「お答えしましょう、先代が極東の地へと向かった理由。……それは単純明快、この国が死ぬほど嫌いだったから、それだけに過ぎません」
「……おおっと?」
纏う空気の変わった王女様が語るのは、先代──曾祖母の祖母である人物が、何故日本へ向かう必要性があったのか、というもの。
それを語るには、彼女の持つ一つの技能が重要となっていた。
「王族はそもそも特殊な力を持つもの、ですが。先代のそれは特別も特別……国の安否を占う力を持っていた彼女は、ともすれば現代に蘇った初代の如く、と言ってしまえるほどの存在でした」
「まぁ、いわゆる未来視……というやつだね。彼女のそれは中々に強いもので、ともすればこの冥界の門よりも鋭敏であったかもしれない、というほどのモノだったのさ」
二人の口から語られた事によれば、どうにも先代様とやらは
その力は凄まじく、ともすれば冥界そのものが彼女に膝を折るレベルだったのだとか。
それゆえに、彼女は次代の王になることを期待されていたが……。
「彼女はその道を選ぶことはなかった。何故なら彼女は、国の存亡を覆すために冥界行へと向かったから」
「いやー、当時は驚いたものだよ。なにせ次期女王は彼女で間違いない、と思っていたからね。そんな彼女が冥界に自分から来るだなんて──言い方を変えればその行為そのものが、国の存亡に関わりかねない事態だったのだから」
当時は形骸化しかけていた──言い換えれば毎年の生け贄の儀式のようなものでしかなかった冥界行に、自分から向かうことを進言したのだ。
当時の彼女が、一体何を思っていたのかは定かではない。
優れた未来視を以て、こうするのがベストだと悟っていたのかもしれないし、王になどなりたくないと逃げ出しただけ……だったのかもしれない。
ともあれ、その理由がなんにせよ答えは一つ。──彼女は冥界行を成功させ、同時に国を捨てることを決意した。
二度と冥界が開かぬように、もしくは開こうとした者を自分の元に招き寄せるように、鍵となるメダルを半分にわけて。
「そうして立ち去る前、彼女は一つの書物を国に残したのです。それが、この予言書。これから訪れるであろう未来を記した、彼女の最後の力……」
「……最後の力?」
そこまで話し終えた王女様は、どこからともなく一冊の本を──紐で綴じられた古めかしい薄いノートのようなモノを取り出してくる。
随分と薄汚れたそれは、今にも紐が解れてバラバラになってしまいそうな有り様だったが……それを気にせず、彼女は本を捲る。
そうして彼女はとあるページで本を捲るのを止め、こちらへとその紙面を見せ付けてくる。……って、ん?
「先代が己の全てを込め、綴ったこの文章。……これは、未来視の究極。
「こ、れは……!!?」
「か、からだがうごか、な」
「おおー……」
そのノートに書かれていたのは、恐らく王女様の国の言葉。
そこに書かれている言葉の意味はわからないが、それは一瞬輝いたかと思うと、周囲の皆の動きを止めてしまったのであった。
……ううむ、あの文字を視認してしまうと石のように固まってしまう、みたいなやつなのだろうか?
仮にも邪神であるDMさんまで固まっている辺り、その強制力は中々のモノだと言える。
あと、ダミ子さんが「難しい話はわかりませぇん」とばかりに、どこかに隠し持ってたハンバーガーを食べようとしている姿で固まってるんですが、これはツッコミを入れておくべきなのでしょうか?
涙目なの可哀想な気もするし、このタイミングで飯食ってんじゃねぇよって怒るべきな気もするし。……うーん、短い間に色々起きすぎである。
「私の目的は、この国の滅亡。……
「あーうん、そうだねぇ。国のためにと身を投げる思いでここに来た彼女達は、だからこそ
「なに、を、仰って……」
「なに、簡単なことさ。冥界に眠る財宝とは、それすなわち冥界行にやってきた者達。……彼女達自身を
「……は?」
「……その分ですと、
そうして「どうしたものかなー」と悩んでいる内に、どうやら種明かしパートに突入した様子。
……ダミ子さんじゃないけど、「難しいことはわからん」と聞き流すべきか、真剣に悩み始める俺なのでありましたとさ。