「王家の血筋の者には、特殊な力が宿る──。先代のそれは『未来視』であったし、その他の歴代の王族達にも、ぽつぽつとその兆候はあった……。されどそれは、同時に災禍を予感させるものでもありました。何故ならば、それらの特殊な力は冥界からの借り物。──死者の国の扉が開こうとしている予兆だったから、なのです」
結局、真面目に聞くことにした俺である()。
で、そうして王女様の話を真面目に聞いた結果、明らかになったのは次のような事実であった。
一つ、この国の王族には、時折特殊な力を持つものが生まれることがあった。
その力の方向性は様々であり、彼女の曾祖母の祖母は未来視であったが。
他の先々代やそれより前の王族には、物理的に炎を操る者がいたり、はたまた流砂を操る者がいたりしたのだそうだ。
……とはいえ、それらの力のほとんどは微々たるもの。
炎を操ると言っても、精々ランプの火くらいのものを起こせるだけだったり、流砂に関しても靴の底くらいの面積の砂を操れるだけ、みたいなものがほとんどであったのだそうな。
二つ、それらの力はいわゆる先祖返りであり、かの国は初代の再来を待ち続けていた。
初代は何の力も持たぬ人であった、みたいなことをさっき聞いたが……子孫達はそうは思わなかった。
冥界の主人となった彼は、言い換えれば冥界という大地を操る者だと言える。
なればその力は強大にして無比。……その再来が現れることがあれば、この国は
三つ、冥界は人を拒んでいた。
初代以降、暫くの間冥界への道は閉ざされていた。
迂闊に開けば、冥府の亡者共を地上に解き放つことになるそれは、ゆえに固く閉ざされていた。
唯一、王家の血に連なる者のみが、
四つ、人々は忘れていた。
人々は冥界を征した初代の功績を忘れてはいなかった。そしてどうにかして、その威光に再度すがれないかとも思っていた。
──初代から与えられた財宝は、
そして、冥界の財はまだまだ尽きぬ、ということもわかっていた。
ゆえにどうにかして、人々は再び冥界の扉を開くことを望んだ。
──そもそも、
五つ、
どうしても諦めきれず、
国はどんどん疲弊し、民はかつての栄光に夢を見続け──そしてある時、とある王族が冥界の門を叩いた。
それはその代の王。力ある者。
その者が冥界の扉を叩いた時、それは呆気ないほどに軽く開き、その者を冥界へと招き入れた。
────そして、その者は帰っては来なかった。
代わりに、国には再度財が溢れた。汲めども尽きぬ、無量の財が。
そして彼らは、冥界の開き方を学んだ。
「言い方を変えれば、生け贄に捧げるべきものを学んだ……というべきでしょうか?そして彼らは力ある王族を贄にしながら、偽りの繁栄を掴んだのです」
「いつわりの、はんえい……」
朗々と語る王女様は、固まっている面々の間をすり抜け、とある人物の前に立つ。
──無論、今代の力ある王族、MODさんの前だ。
「王家の血筋に生まれる、特殊な力を持つもの。その者の力を増幅する装置。……それこそが冥界の真実」
「いやまぁ、実際のところはちょっと違うんだけどね?それだと私が、最初にあれこれできたのがおかしいだろう?」
でも、
……うっすら感じてたけど、この人(?)わりと最低だな?
ともあれ、その些細な勘違いがどうなるのか、というのは今のところ不明。
こちらの利になるのか、はたまた向こうの利になるのかはわからないため、忠告通りに口にはしない俺である。
「その増幅の際、小さな力しか持たぬ者達は溢れる力に耐えられず自壊した。──そう、先代──彼女以外は、全て」
「……なる、ほど。その、ノートは……!」
「ええ、彼女が溢れる力を全て注ぎ込み、作り上げた一品物。もう二度と作ることは叶わぬ、本物の冥府の宝と言うべきものです」
再び語り始めた王女様の言によれば、件の先代様は国を救うだけの出力に耐えきるどころか、こうして後世のために本を作り出す、などということまでできるほどの力を得たらしい。
まぁ、それらを遂行した時点で、ほぼただの人間レベルにまで落ち着いてしまったらしいが。
……だが、それこそが悲劇であった。
本来冥界行をした王族は、生きては帰らない。
それを越えて生き残ってしまった彼女はまさにイレギュラーであり、同時にこの国がどうしようもなく終わっていることに気付ける、唯一の人間でもあった。
ゆえに彼女は、有り余る未来視の力を総動員し、やがて未来にこの国を終わらせる者が現れることを予期し、それの助けになるようにと一冊の書物を綴った。
それこそが今、王女様の持つ本であり、そこに記された手段を実行するために必要だったのが──、
「先代の血のみを継いだ、貴女だったのですよ……」
「……ははっ、冗談キツいなぁ」
……色々盛られて行くな、この人。