというか……?
そんな風に困惑するこちらを嘲笑うかのように、彼女は短く『ハッ』と笑みを溢す。
「力を持たぬ小娘一人では、世界を滅ぼすこともできない。けれどもう一人、時に忘れ去られた末裔の血一つでもあれば、それも叶おうと言うもの……」
「……おおっとぉ?」
そんな、様変わりした彼女の様子に、思わずといった風にMODさんが困惑の声を落とす。
──どうやら、今回の騒動の真の黒幕が、その姿を現したということで良さそうなのであった。
……この人の親族、ヤベーやつしか居ないんです???