「おっと、こんなところにいらっしゃりましたか」
「……ん、なんだ俺を探してたのか?」
「お風呂の順番でーす、服に肉の匂いが付いてると思うので早急にどうぞー」
「ああ……はいはい」
暫くして、焼き肉パーティも終わりを告げた頃。
鉄板やら使い終わった皿やらの片付けを終えた俺は、そのまま姿の見えなくなっていたROUTEさんを探してあっちをうろうろ、こっちをうろうろしていたわけなのだが……。
暫く探し回った結果、彼女を見付けたのは建物の屋上──唯一灰皿のある場所で、ということになるのであった。……そういやこの人、タバコを吸う人だったか。
で、一人で夜空を眺めながらタバコを吸っていたROUTEさんはというと、こちらの接近に気付いた途端に咥えていたタバコを灰皿に押し付け火を消し、そのまま俺に近付いて来たのであった。
「肉臭いっつーけど、今の俺タバコ臭い方がすげーんじゃねぇの?」
「まぁ、そうですねぇ。肉とタバコの匂いが混ざって、とてもじゃないけど女性からは香ってきちゃいけない匂いになってるというか」
「言うねぇ」
そのまま抱き付いてくるものだからちょっとビックリしたが、からかっているのは普通に分かっていたためそのまま流す俺である。
……いやまぁ、多少はドキドキしたけどね?でもそれよりなにより千年の恋すら覚める匂いがキツいというか。
そう返せば彼女はけらけら笑いながら俺から離れて行った。
そのまま、下の階に繋がる扉に手を掛け、
「おいすー」
「ぐえっ!!?」
「あっ」
……ようとしたところで扉を開けてTASさんが屋上に上がってきたため、ROUTEさんは強かに顔を強打する羽目になったのであった。うわぁ、痛そう……。
「い、いきなりなにしやがるっ!?」
「風呂に入ると言いながらそのまま逃げようとしてたから捕まえに来た」
「……ええー?」
「……ちっ!」
いきなりなんちゅうことを、とTASさんに視線を向けた俺だったのだが、その次に彼女が発した言葉に直ぐ様「あー」と気持ちを裏返したのであった。
うん、素直に風呂に入るのならともかく、こっそり逃げ出そうとしていたのならそりゃTASさんも顔面ビターンで止めるわ、うん。
にしても……この人まだ諦めてなかったのか。
発見されていない内ならともかく、こうしてTASさんに完全に捕捉されたあとで逃げ出すとか、無理を通り越して無茶・無謀・無意味の三拍子だと思うのだが。
「うるせー、やってみなきゃわかんねーだろうが」
「ほほう。つまりROUTEは私の裏を掻く自信があるということ。これはうかうかしてはいられない、私も本気を出してディフェンスに励まないと」
「……おい待てぇ、今俺の目の前にある選択肢に不穏な言葉が踊りやがったんだが!?」
「気のせい。私が複数人に増えるとかナイナイ」
「答えを言ってるようなもんじゃねぇか!?」
なお、当人は諦めきれない模様。
……何がそんなに彼女を突き動かすのかは不明だが、恐らくはアウトローなので一ヶ所に留まるのは性に合わない、とかだろうと思われる。
まぁ確かに?元々割と色々やってそうな人であることは間違いなく、それによってトラブルが起きそうな予感、というのもひしひしと感じている。
……その上で、
隠しキャラポジションである彼女によって引き起こされるトラブル自体が、TASさんにとっては(色んな意味で)逃せないモノである……というのが一番のポイントなのは間違いあるまい。
そしてそれがなくとも、既に入手したフラグをわざわざ折りに行く意味合いも無いのでそりゃ持ち続けるだろうな、みたいな部分もなくはないというか。
そういうわけなので、ROUTEさんには大変残念なお知らせになるかもしれないが……諦めて我々の日常という名のトラブルデイズに巻き込まれて行って欲しい。
そしてできればTASさんを笑わせてやって欲しい。それだけが俺の願いです()
「なぁ?!これは笑ってるってことでいいのか!?顔ほとんど変わってないけどこれは笑ってるのか!?」
「ええ、とても楽しそうにしていますね。TASポイントが恐らく加算されまくってますよ」
「なんだそのポイント!?貯めるといいことあるのか!?……いやいい!言うな!わかった!今選択肢に出たからわかった!!」
「おや残念。トラブル発生確率に上方修正、というポイントの付加価値について説明するタイミングはありませんでしたか」
「説明すんなっつったろうがー!!?」
なお、当のROUTEさんはTASさんに連れられてドナドナーって感じに階下へ降りていった。
まるで駄々っ子を無理矢理歯医者に連れていく母親の如く、である。
……いやまぁ、どっちかと言うと駄々っ子ポジなのTASさんの方なんだけどね、実際は。