「事実の取り違え、というやつだね。今までこの地に挑んだ者達の内、成功した者達はここに来たことでなにかを救えた……というわけではなく、どっちかといえば
無論、件のシステム──王家の人間を贄に捧げることで、財を吐き出すそれにまったくの寄与が無かったかと言われれば、それもまた別の話だが……と再度肩を竦める墓守さん。
……言い方を変えると、件のシステムは本来国を救うものではないが、その副産物として生まれるものは、確かに国を救う助けにはなっていた……みたいな感じだろうか?
そこで問題となってくるのが、今まで『冥界行』を行ってきた者達へのアピールポイントとなっていた、『国を救うシステム』が本来なにを目的としたものなのか、という部分。
これ、実のところ
「質量とエネルギーの関係については知ってるかな?いわゆる『E=mc2』ってやつ」
「なんか突然科学の話が始まった件」
「はっはっはっ、そう身構えなくてもいい。人間が持つエネルギー……可能性を、分かりやすく目に見える形にするにはこの式を使う方が楽、というだけの話だからね」
いやでも、古代の人物が計算式とか口にするのわりと違和感が凄いと言うか。
……そんなわけで、墓守さんの口から飛び出したのはみんな大好き『エネルギーと質量の等価性』──とある偉大な科学者さんが作り出した、
これによれば、一キロのものを純粋にエネルギーに変換した場合、そのパワーは
これは、計算式に光速を含むせいで答えが膨大な数値になってしまうからであり、同時に純粋なエネルギーから質量を生み出そうとすると、とてつもないエネルギーを必要とする……ということを示しているわけだが。
「裏を返せば、ちょびっとでも質量をわけて貰えさえすれば、世界を滅ぼすエネルギーには十分……ってことにならないかい?」
「なる、ほど?」
この法則においては、物質の種類によって持ち合わせるエネルギーの量に変化が起きる、などということはない。
一キロのウランと一キロの塩では、どちらも質量におけるエネルギーの総量に違いはないのだ。
……つまり、純粋なエネルギーから物質を作る、という技術を持ち合わせているのなら、人間一人分の質量の金を作って渡したように見せ掛けて、少し質量をわけて貰えば十二分……ということ。
まぁ、件の変換システムの稼働エネルギーも必要だろうから、取り分としては
これの面白い所は、冥界側の取り分が少ないように見えて、その実かなりのエネルギーを得られている……というところにある。
「変換する時にはお供ごとやるからねぇ。多くて十人程度とは言え、単純な質量として考えるとおおよそ五百から六百キロほど。──その内の三百五十から四百二十キロほどの純金の塊が、地下資源として入手できたのなら。……細かいことはどうでも良い、みたいな気分になると思わないかい?」
「うへぇ……」
「一グラムおおよそ一万円ですから、単純計算で……さんじゅうごおくとかですわね?」
「AUTOさんの顔が変なことに!?」
今は価値のわかりやすい金で例えられたが、この国で地下から産出されるのは特殊な資源。
……流石に金ほどの価値ではないだろうが、それでもプラチナと比較されうる希少金属であることは間違いあるまい。
となれば、その資産価値は単純に考えてプラチナの価格──グラム五千円ほど──より低い、などということはないだろうから、おおよそ十七億。
……国家予算として考えるのなら低い方かもしれないが、それでもそんな金額のものが突然地下にポンっ、と増えるのだから、国民の興奮は言わずもがなだろう。
そして、それだけの『財』を国にもたらしつつ、冥界の取り分として渡ってくるのは質量の一割、すなわち五十から六十キロほど。
先ほど言ったように、巨大地震を一つ起こすのに必要なエネルギーは、おおよそ一キロ分。
……マグニチュードが一つ上がるとエネルギーはおよそ三十倍になるそうだが、そう考えるとたった一回の冥界行・しかも貰うエネルギーは一割のみにも関わらず、冥界には
「今回で都合何度目か、なんてことは忘れてしまったけれど……もし、このまま放置しておくとすれば、地球を半分に割るほどのエネルギーが残ったまま……なんてことになるねぇ?」
「危なっかし過ぎるだろこの冥界」
いやまぁ、実際にはもっとオカルトチックなあれこれがあるのだろうが。
……ともあれ、なまじ分かりやすく科学を交えて語られたため、この場所を放置できない理由に詳しくなってしまった俺達なのであった。