その日、王城の中は特にピリピリとした空気に包まれていた。
出向先で突然消えた王女。……それだけならばまぁ、お転婆なところのある王女の暴走、という形で済んだのだろうが。
直近で伝えられたことが、大いに彼らを苛立たせていた。──そう、遺跡の崩落である。
……意味と意義を失われていたため、仮に活用するとしても観光資源になるか否か、といったところだが……それでも、自国の財産が突然無に帰した、となれば落ち着いていられるはずもない。
更に、その話に少なからず王女が関わっている、というのも頭の痛いところであった。
宝物庫に置かれた、
それを見た王女は、その時から「あの遺跡は壊すべきだ」と表明し続けるようになった。
あれらの書物には遥か昔、この国があの遺跡によって発展してきた……という
無論、それらは単なるおとぎ話にすぎず、本当にそんなことをしていたわけがないと何度も説明したのだが……聞き入れず。
仕方なく、暫く放置していたのだが……ある日突然、そんなことを言っていたのを忘れたかのように、『日本に行きたい』と溢すようになったのだ。
この国からは遠く離れた、極東にあるという国。
……何故そんな国に行きたいと言い始めたのか、疑問は尽きなかったが……前までの彼女の要求に比べれば、遥かに聞き届ける意味があった。
それゆえ、気晴らしも兼ねてかの国に送り出したのだが……結果は突然の失踪。
我が国の資源を狙い、王女を誘拐しようと企むモノも居るだろう、と護衛を常より多めに同行させたものの、王女側がそれを振り切ってしまっては話にならない。
結果、日本に行きたいというのは単なる口実で、本当は一人になるチャンスを窺っていたのではないか?……という予測が立ってしまったのだ。
その状況下で、今回の案件である。
数日前には『Man Of Different』なる、胡散臭いスパイの話も届いている。
……その状況下で、二つの物事が全くの無関係、とするのは中々に難しいだろう。
つまり、あの遺跡の崩落は王女の伝のモノが行ったことであり、それが本当であるのならば、生半可な罰では足りないぞ、ということになるわけで……。
などと、王城内の人間があれこれと議論している時に。
──それは、彼らの前に降り立ったのであった。
えー、結論から言いますと、驚くほどにスムーズに行きました。
いやもう、なんというか全自動のゲームでもやってるのか?……くらいのスムーズさでしたね、これが。
やったことはとっても単純、王女様(気絶中)に憑依した墓守さんが王城で演説をぶち上げた、というだけの話なのだが……まぁ人を扇動することの上手いこと上手いこと。
なんならそのまま、王城内の人々全員洗脳したかのように死兵にだってできてたでしょ……と疑ってしまうくらいの手際の良さであった。
で、その口の上手さを最大限生かした彼は、国の方針を『地下資源だけに頼らない』モノへと変更し、また現在王女様に憑依している自分が、初代国王とでも呼ぶべき存在であることを認めさせたうえで、二度と冥界などというあやふやなモノに頼ることのないように……と誓約を結ばせたのである。
まぁ、今の人々は冥界に頼っているという自覚がない、という部分もプラスになったのだろうが……ともあれ、あのままだとそう遠くないうちに起きていただろう問題のほとんどは、こうして無事(?)解決したのであった。
「……ですが、その場合どうやって国を運営して行くことになるのでしょうね、あの国は」
「資源を掘り出すだけだったのが、その資源を加工する技術・再利用するための技術を磨く方向に進んでいくと思うよ。今の時代って、そういうのが重要なんだろう?」
「なる、ほど?」
恐らく、あの国はそう遠くないうちに技術立国となるだろう。
そう確信したように喋る墓守さんの声は、どこか晴れやかで。
そうして彼の姿が薄れていっていることに対し、俺達に驚きの色はないのであった。
「おや、少しは驚かれるかと思ったんだけど」
「いやまぁ……幽霊だっていうなら、未練が晴れればそりゃ成仏するだろうなぁ、というか」
「それも確かに。……まぁ、私の場合は冥界の底に還る、というだけの話だけどね」
これでもう会うこともないだろう、と別れを告げる墓守さん。
確かに、余程のことがない限りもう会うことはないだろうな、と相槌を打とうとした俺は、
「ん。そのうち
「──ふっ、また問題が起きても知らないぞぅ?」
「寧ろそれが目的」<キラリ
「ちょっとTASさん?!」
不敵な笑みと共に放たれたTASさんの言葉に、思わずツッコミを入れる羽目になったのでしたとさ。