うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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コンプラに引っ掛かりそうでも止める者はいない

「うおーっ!?やめろー!!勝手に選択肢を選ぶんじゃねー!!?」

「うふふ、これか、これがええのんかー」

(なんでそんな親父臭いやり取りに……?)

 

 

 いつの間にかROUTEさんの背後に回ってその右手を取り、中空に浮かんでいるのだろう()()に触れさせようとしているTASさんである。

 ……選択肢って、そんな物理的な干渉を必要とするモノなんです?

 

 

「そうじゃない。私の場合視界をジャックして無理矢理視認してるから、選択権がない。だから、ROUTEを拘束して無理矢理選ばせようとしてる」

「うおー!?イヤだー!!こんなのはイヤだー!!」

「……絵面が色んな意味で終わっているのはどうすれば?」

「スルーして。それが一番確実」

「あ、さいですかー」

 

 

 ……なるほど。

 あくまでROUTEさんの視界をジャックし、そこに映るものを自分にも見えるようにしているだけで、その選択肢を選ぶ権利まで得ているわけではないからこその行動、と。

 ……説明を聞けばああ、と納得はできるものの、でもやっぱり絵面の酷さはどうにもならないというか。

 そこら辺は彼女も把握済みなのか、スルーしてくれというわりと投げ遣りな対処をおすすめされることとなったのであった。

 

 で、そこから暫く経過してからのこと。

 

 

「ち、ちくしょう……っ!(選択権を)持ってかれたぁ……!!」

「満足。これから私達を待ち受ける一大スペクタクルは確約されたようなもの」

 

 

 膝を付き、地面に拳を打ち付けながら悔しげに吠えるROUTEさんと、その横で満足げに額の汗を拭うTASさんである。

 ……うん、何度も言うけどやっぱり絵面があれだな???

 

 いやまぁ、状況を簡潔に整理するのなら、単にトラブル回避に失敗したROUTEさんとトラブルに喜ぶTASさん、というだけの図なのだが。

 こんなにトラブルを嫌がる姿を見せられると、なんというかいっそ新鮮な気持ちになってくる感じがするというか……。

 

 

「私達はもう、基本的に諦めていますものね……」

「TASがやるって言ったらもう止める手段なんてないからな……」

「そういう意味では、『あー、私達にもそういう時期があったなー』って気分になるよね」

(……ツッコミを入れた方が宜しいのでしょうか、この空気)

 

 

 他の面々も悔しがるROUTEさんを見て、生暖かい表情になってしまっている。

 抵抗は無意味だ、がっかりしろ……みたいなのが合言葉になっているような空気感に、DMさんだけ複雑そうな顔をしていたが……まぁ、概ね俺達の心は一つというか。

 

 そう、TASさん相手に抗議やら軌道修正やらを図ったところで、大抵は薙ぎ倒されるだけなのだから止めといた方がいい……みたいな?

 無論、新人に当たるROUTEさんがその辺りの諦めを受け入れられない、ということそのものを笑う気はないが。

 

 そんなこんなで、なんとも生温い感じの空気が支配する中、俺達の合宿は始まりを告げたのであった。

 

 

 

・A・

 

 

 

「そういうわけで、今回もこちらにお世話になる」

「はっはっはっ、気のせいかななんか変なもの付いてないかいこれ?」

「迂闊に触っちゃダメ。それが壊れると私達帰ってこられなくなる」

「そんな危ないもの、こんな触りやすいところに付けるの止めない!?」

 

 

 はてさて、合宿と言えば泊まり込み、泊まり込みと言えば泊まる場所……というわけで、今回もお世話になること必至なキャンピングカーの登場である。

 MODさんの私物でもあるこのキャンピングカー、前回はロケットへの変形とかステルス機能の増設とか、色々と改造を受けていたのだが……今回もその例に漏れず、更なる改造が施されている。

 

 それがこの、車体の後方に設置されたあからさま過ぎるパラボラアンテナ。

 テレビの電波でもキャッチするのか?……みたいな感じのアイテムだが、これがキャッチするのは音声や映像ではなく、現在の俺達の位置情報なのだとか。

 

 

「自宅に設置した電波発信施設から送られてくる電波をキャッチし、現在の私達がどの世界にいるのかを判別する。特注品だから壊すと高いし、直すのにもとても時間が掛かる」

「……なるほど?」

 

 

 そもそも今回の合宿、前回ループで多次元移動に()()()()()()、という状況を『世界によって許可された世界移動』であると解釈し、それを利用しようという名目で計画されたものである。

 自発的に世界を越えると良くないことが起こるが、何かしらに巻き込まれて他所の世界に行くことになったのなら、世界への影響は極小で済む……。

 という、嘘か真か微妙に判断に困る話を全面的に信用した上での計画ということになるわけだが、それでも完全に成り行き任せにしてしまうのは違うだろう。

 

 ……そんなわけで、TASさんは現在自分達が基幹世界からどれほど離れた位置に居るのか?……ということを判別できる機械を用意したらしい。

 それがこのパラボラアンテナになるわけだが……確かに、ふとした瞬間に壊れてそうな気配があるというか?

 いやまぁ、壊れても時間を掛ければ直せるみたいなので、完全に漂流するようなことはないだろうけど……不安になるのも仕方がないような。

 

 

「まぁ、不安云々の話をするのなら、そもそもキャンピングカーそのものには次元移動機構とかなんにも付いてない……ってことを語るべきだと思うけど」

「それは確かに」

 

 

 まぁ、それが些細なことになってしまう話として、このキャンピングカーには単独で世界を越えるようなシステムは何も積まれていない、という事実が存在したりするのだが。

 ……大丈夫かこの合宿?

 

 

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