「……面倒臭い。飛行モードに移行してもいい?」
「どう考えても騒ぎになるからダメです」
「むぅ」
引き続き、渋滞に巻き込まれている俺達である。
他の面々は暇を持て余してトランプとかウノとかやってるみたいだが、こういう時でもというべきか・こういう時だからこそというべきか……ともかく、手加減なんて知らない止まらない、という感じのTASさんは微妙にハブられてしまったみたいで、追い出された彼女は助手席部分から外を眺め、不満げに頬を膨らませていたのであった。
……いやまぁ、初手で上がってみたりドロー四を相手に押し付けまくったりしてたら、そりゃそうなるよとしか言いようがないんだけどね?
そうして不貞腐れる彼女の視線の先には、前の車が動かないかなーと待ち続けている他の車の姿が。
……気のせいか、彼女の他の車を見る目が怪しくなっているような?これあれだよね、『四つ繋げたら纏めて消えないかなー』とか思ってないよね?
「……お兄さんは失礼。流石の私もそんなことは考えない」
「そ、そうか。それは失礼なことを……」
「数珠繋ぎにしたら一纏めにならないかなーとか、もっと効率的な手段の方を考えてる」
「パズルなのは間違ってなかったかー」
寧ろ四つ刻みじゃない分悪化してたかー()
……なんにせよ、彼女の気分のままに行動させると酷いことになるのは目に見えているので、仕方なく最終手段を持ち出すことに。
「んむっ。……これで買収されたと思うなよー」
「はいはい。みんなには内緒ねー」
「ん」
助手席の下に置いてあるクーラーボックスからアイスを一つ取り出し、彼女の口に放り込む。
TASさんは暫しむぐむぐと抗議の視線を寄越してきていたが……自分だけ貰える、という状況がお気に召したのか視線を前に移して大人しくなったのであった。
それを確認し、俺もまた視線を前に向ける。
周囲の車は相も変わらずノロノロとしか動かないが……まぁ、たまにはこういうのも良いだろう。
……と、ぼやいていたのが大体一時間前。
どうにか近場のサービスエリアにたどり着いた俺達は、気分転換も兼ねて車外に出て来ていたのだけれど……。
「……ううむ、ずーっと渋滞してるねぇ」
「ねぇROUTE、もしかして変な選択肢引いてこっちの邪魔をしてない???」
「してねぇって顔
店の手前から眺めた道路は、視界の端から端まで車でびっしり……つまり渋滞続き。
これは目的地にたどり着くまでに、エグい時間が掛かりそうだ……などと眉を顰める俺達である。
実際、ここまで露骨に渋滞するモノなのかちょっと首を捻ってしまうのも仕方ないというか?
なので追っ掛けられているROUTEさんについては、TASさんの気分転換も兼ねて放置するのであった。……え?恨めしげな視線が飛んでくる?知らんなぁ……。
それはそれとして。
このまま道に戻っても、車が目的地にたどり着くのは夜とかになってしまうだろう。
それではTASさんの機嫌が酷いことになるのは目に見えている。……回避できるのなら、回避しておきたいのが本音だ。
ただ、元々偶然を装って他所の世界に飛ぶ……という作戦である以上、こちら側にできることはそう多くはない。
叶うなら、さっさと転移が発動して欲しいものだが……。
「その辺りはもっと近付かないと無理」
「なるほど、例の無人島からの距離も大事なのですね?」
「そういうこと」
散々ROUTEさんを追い回して気が済んだのか、満足げなTASさんがこちらの言葉に反応してくる。
それを聞いたAUTOさんが補足をしてくれたが……なるほど、件の無人島はここから一時間ほど。
……この混雑状況だとその三倍以上掛かりそうだが、少なくとももっと近付かないことには転移の判定も出てこないようだ。
ということは、嫌でもこの渋滞を突き進むしかないということになるわけで……。
「……ええと、TASさん大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。もうこの渋滞を纏めて消す算段は出来てるから」
「なにも大丈夫じゃない!?」
いやだこの子、全然諦めてないわ(恐怖)
……まぁうん、TASさんのやり口から言えば、素直に渋滞を待つという方がおかしいのも確かなんだけどね?
でもそれに対して持ち出してくる解決方法が「全部消す」なのは、なんというか過激過ぎるというか……。
「そうでもない。消した人達はちゃんと目的地に送り届ける予定だから」
「なるほど?渋滞を解消しつつ、相手はちゃんと目的地に送り届けるから問題はない、と」
「そうそう」
「問題ありありじゃ馬鹿者」
「痛いっ」
なお、本人は生意気にも言い訳を敢行してきたため、その頬を思いっきり引っ張ってやることになったりもしたのだが。
……うん、あとから『怪奇!突然の光に巻き込まれた人々が消えた!?』とかなんとか、滅茶苦茶話題になるのか目に見えとるやんけ。
そういうのは無しにしましょ、って家を出る時に約束したでしょうが。
……その後、逃げ回るTASさんに言質を取らせるのに時間が掛かったが、どうにかこなした俺達は改めて渋滞の中へと飛び込んで行ったのでしたとさ。