「……冥界の機構を効率良く動かすには、負の念が必要です。国を救うためと命を張った者達が、その実単に生け贄として消費されるだけだった、と知った時の絶望。──それが色濃く強ければ強いほど、発生する財……力の質は高く、強くなる」
「…………」
MODさんの前に立った王女様は、先ほどよりもなお雄弁に語り続ける。
それは恐らく、彼女の言う通りMODさんの負の念を燃え上がらせるための策、ということになるのだろう。
血の繋がった者達に裏切られたという絶望。
誰も助けは来ない、という恐怖。
そうしなければならない、という世界への失望。
……様々な負の念を燃え上がらせ、そしてその力を最大限に引き出すために。
「……いえ、おまち、なさい。それは、くにをすくうしゅだん、なのでは……?」
それに待ったを掛けるのは、先ほどから積極的に彼女に話し掛けていたAUTOさん。
確かに、今のところ王女様は国を救う手段をなぞっているだけ、に思える。
そこからどう、国を──世界を滅ぼす、などという手段を引き出そうとしているのか?
「簡単なことです。──死とは救済、死とは安らぎ。国を救う手段がこの冥界にあるのであれば、そも死よりも優れた救いなど有りはしない」
「…………!?」
うわさらに空気が変わった。
……なんというのか、先ほどまでの彼女よりもさらに濃ゆい思念を纏っている、とでもいうのか。
まるで
……いや、実際正気ではないのだろう。
件の書物は人の行動を縛る。なれば、
そして、それを彼女達──かつてこの地に散った者達が後押しする。
死の間際に真実を知った彼女達、そしてお供の人々は、この地に漂う内に正しく冥府の亡者と化した。
彼らは国を憂い、国へ嘆き、故にこそ国を真に救わんとする。
それは最早、救いを求めて蠢く悪霊の群れに他ならず。
「ですので皆様、どうぞお怨みください。その一念を以て、衆生を全て救って見せましょう」
皆はただ、その威容に圧倒されていたのであった。
戦闘態勢、と言いたいところだが皆石化中である。
これ早々に詰んでね?……って言いたいところだが、こういう時こそ俺の出番なのであった。
「そーいうわけでー、くらえー!!」
「……っ!?な、何故動けるのですか?!」
「おあいにく様、こういう時に何とかするのが俺の役目、なんでね!」
まぁ正確には、TASさんに付き合ってると変なものへの耐性が付いていく……みたいな感じだが。
そういうわけで一人だけ動ける俺がまずしたのは、王女様の持つノートに対しての投石である。
明らかにあれが原因でしょ、って感じなのでそれを彼女から離せば何とかなるのでは?……と思っての行動だったが、意外と機敏な王女様は、飛んできた石をひらりと避けてしまったのであった。
「ち、流石にそう簡単には行かないか。ならばっ!」
「え、あのちょっとなんでわたしをもちあげてるんですぅ?!」
「必殺、大回転ダミ子ぉーっ!!」
「にぎゃぁああーっ!!?」
「無茶苦茶ですか貴方っ!?」
なので早速次の攻撃!
ダミ子さんのビッグボディ()なら当たり判定はデカい、はず!
というわけで彼女を持ち上げて投げ付けたのだが……あらら、これも避けられちまったいなんてこったい。
ううむ、特殊なパワーは持ち合わせていない、とのことだったから、俺一人でもなんとかなるかなー、と思っていたのだが……そう簡単には行かないってことか。
まぁそれも無理はない。多分彼女、今回の話のラスボス枠だからネ!
「……っ、思えば貴方は今一分からなかった。特別でない、特別にはなれない貴方は何故、ここにいるのですか。
「おっ、なになに?羨ましいとかそういう気持ちがあったり?じゃあそれにはこう答えよう。人間、死ぬ気でいればわりと付いていけるってね」
「……戯れ言をっ!!」
おっとお相手さんカンカンだ。
多分地雷を踏んだんだろうねー、というか下手するとそこに件のノートがクリティカルしちゃったんだろうねー。
……それにしても、MODさんと王女様の曾祖母の祖母さんは、一体なにを考えていたのだろう。
いやまぁ、この国を憂いていたのだろうなーとか、このタイミングを狙ってたんだろうなーとか、なんとなく察せられることはあるのだが。
……あと、MODさんの永久離脱云々も、なんとなく分かったような気はする。
今この場で動けてるの、俺と王女様だけだから恐らく元のルートだとMODさんは抵抗の間もなく生け贄にされてたんだろうし。
いやまぁ、だとすると世界は滅ばなかったんです?……みたいな疑問も無くはないのだが。
まぁその辺りは、詳しく知っているだろう人物に聞いてみるとしよう。
「……なにをぶつぶつと」
「単純だぜー。俺に解決できるだなんて思ってないってこと」
「は?」
「すきありー」
「なっ!?」
まぁ、俺のサポートが必要だったかは謎なんだが。
そんなわけで、完全に王女様の意識の外から奇襲し、その手のノートを奪い取った