「いやー、感動した!人と人との暖かい思い遣り、久しく忘れていた光景だ……」
「……こ、この声は!?」
どうしたもんかねー、ねー?
……みたいな感じに首を傾げていたところ、突然キャンピングカー内に響いたのは拍手の音。
それから続けて、直近まで何度も聞いた声が、こちらの耳朶を打つ。
まさか、と視線を巡らせ、俺達が見つけたのは。
「そういうわけで、困った時の墓守お兄さんだ。待ってたかい?」
「ふん!!」
「うお危なっ!?いきなりなにをす……いや話し合おう、確かに出現場所がとても悪かったことに関しては謝ろう。でもほら、地下から脱出してきたんだから私が下から出てくることは予測できて然るべきぐえー!!?」
「そのまま!地下に!お戻り下さいませ!!」
「……いやー、そりゃそうだよ墓守のダンナ」
AUTOさんのスカートの下に現れた、墓守さんの姿なのであった。……あ、踏み潰されて地面に沈んでいった。
「いやー、ははは。酷い目にあった」
「でしょうね」
いやまぁ、アレだけで済んで寧ろ良かったね、というか?
そんなわけで、冥界への道の崩落と共に、そのまま運命を共にしたと思われていた墓守さん、奇跡の再出演である。
喜びも怒りもひとしおに、改めて向かい合った俺達。
その姿を見て(?)彼は薄く笑ったのであった。
「その分だと、何故私がここにいるのかということについては大体予想が出来てるみたいだね」
「まぁ、タイミング的にもこっちのトラブルを解決してくれる気なんだろうなぁ、ということくらいは読み取れると言いますか……」
確かに彼、役職的には悪の元締め、みたいな感じだが……その実、冥界を閉ざすことに否定的でも非協力的でもなかった辺り、少なくともこちらの敵ではないことは確定していた。
……まぁ、味方と言うほどこちらに利をもたらしてくれたか、と言われるとちょっと微妙なところもあるのだが。あそこに地下がある、ということを知らせてくれたくらいかな?
ただ、そんなどっち付かずの態度を取ることは、もう止めにしたらしい……というのは、彼の纏う空気を見ればわかる。
口調こそ変わってないけど、そこには上に立つものの気概、とでも言うべきモノが宿っていたからだ。
「……ふむ、良い目をしている。惜しむべからくは、君がうちの家系の人間じゃないってことかなー。どうかな?今からでもどっちかに婿入りする、というのは」
「?!」
「あー、そういうのはまだ早いかなー、と」
「むぅ、それは残念」
(……いきなり結婚は重かった。このルートは失敗)
まぁ、それを読み取ったこちらに対しての言葉は、どうにも冗談なのか本気なのか分かり辛かったわけだが。
……いやほら、多分冗談だろうから、そんなに睨まないで貰えないですかねMODさん。
別に貴方が魅力のない人、って言ってるわけじゃなくて、明日無事に帰れる保証もない状況でそんなこと言われても困る、ってだけで。
あとほら、俺ってばバイトはしてるけどニートみたいなもんだし。半ばTASさんに養われてるようなものだし。
そんなやつが冗談を真に受けるとか『死ね!』って言われても仕方な……なんでみんなして俺を残念なモノを見る目で見てくるんです?
状況に困惑して首を捻っていると、目の前の墓守さんから苦笑が漏れた。
「いや、失礼失礼。弄りがいのある御仁だと思ってはいたけど、まさかここまでとはねぇ」
「やっぱりからかっていやがりましたかこの人は」
「はっはっはっ!当たり前だろ~う?だーれが君みたいな唐変木にうちの可愛い子孫を嫁がせるもんか!」
「そ、そこまで言えとは言ってねーんですけどぉ!?」
「はっはっはっ!悔しかったら彼女の一つや二つでも作って見せるんだね!」
「い、言わせておけば……幾ら子孫が栄えてるからってぇ……」
「あ、それに関しては誤解だよ。私は清い体だからね。彼女達は妹筋の子孫さ」
「は、はぁ!?滅茶苦茶偉そうなこと言っておきながら、自分は未経験だぁっ!?」
「そりゃそうさ。だって私、端から生きて帰るつもりもなかったからね。妻になった人間に変な傷を残してしまうとか、それこそ罪作りだろう?」
「……っ!!………っ!!?」
それを、言われちゃ、なんにも言えねぇだろうが……っ!!
いわゆる未経験煽りをしてきた相手が未経験、という状況下において、未経験である必要があったとか誰も反論できないでしょいい加減にしろ!
……あと、言葉を濁しているとはいえさっきからシモい話ばっかりしてるから、周囲の目線が酷いことになってます!
どうすんだよこれ、軌道修正不可能だろ……などと思っていた俺に対し、救世主は意外なところから現れたのでした。
「……それで、お兄さんのことはともかく、貴方はこの状況をどうやって解消するつもりなの?」
「んん?……あーうん、それに関しては簡単さ。いい加減、この国も冥界の庇護から抜け出す時だった、というだけの話だからね」
それはTASさん。
彼女はさっきまでの空気を絶ち切って、話を軌道修正して見せたのだ。
よっ!流石TASさん日本一!「お兄さんは静かにしてて」って言われたから黙ってますね!
そんなわけで。
俺達は墓守さんの口から提案された作戦に従い、この国の負の連鎖を完璧に終わらせることとなったのでした。