うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

280 / 728
※まだかなー、私の出番まだかなーとTASさんスタンバイ中

「王家の血筋の者には、特殊な力が宿る──。先代のそれは『未来視』であったし、その他の歴代の王族達にも、ぽつぽつとその兆候はあった……。されどそれは、同時に災禍を予感させるものでもありました。何故ならば、それらの特殊な力は冥界からの借り物。──死者の国の扉が開こうとしている予兆だったから、なのです」

 

 

 結局、真面目に聞くことにした俺である()。

 で、そうして王女様の話を真面目に聞いた結果、明らかになったのは次のような事実であった。

 

 一つ、この国の王族には、時折特殊な力を持つものが生まれることがあった。

 

その力の方向性は様々であり、彼女の曾祖母の祖母は未来視であったが。

 他の先々代やそれより前の王族には、物理的に炎を操る者がいたり、はたまた流砂を操る者がいたりしたのだそうだ。

 

 ……とはいえ、それらの力のほとんどは微々たるもの。

 炎を操ると言っても、精々ランプの火くらいのものを起こせるだけだったり、流砂に関しても靴の底くらいの面積の砂を操れるだけ、みたいなものがほとんどであったのだそうな。

 

 二つ、それらの力はいわゆる先祖返りであり、かの国は初代の再来を待ち続けていた。

 

 初代は何の力も持たぬ人であった、みたいなことをさっき聞いたが……子孫達はそうは思わなかった。

 冥界の主人となった彼は、言い換えれば冥界という大地を操る者だと言える。

 なればその力は強大にして無比。……その再来が現れることがあれば、この国は永久(とこしえ)に繁栄することが約束されるだろう。

 

 三つ、冥界は人を拒んでいた。

 

 初代以降、暫くの間冥界への道は閉ざされていた。

 迂闊に開けば、冥府の亡者共を地上に解き放つことになるそれは、ゆえに固く閉ざされていた。

 唯一、王家の血に連なる者のみが、()()()()()()()()()()()()()()

 

 四つ、人々は忘れていた。

 

 人々は冥界を征した初代の功績を忘れてはいなかった。そしてどうにかして、その威光に再度すがれないかとも思っていた。

 ──初代から与えられた財宝は、()()()()()()()

 そして、冥界の財はまだまだ尽きぬ、ということもわかっていた。

 

 ゆえにどうにかして、人々は再び冥界の扉を開くことを望んだ。

 ──そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということを忘れて。

 

 五つ、()()()()()()()

 

 どうしても諦めきれず、()()()()()王族を時折冥界の門の前まで向かわせたが、扉は何も言わなかった。

 ()()()王族は国を継ぎ、どうにかして国を存続させようとしたが……結果は芳しくない。

 国はどんどん疲弊し、民はかつての栄光に夢を見続け──そしてある時、とある王族が冥界の門を叩いた。

 

 それはその代の王。力ある者。

 その者が冥界の扉を叩いた時、それは呆気ないほどに軽く開き、その者を冥界へと招き入れた。

 ────そして、その者は帰っては来なかった。

 代わりに、国には再度財が溢れた。汲めども尽きぬ、無量の財が。

 

 そして彼らは、冥界の開き方を学んだ。

 

 

「言い方を変えれば、生け贄に捧げるべきものを学んだ……というべきでしょうか?そして彼らは力ある王族を贄にしながら、偽りの繁栄を掴んだのです」

「いつわりの、はんえい……」

 

 

 朗々と語る王女様は、固まっている面々の間をすり抜け、とある人物の前に立つ。

 ──無論、今代の力ある王族、MODさんの前だ。

 

 

「王家の血筋に生まれる、特殊な力を持つもの。その者の力を増幅する装置。……それこそが冥界の真実」

「いやまぁ、実際のところはちょっと違うんだけどね?それだと私が、最初にあれこれできたのがおかしいだろう?」

 

 

 でも、彼女(王女様)には内緒だよ?……などと宣う墓守さんに、遅れ馳せながら先ほどの王女様の言葉──ロクデナシ、という言葉に賛同してしまう俺である。

 ……うっすら感じてたけど、この人(?)わりと最低だな?

 

 ともあれ、その些細な勘違いがどうなるのか、というのは今のところ不明。

 こちらの利になるのか、はたまた向こうの利になるのかはわからないため、忠告通りに口にはしない俺である。

 

 

「その増幅の際、小さな力しか持たぬ者達は溢れる力に耐えられず自壊した。──そう、先代──彼女以外は、全て」

「……なる、ほど。その、ノートは……!」

「ええ、彼女が溢れる力を全て注ぎ込み、作り上げた一品物。もう二度と作ることは叶わぬ、本物の冥府の宝と言うべきものです」

 

 

 再び語り始めた王女様の言によれば、件の先代様は国を救うだけの出力に耐えきるどころか、こうして後世のために本を作り出す、などということまでできるほどの力を得たらしい。

 まぁ、それらを遂行した時点で、ほぼただの人間レベルにまで落ち着いてしまったらしいが。

 

 ……だが、それこそが悲劇であった。

 本来冥界行をした王族は、生きては帰らない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、国を救う財宝を生み出して消える……というのが本来の流れ。

 それを越えて生き残ってしまった彼女はまさにイレギュラーであり、同時にこの国がどうしようもなく終わっていることに気付ける、唯一の人間でもあった。

 

 ゆえに彼女は、有り余る未来視の力を総動員し、やがて未来にこの国を終わらせる者が現れることを予期し、それの助けになるようにと一冊の書物を綴った。

 それこそが今、王女様の持つ本であり、そこに記された手段を実行するために必要だったのが──、

 

 

「先代の血のみを継いだ、貴女だったのですよ……」

「……ははっ、冗談キツいなぁ」

 

 

 ()()()()()()、MODさんなのであった。

 ……色々盛られて行くな、この人。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。