うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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フレーム単位の調整は必須です

「値切りは乱数調整の調子を確かめるのに、丁度よいアトラクション」

「いきなりなにを口走ってるのキミ?」

 

 

 珍しく『フリーマーケットに行きたい』などとお願いをしてくるものだから、意気揚々と遠出してきた俺と彼女なわけだが。

 着いて早々彼女が吐き出した言葉には、いつものように困惑した表情しか返せない俺なのであった。

 

 これで5フレーム短縮……などと呟く彼女はというと、こちらの嘆息にはそこまで気を取られた様子もなく、並べられた商品達を繁々と眺め始めている。

 いわゆる物色・ウインドウショッピングの類いというやつなのだろうが、時々タップダンスのように足を踏み鳴らしたり、指パッチンでリズムを刻んだりしているので、単純に見物しているだけ、というわけではないのかもしれない。

 

 いやまぁ、その行動の全部が全部、一種の乱数調整であるとするのであれば、本当に現実って奴は更新箇所まみれ……ということにもなってしまうわけで、ちょっと戦々恐々としてしまうわけなのだけれど……。

 よくよく考えずとも、その更新とやらを認識できるのは、いわゆる神様とかそういう類いの存在以外は彼女だけなのだろうから、単なる一般人である俺が思いを馳せたところで、特に意味はない……ということにも思い至り、考えるのを止めるのだった。

 

 

「そう、これで大体143フレーム(二秒くらい)短縮」

「……今の行為の何処に、そんな大幅な短縮箇所が……?」

「CPUの思考ルーチンについての考察は、どこの場所でも活発なもの」

「ねぇ、遠回しに俺の思考を弄った、って言ってないそれ?」

 

 

 ……どうやら本命は値切りの方ではなく、それによって発生する一種のキャトルミューティレーション(しこうのゆうどう)の方だったらしい。解せぬ。

 

 

 

・∀・

 

 

 

「全部で野口三枚(三千円)、頑張った」

「あ、結局値切りの方もやるんですね……」

 

 

 これ以上彼女の近くにいたら、俺の思考は無茶苦茶にされてしまう……!

 

 そんな危機感から、彼女の元を離れてアイスを買って戻ってきた俺は、そこでほんのりと得意気な顔をこちらに見せる、彼女の楽しげな姿を目にすることになるのだった。

 

 そうして喜ぶ彼女の近くのベンチの上に並べられていたのは……ええと、電子レンジにポット、それから小さなラジオ……?

 

 

「……これ、全部うちにあるやつじゃない?」

「(意味は)持って帰ればわかる。けど、その前にまだやることがある」

「はぁ、この無駄そうな散財のほかに、まだなにか?」

「これらのモノを全て購入することで、とあるフラグが立つ」

「なん……だと……!?」

 

 

 どうやらこれらの品物を特定の順番・特定のタイミングで購入することで、まったく別のフラグを動かすことができるらしい。

 それによって現れるモノこそ、今回の彼女のお目当てなのだそうだ。

 ……そこまで複雑なフラグを掻い潜った先に、彼女が求めるものとは一体……?!

 

 

「予定通りに買えた。とても満足」

「……ええと、大きなぬいぐるみ、です?」

「そう、ぬいぐるみ。……『僕、クマ五郎(ごろ)ー』」

「なんか腹話術までし始めたんだけどこの子……!?」

 

 

 まぁ、出てきたのは大きなくまのぬいぐるみ、だったわけなのだが。……電化製品三つ買うとフラグが立つクマってなに?

 ついでに言うのであれば、そのぬいぐるみを抱えて歩く彼女は、傍目には年相応に喜ぶ少女にしか見えない、というのも問題だろう。……心なしか周囲からの視線が痛い!

 

 これは不味い、非常に不味い。

 このままだとまず間違いなく通報されてムショ行き決定である、だってどう見ても小さい子を連れ回している不審者だからね、今の俺!

 ついでになにがあれって、彼女のことだから『警察に行く必要があったから(フラグを立てた)……』みたいなことを言い出して、俺のこと一切助けてくれない可能性があるのが、ね!

 

 

「……?どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、この後酷いことになる予感しかしないんだもんよ!ああどうしよ、こうして慌てること自体が疑いの元だから落ち着くべき?でもその気持ちだけでどうにかなるなら、そもそも慌ててないんだよなぁ!!」

「………?………!」

 

 

 情けなく慌てる俺の姿を見て、彼女は小さく首を傾げていたのだが……暫くして、なにかに気が付いたかのように驚いた顔を見せると。

 

 

「……えーと、それは?」

「応急手段。フレームが増えるけど仕方ない、どこかで埋め合わせはする」

「なによりも早さに拘るこの子が、フレームなんか知らんとか言い始めた!?もしかして明日の天気弄ろうとしてらっしゃる!?」

「……ここぞとばかりに意趣返しするの止めて」

「はい?」

「…………なんでもない、気にしないで。とりあえず泣くの止めて。フレームの無駄」

「無駄とか酷いっ!?」

 

 

 バタバタと謎の躍りを始め、こちらを更に困惑させてくるのだった。……それはなんの調整なんです???

 なお、その結果なのかはわからないが、それ以降周囲からの視線が痛い、なんてことは一度もなく、無事にフリーマーケット会場を後にすることができた俺達なのであった。

 

 

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